※本稿は、鈴木慎太郎『その不調、「かくれアレルギー」が原因かも』(あさ出版)の一部を再編集したものです。
「食べ物そのもの」だけではない原因
成人の食物アレルギーは、子どもに多い「原因となる食べ物を食べるだけで発症するタイプ」だけでなく、さまざまな要因やその組み合わせで発症する特殊型が多いことが特徴です。
食べ物そのものだけでなく、食後の運動や鎮痛薬の服用、飲酒、職業上のアレルゲンへの曝露、虫刺され、食料品の保存状態、食品添加物、吸入アレルゲンとの交差反応なども、発症の引き金となるため注意が必要です。例えば、小麦は食べただけでは症状が出なくても、食後に運動をするとアナフィラキシーを起こすことがあります。
また、症状が現れるまで時間がかかるものがあるため、直前の食事だけでは原因を見逃しやすい傾向があります。
食材そのものではなく、食品添加物や、原材料として目立たない成分が原因となることもあります。健康食品やハーブが、アレルギーに関連した臓器障害を引き起こすことも知られています。甲殻類と昆虫食、ダニとの交差反応など、「虫」が関与するアレルギーにも注意が必要です。
このように、食べ物そのものがアレルギーの原因でないこともあります。
原因不明の症状があり、アレルギーが疑われる場合は、発症前に食べた物だけでなく、そのときの行動や食料品の保存状況、職業、事前の屋外活動なども含めて振り返ることが大切です。
本書では、食べ物がきっかけで起こるさまざまなアレルギーと、アレルギーが原因で起こる病気を紹介しています。重い症状の例を紹介していますが、実際の症状は命に関わる重いものから、アレルギーとは気づきにくい軽い不調までさまざまです。
「こんな症状もアレルギーだったのか」と思い当たることがあれば、自己判断せず医療機関に相談しましょう。
粉がダニに汚染され…手作りパンケーキで救急搬送
【パンケーキ症候群 パンケーキに潜んでいた犯人】
40代の女性Iさんは、休日にパートナーへ手作りのパンケーキをふるまうのを楽しみにしていました。
ある日、長期間保管していたミックス粉でパンケーキを作ったところ、食べ始めて間もなく、パートナーに涙や鼻水、まぶたや唇の腫れが出現。さらに咳や喘鳴、呼吸困難も現れ、救急搬送先でアナフィラキシーと診断されました。原因は食品成分ではなく、ミックス粉の中で繁殖したダニと判明しました。
パンケーキ症候群は、ダニに汚染された小麦粉やミックス粉を食べることで起こるアレルギー反応で、正式には「経口ダニアナフィラキシー」と呼ばれます。開封後の小麦粉やミックス粉を常温で長期間保存していると、室内のダニが入り込み、粉の中で増殖することがあります。そのダニの存在を知らないうちに一緒に食べてしまうことで発症します。
特徴的なのは、加熱してもダニのアレルギー成分が完全には壊れにくいことです。そのためパンケーキやお好み焼きなど中身がふわっとした料理の場合、中に残っているダニのアレルゲン成分によりアレルギー症状が現れることがあります。
長期保存を避け、思い切って処分を
パンケーキ症候群が見つけにくいのは、原因となるダニが肉眼ではほとんど見えないためです。そのため、粉の見た目やにおいに異常がなくても発症することがあります。また、ダニが混入した小麦粉やミックス粉を食べても症状が出るのは一部の人だけです。特に、ダニアレルギーやぜんそくを持つ人では発症しやすいことが知られています。
この病気の特徴は、小麦粉そのものではなく、保存中に混入・増殖したダニが原因になることです。その結果、小麦アレルギーと間違われることも少なくありません。普段の食生活の中に原因が隠れているため、食品の保存状況を含めて振り返ることが診断の重要な手がかりになります。
パンケーキ症候群の予防で最も大切なのは、粉製品の保存方法を見直すことです。
小麦粉やホットケーキミックス、お好み焼き粉などは、開封後そのまま戸棚に置かず、密閉容器に入れて冷蔵庫や冷凍庫で保存しましょう。湿気や高温を避けることで、ダニの繁殖を抑えることができます。
また、「もったいないから」と長期間保存した粉を使い続けるのは避けたほうがよいでしょう。大容量の商品よりも、短期間で使い切れる量を購入するほうが安全です。保存期間が長くなった粉は、思い切って処分しましょう。特にダニアレルギーやぜんそくのある人は注意が必要です。家族にダニアレルギーの人がいる場合も、粉製品の保存方法を見直しておくと安心です。
パンケーキ症候群は、食品そのものではなく不適切な「保存方法」が要因となるアレルギーです。日頃のちょっとした工夫が、重いアレルギー反応を防ぐことにつながります。
46歳女性…ピンク色のマカロンで救急搬送
【赤い食べものアレルギー かわいいお菓子に潜む危険】
パリ在住の46歳の女性Eさんは、ピンク色のマカロンをひと口食べた直後、まぶたや唇が急速に腫れ、のどが詰まるような違和感と息苦しさを覚えました。数分のうちに声も出しにくくなり、呼吸も浅く速くなったため救急搬送されました。病院で血管性浮腫を伴うアナフィラキシーと診断され、原因としてマカロンに使われていた着色料によるアレルギーが疑われました。
食品や化粧品などに使われる赤色の着色料「コチニール色素(カルミン)」によって起こるアレルギーで、正式には、「コチニール色素アレルギー」と呼ばれます。
コチニール色素は、エンジムシ(コチニールカイガラムシ)という昆虫から作られる天然由来の着色料で、お菓子や飲料、アイスクリーム、口紅などに広く使われています。
体がこの色素を異物と認識すると、じんましんやかゆみ、唇の腫れ、呼吸困難などの症状が現れることがあります。

特徴は、食べ物そのものではなく、色をつけるための成分が原因となることです。そのため、同じ色の食品でも、使われている着色料によって症状が出るときと出ないときがあります。
着色料のアレルギーは見つけにくい
コチニール色素によるアレルギーは、摂取後すぐ、あるいは数十分以内に症状が現れることが多く、重症化するとアナフィラキシーを起こすこともあります。
このアレルギーの原因が見つけにくい理由は、原因が食材ではなく着色料にあるためです。そのため、「いつも食べているお菓子なのに急に症状が出た」「同じ種類の商品なのに今回は反応した」といったことが起こります。これは、メーカーが着色料を変更していることがあるためです。
また、コチニール色素は食品だけでなく、化粧品や医薬品にも使用されています。そのため、口から摂取した場合だけでなく、皮膚や粘膜への接触が症状のきっかけになることもあります。特に新商品や海外製品、期間限定商品などは、思い込みを捨てて成分表示を確認することが、原因を見つける第一歩となります。
対策の基本は、コチニール色素(カルミン)を含む製品を避けることです。すべての赤色(ときにピンク色)の食品を避ける必要はありませんが、原材料表示を確認し、「コチニール色素」「カルミン」「E120」などの表示に注意しましょう。また、コチニール色素は口紅やチークなどの化粧品にも使用されることがあります。皮膚のかゆみや腫れなどを経験したことがある人は、使用している製品を見直してみることも大切です。
原因がはっきりしない場合は、食事内容や使用した化粧品などを記録し、アレルギー専門医に相談しましょう。原因を正しく知ることが、安全な予防につながります。
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