ワーキングマザーが「小1の壁」を痛感する年度初め

4月に小学校へ入学されたお子さんをお持ちの方々、おめでとうございます。うちの小6末っ子が班長を務める地区の集団登校班にも、4人の新1年生が入ってくれました。ピカピカのランドセルで大きな荷物。心配そうに見送るお母さんの姿は、毎年変わりません。

この時期、ワーキングマザーにとってはたいへんな季節。放課後の子どもの預け先が見つからなければ、働き続けることが困難になります。これを「小1の壁」といいます。小学生は、学校から帰ってくるのが15時ころ。共働きの親が会社から帰ってくるのが20時だとすると、子どもは自分で家の鍵を開けて5時間ほど留守番することになります。「以前は小学生になると1人で留守番をしていた」という意見も聞きますが、核家族化が進み、地域のつながりも薄れ、子どもの安全性を確保することが難しくなっている今では、小学校低学年の子どもを1人で留守番させるのはリスクが高いといわざるを得ません。

一般的に小学生が放課後の時間を過ごす場所として、自治体が運営する学童保育があります。しかし、最近では働く親が増え、学童保育に入所を希望する子どもも増えていて、自治体によっては学童保育に入れない場合もあるのです。

また、保育園が延長保育も含めて20、21時まで預かってくれるところがあるのに対して、学童保育は18時までに終わるところが約55%、18時過ぎ~19時までのところが約43%、19時以降のところが約2%(全国学童保育連絡協議会の2012年調査より。自治体数でカウント)と保育時間も短くなります。その結果、これまでと同様の働き方ができなくなり、場合によっては、勤務時間を短縮する、勤務地を変える、仕事を変えるなどの対応が必要になることも。

3月31日までで保育園が終了し、4月1日から学童保育に通わせる場合は、学校の給食が始まるまでお弁当を持たせないといけません。保育園では遠足のときくらいしか作らなかったお弁当を毎日作るのです。出勤時間が変わらなくても、保育園時代より30分~1時間は早起きしなければなりません。

これからも夏休みなどの学校の給食がないときはお弁当を持たせて学童保育に通わせることになります。また、平日の昼間に開催される小学校の保護者会やPTA活動などは休みをとって参加するなど、小学生になると働く母への負担がますます重くなります。「保育園はよかった」。多くのワーキングマザーが小学生になった子どもを持ってみて感じる思いです。

この場合問題なのは、お弁当にPTAと妻に負担がかかることが多く、夫は「たいへんだなぁ」と傍観してしまいがちなところ。せめて週に1日サンドイッチやおにぎりを夫が作るとか、学校か学童の保護者会や説明会に1回は出るなどしてもらえれば、子どもとの関わりが増えるうえに、どれだけ妻が助かることか……。「仕事があるから」というのは、共働きなら夫婦とも同じはず。妻と同じでなくてもいいから、一部だけでも夫が当事者意識を持って行動してくれると、妻は精神的にも救われると思います。

学童保育の対象が6年生までに。「小4の壁」はなくなった!?

ところで、2015年4月から学童保育の対象が、小学3年生までから6年生までに拡大されたことを知っていますか? 2012年に「子ども・子育て支援法」が制定され、児童福祉法が改正されたことで、2015年4月から学童保育の対象が「小学校に就学しているおおむね10歳未満の児童」から、「小学校に就学している児童」(6年生まで)に変更されたのです。

これまでは3年生までしか入所できない自治体が多かったので、4年生からの預け先がなくなり、ひとりで放課後を過ごさなくてはならなくなることから、「小4の壁」といわれていました。学童保育が小6までを対象にしたことで、この壁はなくなるのでしょうか?

実際、各市区町村の対応を見ると、これまで学童保育で受け入れていた3年生までを優先して受け入れ、4年以上は、人員に余裕があれば受け入れるし、3年生まででいっぱいの場合は、待機になったり、放課後子ども教室のようなほかの居場所に通うことをすすめられるということもあり、すべての自治体で小6までの希望者全員が学童保育に行けるようになったわけではないようです。このあたりの対応の仕方や入所基準なども自治体によって違います。自分が住んでいる自治体の対応はどうなっているのか、調べてみてください。

子どもたちの放課後の選択肢。そして、そのお値段は?

子どもたちの放課後の選択肢としては、どのような場所があるのでしょうか?

共働き家庭の子どもは、住んでいる自治体で運営している学童保育に通うのが一般的です。学童保育は、学校が終わってから18時、19時くらいまで子どもに生活の場所を提供してくれるところ。異学年の子どもたちが集まって、遊んだり宿題をしたり、おやつを食べたりする場所になっています。「指導員」とよばれる先生もいます。

学童保育の運営体制は、どこも同じではなく、市区町村が設置・運営を行う公設公営のところや、市区町村が設置し社会福祉協議会や地域運営委員会が委託をうけて運営するところ、父母会など保護者が主体となって運営を行うところ、NPO法人や民間企業などが運営するところなど、さまざまです。

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運営主体別でみた学童保育の保育料の平均月額

従って、その運営形態や補助金のあるなしによって、保育料が違っています(図表参照)。平均的な保育料は月額7331円(全国学童保育連絡協議会 2012年実態調査より)ですが、私が子どもを通わせていた東京都府中市の学童クラブの育成料は、月に5000円。それに間食費(おやつ代)1800円で、合計6800円でした。しかし、広島市のように学童保育の保育料が無料、というところもあれば、横浜市のように月に2万円以上かかるところも。住んでいる自治体によってかなり違いがあります。

学童保育とは別に、子どもの放課後の安全な遊び場として国が推し進めているのが、学校の空き教室などを利用して行われる「放課後子ども教室事業」です。学童保育が、共働き家庭の子どもを対象にしているのに対して、こちらはその学校に通うすべての児童が対象になります。学校が終わってから17時、18時頃まで宿題をしたり、遊んだりできる場所で、登録して年間500~1000円程度の保険料を払えば、好きなときに遊びに行ける児童館のような場所です。

少ない費用で預けられるのが魅力ですが、毎日の出席が必須ではないので、参加メンバーは流動的です。児童館方式だと出席確認はしないので、確実に放課後の居場所を把握したい場合はちょっと不安かも。自治体ごとに運営体制や子どもの参加状況などがまったく違うので、まずは調べてみましょう。住んでいる自治体で実施していれば、登録して利用することができます。子どもが放課後を過ごす場所の選択肢のひとつとして検討してみましょう。

放課後の二重保育が必要な場合も

フルタイムで働いていて、勤務地が遠い場合など、学童保育から子どもが帰ってくる時間には親が帰宅できない家庭もあります。そういうときは、遅くまで預かってくれる公共の施設や、民間の学童保育、ファミリーサポートセンターやシッターさんを併用することになります。放課後の二重保育は、子どもたちへの負担も家計への負担も重くなりがち。しかし、数年すればお留守番ができる年齢になります。ここは正念場だと思ってがんばってください。

二重保育を頼む施設が近くにない、経済的にも難しいという場合は、学童保育終了後、ひとりでもしくは子どもだけで留守番させることになります。くれぐれも事故のないように、家族でルールを決めておきましょう。「学童から帰ってきたら、ひとりで出掛けない」「来客が来てもドアを開けない」「子どもだけで火を使わない」などは、言い聞かせておきたいことです。

最後に、都市部では放課後に英語やスポーツなどさまざまな習い事をさせてくれる民間の学童保育も多数出てきています。学校まで迎えに来てくれて、家まで送ってくれるサービス付きの場合や、21時などの遅い時間まで預かってくれる、夕食も出してくれるなど、いたれりつくせりのサービスも。ただし、学童保育といっても、公的な補助金などを受けずに運営されている場合が多いので、月額数万~10万円程度かかるようです。

子どもの放課後の居場所に関心を持って

さて、あなたはどんな放課後を選びますか? 子どもが自分らしく豊かな時間が過ごせて、親が安心して働けるような信頼できる場が、近くでみつかりますように。

そして、子どもが通いはじめたら預けっぱなしにしないで、親が子どもが通っている場所に関心を持ってほしいと思います。学校の保護者会のあとなど、時間があるときには迎えに行って、どんな場所で毎日過ごしているのか、どんな友達と仲がいいのか、指導員や先生と話すと、自分がいない放課後の時間を子どもたちがどう過ごしているのか、知ることができます。

また、できるだけ保護者会やイベントに参加して、親同士のネットワークを作るのも大事なこと。子どもがけんかしたときや何かトラブルがあったときにも、父母のネットワークで乗り切れることも多くあります。働く親同士、助け合ったり、愚痴を言い合う仲間ができるのもいいものです。そういうネットワークは、子どもの心の安定や成長に、そして親自身のこれからの人生にもきっといい影響を与えてくれるはずです。

フリーライター 生島典子(いくしま・のりこ)
投資信託の運用会社、出版社勤務を経て独立し、2004年よりライター・編集者として活動。子育て、家計、住まい、働き方などが主な執筆テーマ。好きなことは、出産と住宅ローン。3人の子どもを助産院で出産した経験あり