■編集部より指令
「見栄えや経済力の点は妥協できるとしても、バカだけはどうしてもイヤ」。
これは、婚活中の男女双方からよく聞かれる訴えです。
最初はたくさん持っていた結婚相手に求める条件を一つひとつ捨てていっても最後まで残ってしまうこの「バカ問題」。
日本の未婚化を防ぐためにも避けて通れないこの問題について、議論してもらいます。
■大宮冬洋さんの回答
デキる女性が、結婚相手にしたくない男 -結婚とバカ・男の言い分
http://president.jp/articles/-/12013
■佐藤留美さんの回答
「つまらない男」はまだ許せる
馬鹿を広辞苑で引くと、「おろかなこと、社会的常識に欠けていること、取るに足りないつまらないこと」などとあります。
では、女性が結婚するのだけは「どうしてもイヤ」と毛嫌うバカとは、上記の「馬鹿」と同義でしょうか?
自分の馬鹿を棚に上げて言うのはなんですが、おろかな男性も、社会的常識に欠ける男性も、取るに足りないつまらない男性も、シッカリ伴侶を見付けて結婚している印象です。
つまり、常識知らずも、つまらなさも、多くの女性からしたら「許せるバカ」の範疇なのではないでしょうか。
罪のない馬鹿、邪気のない馬鹿に女性は寛容なのです。
だったら、女が許せないバカとは何なのでしょうか?
結論から言うと、それは「神経の鈍い身勝手さ」を指すのではないでしょうか。
たとえば、私はこんな大馬鹿の話を聞いたことがあります。
こんなにいる! 大バカ男たち
ある女性が、ある男性のことを好きになっていました。その男性は、接待が多い仕事をしていました。そして、不幸なことに、その女性には魅力がありました。
男性は、その女性が自分に惚れているということを利用して、接待の日、「ちょっと来てよ」とまるで彼のビジネスに関係のない彼女を呼び出し、挙句の果てには「自分は仕事がある」と中途で帰ったというのです。
恐らくその男性は、その女性を自分の接待の道具として差し出すつもりだったのでしょう。
彼女は泣きながら帰ったそうですが、しばらく男性不信となり貝のように心を閉ざしてしまいました。「あんな馬鹿を好きになった自分が憎い」と悔やんで言いましたが、その無念や計り知れません。
あるいは、こんな馬鹿男に酷い目に遭った女性もいます。
最近では、ある一定の時間には会社から社員を締め出してしまう会社もあります。
彼女の彼氏は、そんな会社にいて、翌日に大事な仕事(恐らくプレゼン)を控えた身でした。だから、資料を手直ししたい。ところが、その日は既にタイムオーバーで会社から帰宅命令を出されてしまった。しかも、その会社の規則で、自宅に持ち帰っての仕事を禁じられていた。
そこで、その男性は彼女を深夜に呼び出し、「パソコン持って来ーい」と厳命した。それに応じた彼女は、首都圏ベッドタウンに住んでいましたが、自分のノートパソコンをタオルに包んで車で駆けつけました。
彼女は彼氏の助けになりたかった。だから、翌日が寝不足で仕事にならないことなど承知の上でわが身を尽くしたのです。
ところが、待ち合わせの場所に現れた彼氏は開口一番、「おっせーよ」の一言。「だから、都民じゃない女は嫌だよ」と言い放ったのだと言います。
帰路、彼女は目に涙を溜めながら第三京浜をひた走ったと言います。
今もまだまだ多い男尊女卑男たち
男女平等、男女同権が当たり前の世の中とはいえ、「女は男に尽くして当たり前。俺様が目をかけてやってるだけ上等だと思え」とでも言わんばかりの男尊女卑男はまだまだ生息しています。
しかも女性は女性だという理由だけで、肉体的価値を狙われやすい。
だから、女性は異性を素敵だと思う感覚より、不快だと思う感覚のほうが鋭敏になってしまうのです。
女性が「馬鹿な男だけは勘弁」と言っているのは、その多くの場合は決して傲岸不遜かつ贅沢な要求ではなく、自分の心身を守るための意見だということを、男の方は念頭に置いて頂きたいと思います。
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。