■編集部より指令

女性活躍推進が叫ばれる今日この頃。

職場で「女性らしいセンスで」とか、「女性らしいアイデアをお願い」などと言われ、戸惑いを隠せない女子たちも多い。

男職場であっても、とくに性別を意識せずに仕事に向かってきた女性たちには失礼とさえ言える。

こんな場面に遭遇したら、どう切り返せば良いでしょうか。

■大宮冬洋さんの回答

職場で「女性ならではの○○」を求められて困ります
http://president.jp/articles/-/13674

■佐藤留美さんの回答

言われるがまま仕事を受けよう

女性らしいセンスで……とか、女らしいアイデアで……って一体何なんでしょうね? 私もこれまで結構な頻度で言われてきましたが(そしてその度に薄笑いを浮かべて「承知しました」とか「オッケーです」とか言ってきましたが)、よく考えてみれば、結構失礼な話ですよね。

だって男性が「男らしいアイデアよろしく」とか言われることは、まず、ないですもの。

つまり、女は消費者としても、その作り手としても、まだまだマイノリティだということなのでしょう。

しかし、少子化で先細り必至の日本の市場の中で、将来性が高いと言われるのが、シニア向けと、「働く女性向けマーケット」です。

そして、女性が喜ぶ商品やサービスは、オジサンが考えるより同胞の女性が考えたほうがいいに決まっている。

そう考えると、働く女性にとって、「女性らしさ、お願い」「女性らしいアイデアちょうだい」と言われる現象は、追い風だと言わざるをえません。

言われるがまま「へいへい」言って仕事を受け、無事成果を上げた暁には、そこいらへんの男以上に評価を勝ち取ることが出来る可能性が高いのですから。

「女性ならでは」を生かして生き残ってきた

かく言う私も「女性らしいセンス」や「女性ならではの視点」をフルに生かして、この厳しいメディア業界をなんとか生存してきた一人です。

私は、10年ほど前に、あるキャリア情報誌の編集部を辞めて独立。以降はフリーランスのライターとして主に、ビジネス、人事、キャリア、ビジネスパーソンの生活実感などをテーマに、雑誌、webとたくさんの媒体で書き散らしてきました。

そして現在は経済情報メディアの「NewsPicks」のエディター(編集者)をしながら、他媒体でこのようなコラムも自由に書かせて貰っています。

このように、仕事に恵まれたのは、私の実力が際立っていたということでは決してありません。謙遜で言っているのではありません。周囲を見渡せば、私より取材力や文章力がある「ビジネス系ライター」や「人事ライター」はゴマンといるのです。

しかし、「女性のビジネス/人事ライター」は……というと、それほど、層が厚いわけではありません。

「女らしさお願い」はチャンス

いっぽう、ファッションやヘルス、美容系の女性ライターは、うなる程人数がいます。つまり、女性ライターにとって、かの地は血で血を洗う激戦が繰り広げられる「レッドオーシャン」。

他方、ビジネスや人事系は「ブルーオーシャン」だったというわけです。

さらに、最近では、人事やビジネスの領域で「女性活用」や「育児と仕事の両立」はホットトピックに急浮上しています。

そして、こうしたネタは男性ライターより女性ライターが書いた方が得意だし説得力があるに決まっている。

このコラムにしても、タイトル通り、「女の言い分」を言う役回り。だから、私のような、これといった才能も取り柄もない女に仕事が回ってくる……というわけです。

つまり、私が何を言いたいのかというと、働く女性が「女らしさお願い」なんて言われたら、それは「チャンス」だということ。

その仕事は男には手出しできない「ブルーオーシャン」だと認識して、ここぞとばかりに持てる力を惜しげもなく発揮すればいい。

デキる男が参入することのできない領域なのですから、好き放題やってみる。それが、女性がしたたかに自分の居場所や得意分野を固める最もやりやすい手段な気がします。

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)、『資格を取ると貧乏になります』(新潮新書)、『人事が拾う履歴書、聞く面接』(扶桑社)、『凄母』(東洋経済新報社)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。