仕事でミスをしたとき、どのように対処すればいいのか。『「枕詞」を使えばビジネスはすべてうまくいく』(日本能率協会マネジメントセンター)を書いた青木栄明さんは「上司が厳しい言葉をぶつけるのは、部下の仕事に対する姿勢に不満を感じているからだ。部下がその思いを先回りして言葉にすれば、上司の意識を“誰が悪いか”から“どう対応するか”へ向けやすくなる」という――。(第1回)

※本稿は、青木栄明『「枕詞」を使えばビジネスはすべてうまくいく』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。

怒っている実業家
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「上司への言いづらさ」は枕詞で解決

企業や上司による取り組みだけでは解決しきれない職場のコミュニケーションの問題。コミュニケーションは双方向だからこそ、解決するためには上司だけでなく、部下であるみなさんからの歩み寄りも欠かせません。

上司とうまくコミュニケーションが取れないことは、部下にとっても大きな悩みです。なぜなら、そのままでは仕事が進めにくくなり、余計な苦労が増え、仕事そのものが苦痛になってしまうからです。

とはいえ、「上司に言いづらい」ということ自体が出発点の問題なのですから、「歩み寄ればいい」と言われても簡単にできることではありません。

では、その歩み寄りを、できるだけ少ないストレスで実践できる方法があるとしたらどうでしょうか。一度試してみる価値はあるのではないでしょうか。

その方法こそ、本書でご紹介する「枕詞」です。ここでいう「枕詞」とは、本来の和歌などで使われる枕詞ではありません。上司に要望や相談を伝える前に添える「声かけ」の一言、いわば「ビジネス枕詞」のことです。言いにくい内容であっても、相手に受け入れてもらいやすくするための一言、と言い換えてもよいでしょう。

「上司の心理」を先回りして言葉にする

では、「ビジネス枕詞」(以下、「枕詞」)とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。一例を挙げると次のような言葉になります。

「初歩的な質問で恐縮なのですが……」

この一言を添えるだけで、相手の反応は驚くほど変わることがあります。なぜなら、枕詞で先に伝えるのは、部下が「言われたくない」「そう思われたくない」と感じていることであったり、上司が心の中で思っているかもしれないことだからです。つまり、上司の心理を先回りして言葉にすることで、部下が最も恐れている否定的な反応を和らげる効果が期待できるのです。

私はここ数年、多くの企業研修や教育の現場でこの「枕詞」を紹介し、実際に受講者のみなさんに実践していただきながら、その効果を検証し、磨き上げてきました。

特に効果を発揮するのは、

・気を遣ってしまう上司
・話しかけづらい先輩
・威圧感のある相手
・忙しくてピリピリしている人

といった、「気まずさ」を感じる相手です。

もちろん理想を言えば、枕詞など必要なく、誰もが安心して自分の考えや気持ちを伝えられる職場が一番です。しかし現実には、「この人には少し話しかけづらいな」と感じる相手は、これからもきっと存在するでしょう。だからこそ私は、「自分を守りながら、必要なことをきちんと伝えるためのコミュニケーション技術」として、枕詞を活用してほしいと考えています。

ミスの報告は“姿勢への反省”から

【ミスによって発生した問題について対策を相談したい】

業務を進めている途中で、自分のミスによって問題が発生してしまった。自分では判断できず、上司に報告・相談しなければならない。しかし、「きっと怒鳴られる」「厳しく責任を追及される」と思うと、足が重くなり、報告すること自体が憂鬱になってしまう。

大きくは3つ。①「何をやっているの」を先回り ②「ご迷惑をおかけする」と先に詫びる ③「私の責任で処理します」と申し出る
写真=iStock.com/maroke
大きくは3つ。①「何をやっているの」を先回り ②「ご迷惑をおかけする」と先に詫びる ③「私の責任で処理します」と申し出る(※写真はイメージです)

想像するだけで胃がキリキリするような状況ですが、このような場面で最も優先すべきなのは、問題による被害を最小限に抑えることです。

仕事で起きたトラブルは、時間が経てば自然に解決することはほとんどありません。むしろ、報告が遅れれば遅れるほど被害が広がり、結果として上司や関係者にかける迷惑も大きくなってしまいます。だからこそ、「怒られないようにすること」ではなく、「一刻も早く上司に判断してもらうこと」が最優先になります。

【上司の思い:しっかり仕事してほしい】

このケースで上司が抱いている不満は、ミスそのものだけではありません。むしろ、部下の「仕事に対する姿勢」に不満を感じています。上司は、「もっと慎重に進めていれば防げたのではないか?」と考え、部下の仕事に対する意識や心構えに問題があったのではないかと感じます。そのため、報告を受けた瞬間に、ミスの内容よりも先に仕事への姿勢を問いただしたくなり、厳しい言葉が出てしまうのです。

このような上司の心理を踏まえると、まずは「自分自身も仕事への姿勢を反省している」ということを枕詞で伝えることが重要になります。

①「何をやっているの」を先回り

【型1 上司に言われたくないこと、思われたくないことをあえて先に言う
《「何をやっているの」と言われることなのですが》】

このような場面で、上司が最初に口にしそうな言葉はおそらく、「何をやっているの」ではないでしょうか。だからこそ、このケースでは、その言葉を上司より先に自分から口にすることが効果的です。

さらに「言われそうですが」ではなく、「言われることなのですが」と言い切っていることもポイントになります。自分のミスが原因である以上、言い訳をせず、「責任は自分にあります」という姿勢を最初に示しているからです。

そのため、上司は「何をやっているの」と改めて責める必要性が薄れ、意識を「誰が悪いか」から「どう対応するか」へ切り替えやすくなります。

使用イメージ:
「何をやっているの」と言われることなのですが、私の不注意で発生した問題に対し、早期解決したいのでご相談させてください。

枕詞に続けて、「早期解決したいので」と続けることで、話の焦点が責任の追及ではなく、「これ以上影響を広げないために、今どう対応するか」という問題解決へと向かいやすくなります。

【同様の枕詞】
・全く言い訳のできないことなのですが
・私の不徳の致すところで申し訳ありませんが

②「ご迷惑をおかけする」と先に詫びる

【型2 上司の不満を先取りして伝える
《お詫びのしようもないことでご迷惑をおかけしますが》】
青木栄明『「枕詞」を使えばビジネスはすべてうまくいく』(日本能率協会マネジメントセンター)
青木栄明『「枕詞」を使えばビジネスはすべてうまくいく』(日本能率協会マネジメントセンター)

上司が部下に抱く不満は、先ほど説明した「部下の仕事に対する姿勢」だけとは限りません。状況によっては、もう一つ別の不満が生じます。それは、「部下の不注意によって、自分まで迷惑を被ることになる」という不満です。

部下のミスは、組織として見れば上司の責任でもあります。問題が大きくなれば、上司自身が事情説明や対応を求められ、場合によっては評価にも影響します。そのため、部下のケアレスミスに対して感情的になってしまうのも、ある意味では自然な反応と言えるでしょう。

だからこそ、このような場面では、ミスの内容だけを伝えるのではなく、「上司にも迷惑をかけてしまうことは理解しています」という姿勢を、枕詞で先に示すことが重要になります。上司の立場や負担に配慮していることが伝われば、「事態を何とかしようとしている」という印象につながり、感情的な反応を和らげる効果が期待できます。

使用イメージ:
お詫びのしようもないことでご迷惑をおかけしますが、解決に向かって全力を尽くしますので対策について相談をさせてください。

「解決に向かって全力を尽くしますので」と伝えることで、上司に責任を委ねるのではなく、自分も主体的に対応する意思があることが伝わります。そのため、上司としても、「まずは一緒に解決策を考えよう」という気持ちになりやすく、部下にすべてを任せきりにしたり、感情的に責任だけを追及したりするのではなく、早期解決に向けた建設的な話し合いへと進みやすくなるでしょう。

【同様の枕詞】
・弁解のしようもないことでご迷惑をおかけしますが
・私の不注意で巻き込んでしまい申し訳なく思っておりますが

③「私の責任で処理します」と申し出る

【型3 上司の願望を先に口にする
《お手間を取らせぬよう私の責任で処理しますので》】

上司としては、部下の不注意によって発生した問題に対して、基本的には「まずは自分で解決してほしい」と考えています。そのため、この枕詞では、「自分なりに対応を進めており、上司には最小限の負担しかかけない」という姿勢を先に伝えることが重要になります。

そうすることで、上司は部下を責めることよりも、「できるだけ早く問題を解決しよう」という意識へと気持ちを切り替えやすくなるのです。

使用イメージ:
お手間を取らせぬよう私の責任で処理しますので、お知恵だけ貸してください。

「お知恵だけ貸してください」という表現には、答えを求めるのではなく、経験や知見を借りたいという謙虚な姿勢も伝わります。その結果、上司もアドバイスしやすくなり、「それならこうしてみたらどうだろう」と、自分の経験をもとに相談に応じてもらいやすくなるでしょう。

【同様の枕詞】
・私の方で決着を付けますので
・責任をもって処理しますので