【相談内容】

「明日にでも結婚したい!出逢って即結婚できる方法を教えてください」(29歳・ケイコさん 食品メーカー)

【牛窪恵さんの回答】

「スピード婚」の法則

最近、「一刻でも早く結婚したい」と相談を受ける機会が、目に見えて増えました。

昨年、安倍政権が「女性手帳」の構想を打ち出したせいもあるでしょう。

2010年、私が『「婚・産・職」女の決めどき』という本にも書いたとおり、女性には哀しいかな、出産だけは「35~37歳ぐらいまでに」という生理的な目安がある。

2012年放映の「NHKスペシャル・産みたいのに産めない~卵子老化の衝撃」でも、「35歳の女性でも、出産できる可能性は20代の半分!」と、厳しい現実が突きつけられました(NHK総合/6月23日放映分)。

昨年5月、内閣府の作業部会から一旦浮上した「女性手帳」の構想も、医学的見地から“30代半ば”までの妊娠・出産を推奨し、若い女性たちに将来の人生設計を促そう、というもの。

この考えに基づくと、仮に「33歳までに出産しよう」と思えば、逆算して「31、2歳ぐらいまでに結婚しないと」となる。

いま29歳のケイコさんが、「明日にでも結婚を!」「ゆっくり恋愛してる暇なんかない」と焦るのも、よく分かります。

では、どうすれば「出逢って即結婚」となるのか?

さまざまな見解がありますが、今回は私のマーケッターとしての立場から、マーケティングに基づく「スピード婚の法則」をご紹介しましょう。

まず、昨今の結婚カップルが、出逢ってからゴールインするまでにどれぐらいの年月を要しているか? すでにご存じの方も多いかと思います。

正解は、平均4.26年。約30年前に比べ、1.72年も余分にかかります。

「恋愛結婚」のカップルに限ればさらに長く、平均で4.48年にも及ぶのが現実です(10年 国立社会保障・人口問題研究所「第14回出生動向基本調査」)。

この平均値に照らすと、現29歳のケイコさんが今日誰かと出逢ったとしても、結婚する段階で33歳を超える。1~2年後に子どもを授かれればラッキー、それを過ぎると“不妊”の確率が高まる懸念も出てきますよね。

先日、「妊活に集中したいから」と今春からの休業を宣言した、お笑いトリオ・森三中の大島美幸さんは、居酒屋で放送作家・鈴木おさむさんと出逢い、交際を経ずに結婚を決めたことでも有名です。

でもさすがに、ここまでの「超スピード婚」は、極めてまれ。

男性には、女性ほど厳密な“出産の期限”があるわけではないから。いまだに彼らは、女性ほどは結婚・子作りを焦りません。

婚活必勝法「ターゲット・マーケティング」

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ターゲット・マーケティング

また、一般に男性は、年収や経済が安定しないと「即結婚」とは考えにくい。

つまり、ケイコさんたち女性が「明日にでも結婚したい」と思うなら、受け身ではダメ。自分から戦略的に動かないと、結果はついてきません。

そこでお薦めしたいのが、商品の販売戦略に用いる、「ターゲット・マーケティング」。

自分が狙うべき市場を「確固たるターゲット」と位置づけ、そこに集中して販売活動を展開することです。

「近代マーケティングの父」とも呼ばれるフィリップ・コトラー。彼の理論を元にすると、ターゲット・マーケティングにはおもに、「[1]環境分析→[2]市場細分化→[3]ターゲティング→[4]ポジショニング→[5]マーケティング・ミックス」と、5段階に分かれます。

話が少しややこしく見えるので、分かりやすく説明しますね。

まず、上記を「商品販売」ではなく「婚活」に当てはめて考えてみましょう。

今回、売りたいのは「ケイコさん」という商品。

よって最初の「[1]と[2](環境分析と市場細分化)」では、本来はケイコさん自身の「強みと弱み」や、「競合を鑑みて、どの市場なら売りやすいか」を、客観的に分析する必要があります。

ただし婚活の場合、この段階で「私は周りより美人だから」とか、「学歴はイマイチだけど会話力は平均以上」などと、自分を正確に客観視できる人は珍しい。

そこで注目して欲しいのは、「[3]~[5](ターゲティング~マーケティング・ミックス)」の部分。すなわち、

◆[3]=自分は、どの領域の男性をターゲットにしたいのか?
◆[4]=自分が、[3]の領域で強みを発揮できるポイントはなにか?
◆[5]=[3]や[4]を踏まえ、自分をどう売り込むのか?

です。

実はこの手法で、見事! 出逢いから、わずか3カ月で結婚を決めた女性がいます。

20代最後の日に結婚式

それが、中堅商社に勤めるユキさん。

私が先の著書『女の決めどき』で取材した当時、彼女は30歳でした。

聞くと、「絶対に30歳までに結婚する!」と周りにも豪語し、実際に誕生日を迎える前日、20代最後の日に結婚式を挙げることに成功した。

自分では深く意識してはいませんでしたが、彼女がとった戦略こそ、まさに「ターゲット・マーケティング」です。

具体的には、次のような流れ。

◆まず[3](ターゲットの絞り込み)を実行
=「誠実なスポーツマン」「実家(埼玉)の近くに住む男性」をと考え、この2つの接点に当たる「地元の草野球チームにいる男性」に照準
◆次に[4](自分の優位性)を考察
=野球のスコアが付けられること、土曜がフリーでチームのマネージャーをやれること(経験あり)、洗濯や弁当作りが得意、など
◆ そして[5](そんな自分をどう売り込むか)を決定
=草野球好きが集まるミクシィ、専用サイトなどで「埼玉」「募集」「マネージャー」などと検索。マネージャー募集中のチームに即応募

するとわずか10日後、地元の草野球チームにマネージャーとして採用が決定。

そして毎週土曜日、実家から30分の距離にある野球グラウンドに通うようになりました。

自分のクルマも免許も持っていたユキさんですが、あえてバスで通っていたのは、「そのほうが、お目当ての男性にクルマで送ってもらえると思った」から。

狙いは面白いほど的中、チームに入って1カ月足らずで、地味ながら実直そうな男性に「よかったらクルマで送りましょうか?」と声をかけられた。

そして出逢いから2カ月後。男性から「付き合ってください」と言われたユキさんは、思い切って言ったそうです。

「ありがとう。できれば私、20代で結婚したいんです。あと3カ月しかないけど、それでもいいですか?」と。

ユキさんの「あと3カ月しかない」宣言は、かなり勇気がいるひと言。

ヘタをすれば、「いきなり結婚って、ちょっと引くよ」と、男性を身構えさせる可能性もあります。

飽食世代に効く「期間限定商法」

でもユキさんのなかでは、「20代のうちに結婚したい」と、確固たる目標があった。

また、「いつまで」と期限を区切るのは、実はマイナス効果だけではありません。

最近、マクドナルドのハンバーガーやデパ地下スイーツも打ち出しているとおり、この手法は「期間限定商法」と呼ばれるもの。

すなわち、「いつまでしか売りに出ないから、買うならいまですよ」と、まさに「いまでしょ!」を訴えかけるアプローチです。

「いつでも買えるなら、いまじゃなくてもいいや」と考えやすい、飽食の時代に育った20~34歳ぐらいまでの男女には、とくに有効だとされています。

ユキさんの例は極端ですが、でもここからハッキリ見えることがあります。それは、

◆婚活では「自分の優位性([4])」を考察することも大事だが、
◆その前に、「ターゲットの絞り込み([3])」を行なうほうが、攻めやすい
ということ。

よく、婚活の場では「自分の強みが何か、よく考えなさい」と言われますが、初めにそこを考えようとすると、あれこれ考えすぎて袋小路に入ってしまう。

でも、「自分は、こんな異性と結婚したい」とターゲットを、より具体的に絞り込むことは、たぶんいますぐできる。

そうすれば自ずと、「[5](自分をどんな場でどう売り込むか)」も、見えてくるでしょう。

昨秋、「私、どうしても西洋人の男性と結婚したいんです」と切望する派遣社員の女性(20代後半)には、次の3つを薦めました。

◆派遣先に、六本木、汐留など、外資系企業が多いエリアを希望する
◆パーティを開催してくれる英会話スクールに通い、青い目の友達を増やす
◆Facebookで、女友達の「友達」欄に着目、西洋人の友達紹介をお願いする

彼女も、念願の汐留に派遣されてから2カ月後に、職場のイギリス人男性と交際をスタート。残念ながら別れてしまいましたが、いまはイベントで知り合った別のアメリカ人男性と付き合い始め、結婚後の渡米も視野に、交際を深めているそうです。

……よく、婚活疲れの男女は、「これほど動いてるのに、出逢いがない」と洩らします。でも、スピード婚に必要なのは、数多くの異性と出逢える「出逢い力」じゃない。

コレと思うターゲット(市場)をまず絞り込んでから、集中して限られた相手との出逢いを探る「絞り込み力」「集中力」です。

皆さんも、明日といわず今日から、まず「ターゲットの絞り込み」を始めてみませんか?

牛窪 恵
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。 2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。10月末『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』 (PHP研究所)が発売。12月5日『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)が発売に。財務省財政制度等審議会専門委員。