上の棚の物を取る、洗濯物を干す、服を着替える。そのたびに悩まされる肩の痛みには、どのように対処すればいいのか。整形外科医の歌島大輔さんは「その痛みは肩こりや五十肩ではなく、けんばん断裂かもしれない。もちろん病院に行ってほしいが、痛みを和らげ、肩の動かしやすさを保つためのおすすめの体操がある」という――。(第4回)

※本稿は、歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)の一部を再編集したものです。

肩の痛みを感じる男性
写真=iStock.com/Srisakorn
※写真はイメージです

肩こり・五十肩とは違う「けんばん断裂」

毎日、なにげなく繰り返している体の動きの中で、肩に痛みが走ることはありませんか。

上の棚の物を取ろうとして「痛っ」
洗濯物を干すのに腕を上げると「痛っ」
上着を羽織ろうとすると「痛っ」

当たり前の動作をするたびに痛い思いをするのは、つらいものです。痛いところまではいかなくても、なにか違和感があって、スムーズに肩を動かせないという方もいるでしょう。

その痛みや違和感の正体は「けんばん断裂」かもしれません。

「けんばん断裂」とは、肩の中の「腱板けんばん」というところが切れる疾患です。「反対側の手で支えれば腕を上まで持ち上げられるが、自力では上がらない」「動かそうとしても、力が抜ける」のであれば、けんばん断裂の可能性が高いでしょう。

「ドアのノブを回すように腕をひねったときに痛む」のであれば、けんばん断裂の可能性が疑われます。けんばん断裂は自然に治ることはほぼあり得ません。「年のせい」「肩こり」「五十肩」といって放っておくと、断裂が広がって悪化することがあります。

ここでご紹介する体操は、けんばん断裂の痛みや違和感を和らげて、腕を動かしやすくする効果があります。

やりかたは、とてもシンプル。毎日たった1分、簡単な体操を続けるだけで、腕を上げたときに「痛っ!」と顔をしかめる回数が減っていきます。肩の痛みや違和感を和らげ、動かしやすさを保つために取り入れたい体操です。痛みの原因がけんばん断裂でなかったとしても、無理のない範囲で試してみてください。

今回おすすめする体操は、2つです

(A)〈けんばん肩甲骨はがし〉体操
(B)〈けんばん腕ぶらぶら〉体操

肩の土台を整える〈けんばん肩甲骨はがし〉体操

【(A)〈けんばん肩甲骨はがし〉体操】

腕を下ろした状態から、肩甲骨を内側に寄せる体操です。

(1)ベースになる体勢をつくります。肩の力を抜きます。肩が下がっている状態で、腕もだらんと垂らし、手のひらを前に向けます。少しだけ顎あごを引きます。頭を少しだけ後ろに引くような感覚で、上半身が真っすぐ一直線になるように意識してください。首が長くなるように、首を上に伸ばします。背筋が伸びているはずです。

(2)ベースの体勢をしっかりキープしたまま、肩甲骨を腰のほう(斜め下)に寄せます。胸が開く感じがすると思います。

(3)5秒たったら、元に戻してリラックスします。(2)(3)を10回ほど繰り返します。

肩甲骨を腰の方(斜め下の方向)に寄せるようにイメージしましょう。肩甲骨を寄せるとき、できるだけ肩を下げるのがコツです。

〈けんばん肩甲骨はがし〉では、次のことに注意してください。

・肩をすくめないこと、
・肩を上げないこと、
・首が縮むようなかたちにならないこと、
・顔が胴より前に出ないこと、
・耳が体の軸より前に出ないこと

(1)で、きちんと体勢をつくることを意識しましょう。この体操をおこなうと、とても気持ちがいいはずです。10回以上おこなっても大丈夫です。ただし、痛みや異常を感じたら、そこでやめてください。回数を増やすより、毎日続けることが大切です。

腕が上がるなら効果の大きい「グリコポーズ」を

【〈グリコのポーズで肩甲骨はがし〉体操】

もし腕を上げられるようなら、〈グリコのポーズで肩甲骨はがし〉をおこなってみましょう。〈けんばん肩甲骨はがし〉よりも効果が高い体操です。どちらも、「肩の土台」となる肩のコアマッスルに刺激を与えることができます。

(1)肩甲骨を下げ、背筋と首を伸ばし、〈けんばん肩甲骨はがし〉と同じく、ベースの体勢をつくります。そのまま片腕を上げます。時計でいうと、右手なら1時、左手なら11時を指す角度です。

(2)肩甲骨を腰のほう(斜め下)に寄せます。上げた腕が後方に動き、胸が開く形になります。

(3)5秒たったら、元に戻してリラックスします。(2)(3)を10回、繰り返します。

もう片方の肩でもおこないましょう。

〈グリコのポーズで肩甲骨はがし〉では、両腕を同時に上げないでください。両手を上げると首まわりの筋肉が緊張しやすくなって逆効果です。痛みのある方には難しい動きです。腕を上げて痛みが出るようなら、無理におこなわないでください。

肩の奥に刺激を入れる〈けんばん腕ぶらぶら〉体操

【(B)〈けんばん腕ぶらぶら〉体操】

続いて〈けんばん腕ぶらぶら〉体操は、肩の奥に効かせる体操です。とてもシンプルで、腕を揺らしてインナーマッスルを整えます。指先が内側を向いたり、外側を向いたりと、自然に動いているのが感じられると思います。

(1)立った状態で、痛みのないほうの手でテーブルか何かにつかまります。頭をできるだけ下げて、腕は真下にだらんと垂らします。頭はしっかり下げてください。少しだけ膝を曲げると、頭を下げやすくなります。これがベースの姿勢です。

(2)手首を曲げ、親指と人さし指で何かをつまむような形にします。その体勢で、肩から指先までを一緒に「ぶるぶるぶるぶる」と回転させます。これを10秒から20秒続けます。

肩に力を入れず、腕全体に細かい振動を伝えるような感覚で、リズミカルに回転させてください。回転のペースは、速すぎず、遅すぎず、「気持ちいい」と感じる速さで。肩関節や肩甲骨が動いているのを感じてください。

(3)ゆっくり頭を起こします。ふらつきに注意してください。テーブルなどに添えた手を交換して、もう片方の肩もやりましょう。

腕に力を入れないで、だらんと脱力したままでおこなうのがポイントです。手首や肘を固めてしまうと、腕全体に力が入り、肩の奥にある腱板筋群まで振動が伝わりにくくなって、体操の効果が薄れてしまいます。

頭を下げるのが怖いなら、椅子に座ってもできる

【椅子に座ったまま〈けんばん腕ぶらぶら〉体操】

〈けんばん腕ぶらぶら〉体操は、頭を下げておこなうので、頭に血が上るように感じたり、立ったまま頭を下げるのが怖いと思う方もいらっしゃるでしょう。そういう方のための、椅子に腰かけておこなう体操です。

(1)椅子などに腰をかけます。両腕と手首を、真下にだらんと下ろします。両腕も手首もリラックスさせ、力を入れないようにしましょう。そして、上体を少し前に傾けます。脇が胴体から30度ほど離れた角度になります。

(2)その体勢で、両腕を「ぶるぶるぶるぶる」と回転させます。肩に力を入れず、腕全体に細かい振動を伝えるような感覚です。これを10秒。肩が動いていることを感じてください。

(3)ゆっくり上体を起こします。

おすすめはお風呂上がり、1日1回毎日続けて

デスクワークの合間におこなうと、とても気持ちのいい体操です。テレビを見ながらでも気軽にできます。

椅子に座ったままの〈けんばん腕ぶらぶら〉体操でも、リラックスしながら、やさしく腕を揺らすだけでも、肩に振動を伝える効果は十分にあります。

歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)
歌島大輔『肩のけんばん断裂 自力でできるリセット法』(アスコム)

一日のうち、いつおこなっても構いません。おすすめは、お風呂上がりです。入浴後は全身の血流が良くなり、緊張していた筋肉もほぐれているからです。

「やる時にはたくさんやるけれど、たまにしかやらない」のでは、効果が出にくくなります。1週間に1度、30分間おこなうよりも、1日1回、短い時間でも続けるほうが大切です。毎日続けることで、少しずつ症状の改善が期待できます。

無理をせず、毎日続けることで、少しずつ痛みが和らぐことが期待できます。痛みが減れば、肩を動かしやすくなって、日々の暮らしの中の何気ない動作がずいぶんラクになるはずです。