復職後について、打ち合わせしたいときは

育児休業からの復帰前に本人と打ち合わせをするかどうかは、会社や上司によっていろいろです。

育児休業者を支援するプログラムをつくっている会社では、育児休業者に定期的に情報を送ったり面談をしたりして復職をサポートしていますが、まったく音沙汰のない会社もあります。不親切というよりは、育児休業への対応に慣れていないとか、たまたまそういう慣習になっているからという場合も多いでしょう。

上司から特に連絡はないけれど、復職後について打ち合わせをしたい場合は、こんなふうにお願いしてみては?

「先日、保育園が決まり、予定どおり4月から復帰できることになりました。よろしくお願いします! 復帰後の仕事のことを一度ご相談したいと思っているのですが、少しだけお時間いただくことはできますでしょうか」
「来週、そちらに行く用事があるので、課長のお時間があるときにうかがって、一度復職前のごあいさつをさせていただきたいと思っているのですが、ご都合はいかがでしょうか」

総務との必要書類のやりとりや同僚への子どもの顔見せのために職場を訪問する人もいると思いますが、そんなときに上司にもあいさつをし、「今度、復職に向けて相談させてください」とお願いしてみてもよいと思います。

働きがいを失わない「予防線」の張り方はあるか

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復職前の打ち合わせで相談すること

復職前の打ち合わせのオフィシャルな目的は、復職後に担当する業務についてのすり合せです。まず、ここから話が始まり、関連して、子育てとの両立に関する事情も伝えるという流れになることが多いでしょう。

何をどこまで期待されているのか上司の言葉をしっかり聞き取り、もしも希望や不安があれば、遠慮しないで相談してみましょう。希望どおりの話であれば、「頑張ります!」と意欲を表明して、「でも、こういう場合がありますので、申し訳ないのですが、そのときはフォローをお願いします」と、子育てとの両立による「制約」も伝えます。

復職後の業務としてオファーされた内容が、かなり無理をしないと責任を果たせないような内容だったら、「できます!」と言ってよいのか迷いますね。はじめての育児休業からの復職の場合、「頑張らなくては」という思いが強すぎて無理をしてしまいがちです。「できない」ことを「できる」と言ってしまって、あとで迷惑をかけるのは避けたいもの。といっても、予防線を張ったら、思った以上に与えられる仕事がレベルダウンしてしまったという人もいて、着地点をさぐるのはなかなか難しいようです。

以前の仕事よりも緩い仕事をオファーされた場合は、両立しやくなるものの、仕事のやりがい、昇進・昇格などとの関係が気になるでしょう。

できれば、職場の先輩たちがどうしているのか事前に情報を集めておくとよいでしょう。勤務時間、残業・出張の有無、困っていること、その後のキャリア、会社の人事の傾向など。また、家では配偶者と相談して、残業や出張、子どもの病気のときはどうするか見通しをもっておくと、結論を出しやすくなります。

面談で上司に必ず伝えるべきこと

復職前の打ち合わせで、場合によっては担当業務のことよりも先に話さなくてはならなくなるのが、働く時間のことです。

短時間勤務制度を利用する場合は、業務の割り振りに関係するので、早めに決めて上司に伝えたほうがいいのですが、決まった保育園が遠い、0歳児の保育時間が短い、親あるいは子どもの体調に不安があるなど、復帰が迫ってから事情が変わることもあります。そんなときは、遠慮はいりません。育児・介護休業法は、3歳未満の子どもを育てる男女社員が短時間勤務を利用できるように制度を設けることを会社に義務づけています。

短時間勤務制度を利用しない場合も、保育園のお迎えがあり基本は決まった時間に仕事を切り上げなくてはならないこと、子どもの病気で急な早退や欠勤があることなどは伝えておきます。育児休業者が多い職場ではもう常識かもしれませんが、上司に改めて頭を下げてお願いすることで、理解・協力を得やすくなります。

残業・出張はできるのか、子どもが病気のときはどうなるのかは、保育園の開所時間、配偶者の勤務の状況、実家のサポート、その他のサービスの利用の有無などによって違ってきますので、自分の状況を具体的に伝えておいたほうがよいでしょう。病児保育の利用などの対応策があれば、上司も少し安心できるはずです。

ただし、上司によっては私的な事情は聞く耳をもたない人もいます。相手が受けとめられる範囲で伝えるということも、よい関係を保つためには必要です。話しにくければ、細かいことは必要なときにそのつど小出しに伝えましょう。

不利益な条件が提示されたときは

「子どものために、パートタイムの働き方に変えてはどうか」「無理をしたくないなら、職位を下げて働くという方法もある」などの提案を上司からされることもあります。望まない提案であれば、受ける必要はありません。

育児・介護休業法は、育児休業の取得、短時間勤・残業の免除などを希望したことを理由に不利益な取扱いをすることを禁止しています。不利益な取扱いとは、解雇、有期雇用者の契約更新をしないこと、正社員をパートタイムなどの非正規雇用とすること、降格・減給、賞与等の算定や人事考課で不利益な扱いをすること、不利益な配置変更などのことです。

意外に法律を知らない管理職も多いので、不本意な変更を強要されそうなときは、人事に相談してみましょう。行政機関では、各都道府県に設けられた労働局雇用均等室でも相談を受け付けています。匿名で相談することも可能です。

そんなこんなで上司との関係が悪化したとしても、ずっと同じ上司のもとで働くわけではないので、耐えていればきっと道は開けます。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。