※本稿は、佐藤よし子『本当は怖いアフタヌーンティー 英国階級社会の真実』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。
英国での「特別扱い」の意味
雑誌を開けば、ヨーロッパの素晴らしいホテルやレストランがたくさん紹介されています。そのようなレストランを訪れて「すごーくよかったわ。しかも特別室に案内されたの」と喜んで土産話をなさる人がいらっしゃいます。でもそれは「特別室」ではなくて「隔離」かも。
パリを研修で訪れた国会議員たちが、観光スポットを訪れたのちレストランに行き、「個室」で食事をなさったそうです。その「特別扱い」の意味に気づかないといけません。それは「特別扱い」ではなく「隔離」。いかにも食事で騒ぎそうな日本人だと警戒されたのですよ。
とある旅行代理店主催のパリツアーで、「オテル・リッツ・パリ」でお食事をした方が、「特別室だったわ〜」と喜んでいましたが、これも「隔離」。おしゃべりがうるさいから。テーブルマナーがなっていないから。
日本人同士の海外旅行で、楽しく、リラックスして食事をしたいのは理解できますが、それならパブへどうぞ。ヨーロッパの五つ星ホテルやレストランでは、日本人団体客はうるさがられています。
五つ星ホテルに背もたれの高いイスがある訳
ロンドンの五つ星ホテル「ザ・サヴォイ」のお隣に、「シンプソンズ・イン・ザ・ストランド」という古いレストランがあります。奥のほうに、ハイバックのベンチのあるテーブル席があり、まわりからテーブルは見えません。ちょうど化粧室に行くときに通る場所なので、背もたれで囲まれた中をちらっと見たら、案の定、そこでは会社員とおぼしき日本人男性のグループがビールで乾杯していました。フロアの人と目が合うと、やれやれ、というようにウィンクしていましたが。
「シンプソンズ・イン・ザ・ストランド」や「ザ・サヴォイ」「クラリッジズ」のような格式のあるレストランで「ビールで乾杯」はやらないでください。それはマナー違反です。
シャンパンや白ワインで始めてください。ビールジョッキを傾けてお互いの労をねぎらいたいのなら、素敵なパブがいくらでもあります。
朝4時から朝食を用意される日本人
「サヴォイでローストビーフを食べましょう」「サヴォイに泊まりましょう」という魅力的なツアーがあります。朝食が4時や5時なんていう、とんでもない時間に設定されているのはご存知でしたか? 日本のみなさんは勤勉で、朝早くから観光に出るのでそのスケジュールに合わせて、というわけではありません。ほかの宿泊客と時間帯をずらすためなのです。
なぜって、日本人の朝食風景はめちゃくちゃですから。全部の料理を片端から一度に自分のテーブルに運んで食べ始め、最後にヨーグルトやジュースを取りに行く日本人は、「朝食を逆から食べる国民」と言われています。その理由は後述しますが、英国人は食事の順番にもうるさいのです。
一流のホテルに泊まることを楽しみにしているのは、日本人だけではないのです。そういう人たちが、朝から美しくない食事の姿を見なくてはいけないのは苦痛なのです。ですから、「時間の隔離」をされてしまいます。
マナー違反ばかりなのに気づかない
グラスをあてていいのは、王様と天皇陛下だけです。ある大使は、グラスをあてにくる日本の大臣から、どうやって逃げようかと真剣に考えていらっしゃいました。
いまだに、スープをズズズ、とすする方もいらっしゃいます。職場では偉かった年配の男性に多いのです。日本で、自信をもって生きてきた方って、人の言うことを聞かず、マナーにも無関心です。ある大使館では、もう日本人にスープは出さない、と決めたところもあります。
ヨーロッパの人々は、すすりあげる音がものすごく苦手なのです。鼻をかむ音はよいみたいなのですが。
ハンカチを膝に置く女性も多いのですが、これも英国人が見たくない風景。まして、タオル地のハンカチなんて! タオルはバスルームで使うものなので、大変不思議がられます。膝に置いてよいのはナプキンだけです。
また、著名人こそマナーに気をつけていただきたいものです。
かつては、周囲の人やホテルのサービスの人に馬鹿にされるだけだった要人の立ち居振る舞いは、良くも悪くも、テレビやインターネット、SNSの波に乗り、画像を伴って瞬時に世界に広まってしまいます。残念ながら、悪い噂のほうが広まりやすいのです。
海外の要人に会いに行く政治家は、テレビカメラが付いて回っていることをゆめゆめ忘れないでいただきたいものです。マナーを知らないで育ってしまった人として、世界中にさらされているのです。
日本の首相だけが「座ったまま握手」
各国の要人が一堂に会する重要会合ともなれば、人が入れ替わり立ち替わり挨拶することは当たり前です。他の首脳より先に席に着き、座っていた当時の日本の首相のもとに、挨拶に寄る他国の首脳。ほぼ初対面のはずなのに、日本の首相は座ったまま相手のほうに顔を向けて握手。にこやかに握手をすれば済む、というものではありません。文化の違いという言い訳もできません。
握手は挨拶。握手をするときは、立ち上がって、きちんと相手に目と顔と体を向けること。この映像が一瞬のうちに世界を駆け巡ってしまったことは言うまでもありません。
すでに故人となったある政治家が首相時代のこと。英国王室のディナーパーティーで、食事の始まる前、席に近づいてきたエリザベス女王に座ったまま握手したと報道されたときは、タブロイド紙で「茶道では、武士は何があっても立ち上がらない」とコメントされたそうです。
ディナーでコーラを注文した大統領
コーラ好きのアメリカ人は多いですが、大統領も例外ではないようです。ある大統領がエリザベス女王からお茶に招待されたときのこと。女王にお茶をすすめられると「コーラがいいね」と言ったとか。
また、あろうことか、その後の晩餐会でワインが供されたのに、彼はやっぱりコーラを注文したのです。そのワインは、ヴィクトリア女王にも献上されたことのある、とっておきのモルドバのワインだったのに。
どんな料理にもコーラを飲むというのはいかがでしょう。飲み物にもマナーがあるのです。
