■編集部より指令

「見栄えや経済力の点は妥協できるとしても、バカだけはどうしてもイヤ」。

これは、婚活中の男女双方からよく聞かれる訴えです。

最初はたくさん持っていた結婚相手に求める条件を一つひとつ捨てていっても最後まで残ってしまうこの「バカ問題」。

日本の未婚化を防ぐためにも避けて通れないこの問題について、議論してもらいます。

■佐藤留美さんの回答

「許せるバカ」と「許せないバカ」の分岐点 -結婚とバカ・女の言い分
http://president.jp/articles/-/12012

■大宮冬洋さんの回答

結婚相手として許せない人

みなさん、佐藤さんの記事(http://president.jp/articles/-/12012)を読みました? 「神経の鈍い身勝手さ」という表現はすごいですよね。出世欲や性欲を満たすために自分を好いてくれている異性を「道具」扱いした……。あの世で閻魔様と面接したら、「おのれもだ!」と指差されて地獄に落ちそうな予感がします。おばあさんに席を譲りまくって小さな贖罪を重ねましょう。

さて、佐藤さんが許せない大バカについて書いてくれたので、僕は「悪い人じゃないけれど一緒にいたくないバカ」を論じますね。存在は許せるけど結婚相手としては許せない人のことです。

お題にある「見栄えや経済力の点は妥協できるとしても、バカだけはどうしてもイヤ」といった発言は、仕事ができて経済力も常識もある女性からよく聞きます。「バカ」とは露骨に言わずに、「話が合わない」とか「笑いのツボを共有できない」などの表現を使う人も多いですね。

逆に、頭がよろしくない女性は、30歳を過ぎても結婚相手に「イケメン」や「お金持ち」を真っ先に求めたりします。話は無理矢理にでも合わせるし、男のつまらない自慢話にでも大声で笑う自信がある。見た目や経済力が良ければどんなにバカでも大丈夫、というわけです。

自分もバカなので気づかないのでしょう。バカなイケメンはいずれ痛々しいちょいワルおやじになるし、バカな金持ちは調子に乗って大失敗する危険性が高いということを……。

「コミュ力」は必須

話が逸れました。仕事のできる女性が許せない「バカ」についてでしたね。彼女が問題にしているのは、もちろん学歴ではありません。仕事能力とは多少重なりますが、必ずしも一致しません。あえて一言でいえばコミュニケーション能力です。

相手の話を聞くふりは一応できるけれどきちんと受け止めることなく「僕の(勤める)会社では……」などとすぐに自分の話に持っていきたがる男性。コンプレックスが強いのか、相手の発言を曲解しがちで素直に聞くことができない男性。そもそも他者とのフラットで気軽なおしゃべりを楽しむ姿勢がない男性。あなたの周りにはいないでしょうか。僕の周りにはいますが、「知り合い」や「仕事仲間」に留めて、親しく付き合うことはありません。だって、一緒にいるだけですごく疲れるから。

間違ってサシ飲みなどをしてしまうと最悪ですね。あのさ、さっきから自分の話ばかりしているけれど、こっちの話もちゃんと聞いてよ、お前は双方向機能のないテレビかよ、このバカ! と叫んで店を飛び出したくなるほどです。ホステスさんはストレスが溜まるだろうな、としみじみ思います。

大げさに褒めてもらったり親身になって慰められたり、を相手に求めているわけではありません。ただ、こちらの話を最後までちゃんと聞いてほしい。あなたの話も聞くからさ。そして、共通の話題で議論したり笑い合ったりしようよ。

カーテンの柄について話し合えるか

人の話をちゃんと聞けないバカと結婚したら悲惨ですね。結婚は生活のほぼすべてを共有するので、真剣に(深刻に、ではありませんよ)話し合わなければならないテーマが無数にあります。カーテンの柄をどうするか、今夜食べたいもの、今週末の過ごし方、親兄弟との関係、未婚時代の友だちとの付き合い方、お金の使い方、仕事の悩み、などなど。子どもができたら話し合いのテーマは倍増することでしょう。

結婚相手といえども他者なので価値観や意見に違いがあって当然ですよね。むしろその違いを面白がり、自分の欠陥を補ってくれるかもしれないと思うべきです。

しかし、まともにコミュニケーションができなければ違いを楽しむことも補い合うこともできません。言い知れぬ不満を抱えたまま、お金と家事を交換するだけの仮面夫婦になってしまいます。

最も近くにいて一度きりの人生を分かち合うはずの男性と、本当の意味での会話ができない悲しみと喪失感。そんなものを味わうぐらいなら一生独身でいたほうがマシだと思う女性がいても不思議ではありません。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/