株主優待なら銘柄選びも難しくない

「アベノミクス相場にのって株で儲けた~!」
そんな話を聞いて悔しい思いをしていないだろうか。
「私も株式投資をしてみたい」
そう思っている人も少なくないはずだ。

株式投資を始める際、もっとも高いハードルに感じるのは、銘柄選びだろう。

株式投資は、特定の企業の株を買い、株価が上がったところで売ることで『売却益』(値上がり益)が得られる。

ということは、値上がりしそうな銘柄を選ぶことが重要であり、なかなか難しそうと思いがちだが、銘柄選びには、もっと別の視点もある。『株主優待』で銘柄を選ぶ、という考え方だ。

株主優待とは、年1~2回、自社製品や経営する店舗・施設の優待券などが定期的に株主に贈られる制度で、上場企業の3分の1程度が実施している。

ひと言でいえば、企業から株主へのお中元、お歳暮のようなもので、「株を持ってくれてありがとう」という感謝と、「ずっと保有していてください」という願いを、株主優待という形で表しているといえる。

株を持ってくれる(買ってくれる)人が減ると株価が下がり、敵対的買収の標的になりやすいなど、経営に支障をきたすことがある。だから「ずっとこの会社の株主でいたい」「この会社の株が欲しい」と思ってもらうために、株主優待を行ったり、優待内容を充実させたりしているのだ。

働く女性に嬉しい優待の例は?

かなり魅力的な優待を行っている企業もあり、優待にひかれて株式投資をはじめる人も多いし、「配当や株主優待を受けながらじっくり株を保有し、将来的に株価が上がったら売る(売却益を得る)ことも考える」という投資家も少なくない。

たとえば[ANAホールディングス]は、年2回、1000株の保有で片道普通運賃50%割引券1枚と、ANAグループ各社(ホテル、レストラン、国内外ツアー、ショッピング、ゴルフなど)の優待券などの株主優待が受けられる。割引券は年末年始などの繁忙期でも利用できるので、割引チケットが入手しにくい帰省の際などに重宝する。1000株買うための投資額の目安は22万円前後だ(2014年1月末現在。以下、同)。

レストランカラオケの[シダックス]は、100株以上の保有で、ルーム料金や飲食代金に充当できる525円の割引券が5枚もらえる。投資額の目安は5万円前後。家族や友人と楽しむのもいいし、会社の後輩を連れて行ってそれとなく株主であることをアピールするのもよさそう。

化粧品製造・販売の[シーボン]の株主優待は、エステサロンや通信販売で使えるクーポン券。100株・1年未満の保有では5000円分、同1年以上3年未満の保有では1万円分など、長く保有している株主ほど内容が充実するのが特徴。希望者には20歳以上の女性限定でサロンケア無料招待もある。投資額の目安は23万円前後。化粧品関連では、[ドクターシーラボ]、[ハーバー研究所]などにも注目したい。株主優待でスペシャルケアを楽しみ、女性力をキープする、というのもよさそう。

100株で年2回、新商品を含む1000円相当の自社製品が贈られる[カゴメ](投資額目安17万円程度)といった実用的なもの、年2回、100株でギフトカタログ(2000円相当。保有期間3年未満の場合)進呈の[日本管財](投資額目安20万円程度)など、お楽しみの要素があるものなど、内容もさまざまだ。

どんな優待があるかを調べるには、『YAHOO!ファイナンス』が便利。トップ→株式→株主優待、と進むと、優待の内容や投資金額、企業名などから検索することができる。

優待を受けるための条件は2つ

図を拡大
権利確定日の3営業日前までに……/優待を受けるのに必要な株数を買っておく

優待を受けるためには、『権利確定日(株主としての権利が確定する日。割当基準日ともいう)の3営業日前までに』、『優待を受けるのに必要な株数を買っておく』必要がある(図参照)。

このふたつの条件を満たした投資家には、権利確定日から2~3カ月後に優待品が届く。

優待目当てで株を買い、権利が確定したら売る投資家もおり、権利確定日前には株価が上昇しやすい。優待や配当を受けても、株価が下がってしまっては元も子もないので、直前に買うのは避けた方が無難だ。

割引券などは利用期限が設けられているものが多いということも、知っておきたいポイント。金券ショップに売るという方法もあるが、基本的には、自分で利用できるもの、利用価値が高いもの、に絞った方がいいだろう。

優待の内容は変更されることや縮小されることもあるほか、業績が悪いと株価が下落しやすいので、業績についても確認しよう。

フリーライター 高橋晴美(たかはし・はるみ)
1989年よりライターとして活動。資産形成、投資信託、住宅ローン、保険、経済学などが主な執筆テーマ。