【相談内容】

「35歳独身です。いまから結婚相談所にお金をかける意味って、果たしてあるんでしょうか?」(35歳・ミホさん 百貨店)

【牛窪恵さんの回答】

40代男性登録者の9割が「20代の相手がいい」

私は2004年に、拙著『男が知らない「おひとりさま」マーケット』を、06年に『独身王子に聞け!』という本を執筆。以来、シングル男女の恋愛傾向について、それぞれ取材を続けてきました。

これまで、結婚相談所にも数多く取材しました。オーネット、ツヴァイ、サンマリエ、IBJといった大手から、個人や地域が支援する中小の相談所(紹介所)に至るまで。

その過程で最も驚いたのは、相談所に属する「相談員(コンシェルジュ、カウンセラー)」の方々が、軒並みこう話していたことです。

「男性は40代でも、9割以上が『お相手は20代女性がいい』って言うんですよ」

当のシングル男性に取材すると、確かに当たらずとも遠からず。

ほとんどが、「ここまで待ったんだし」「そりゃ、若いほうがいいですよね」と口にする。ふた言目には必ず、「だって、子どもが欲しいから」……。

その気持ちも、分からないことはありません。

でもミホさんのように、アラフォー年齢が近づくシングル女性からすれば、「なんて失礼な」「結局は男って!」と怒りがこみあげてくるはず。

「いまさらお金を払って結婚相談所に登録しても、これという男性は紹介してもらえないのでは?」と、不安もよぎるでしょう。

ところが「現実に、相談所に登録する人の年齢は?」と見ると、予想以上にアラフォー以上の男女も多い。男女比も、大手ではほぼ半々か、男性のほうが少し多めです。

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<日本結婚相談所連盟>登録会員・年齢の内訳

たとえば、全国約900社の結婚相談所とその会員約5万人を結ぶ、結婚相談所の連盟組織「日本結婚相談所連盟」のデータ。これを見ると、男性は40代前半、女性は30代後半がそれぞれ、登録者のボリュームゾーン。

とくに、ミホさんと同年代“35~39歳”の登録女性は9000人以上、約3万人の女性会員の3割以上を占め、断トツトップであることが見てとれます(13年12月現在)。

20代のころまでは自然な出逢いを求めていた男女も、40代に近づいて毎日仕事などが忙しくなると、「待っているだけでは出逢えない」と切実に感じるようになる。そこで「ならば」と、結婚相談所に登録するケースも、少なからずあるわけです。

1年以内の成婚率66%の相談所も!

では実際、登録から結婚に至る男女は、どれぐらいいるのでしょうか?

結婚相談所の成約(成婚)率は、ハッキリ言ってピンキリのようです。

一般には「数%台~10、20%台ぐらいまで」と言われますが、相談所の規模によっても大きな差が出るもの。

仮に会員数が25人しかいない相談所で、たまたま5組(10人)が結婚までたどり着けば、成約率は40%にもなります。よって、一概には比較できませんよね。

一方で、ほとんどが成約率を明示しないなか、ハッキリその数値をうたっている相談所は「それなりに信頼できる」との見方もある。

その一例は、例年1割超の成約率を誇るオーネットや、06年に事業に参入して以来、約2割のカップルを成約させているパートナーエージェント。

とくに後者は昨今、1年以内の成約が成婚カップル全体の66%を超えるなど、業界でも話題に。大手各社ほどは規模が大きくないだけに、きめ細かなサービスを売りにしています。

ただ、結婚相談所への登録で注目すべきは、「成約率」よりもっと根本にある。

私がそのことに気づいたのは、相談所のベテラン相談員の方々にこんな質問を投げたときでした。

牛窪:「アラフォー年齢になって、結婚相談所でお相手に巡り合える人とそうでない人、その違いをひと言で言うとナンですか?」
A社の相談員:「柔軟性です」
B社の相談員:「『聞く力』かな」
C社の相談員:「自分を変えられること、でしょうか」

そう。別会社の3人とも、表現する言葉は違えど、言っている中身は同じ。

つまり相手の話をキチンと聞いて、それを受け止め、柔軟に自分を変えられるかどうか。これが、アラフォーを過ぎて結婚相談所で成約できるかどうか、の最大の焦点だというのです。

新しい自分を発見できる可能性あり

確かに、考えてみれば納得できます。

そもそも多くの結婚相談所には、「相談員(コンシェルジュ、カウンセラー)」がいる。程度の差こそあれ、この方々と、自分の強みや「こういうお相手がいいかな」という思いを何度かやり取りしながら、ときに軌道修正し、本当にピッタリくるお相手を探せるのがいいところです。

そこで想定外の自分に出逢えたり、元来ノーマークだった異性とのデートを薦められることで、「その方向性があったか!」と発見できるのも、結婚相談所の大きなメリット。

逆に、会員自身がとても頑固で、「誰になんと言われようが、自分はこうだから」とか、「こういう相手じゃなきゃイヤなんです」と言い張るのであれば、なにも相談員はいなくてもいい。

そこまで確固たる自信やゆるぎない理想があるのなら、お金を出して相談所に登録せず、自分なりにターゲットを絞って、マイペースで婚活できそうですよね。

また、「自分の吊り書き(出身校や年収、身長など)には自信がないけれど、コミュニケーション能力なら誰にも負けない!」という社交上手な男女には、結婚相談所よりもむしろ「お見合いパーティ」など、最初から“会話”で相手のハートをわしづかみにできるイベントに参加したほうが有利。

とくに既述のとおり、男性のなかには、いまだに「若い子のほうがいい」「20代がいい」との思いを抱く人もいる。

となると、最初から吊り書きで“35歳”と年齢が分かってしまうより、見た目が若々しい女性は「いくつに見えます?」など、年齢をボカしたまま知り合うほうが間口は広がる。

いまや初婚カップルの4組に1組を“女性が年上”の姉さん女房が占めますが、過去に取材した“妻が10歳以上上”の夫婦のなかには、当初5歳以上年齢をサバ読みしていて、「いざ結婚しようかとなったとき、年齢がバレた」「初めから年齢をバラしていたら、きっと結婚できてませんよ」と笑う女性も多かった。

そう考えると、「結婚相談所に登録すべきかどうか」を迷ったら、まず自分の性格や年齢、得意技に思いを馳せてみるのがいい。

逆に次のような人たちは、結婚相談所に向かないかもしれません。

入会しない方がいい5タイプ

<結婚相談所にあまり向かない人>
1、頑固で、確固たる理想像がある。誰にナンと言われようと変わらない
2、自分の話をするのは得意だが、他人の話を聞くのは苦手
3、年齢や吊り書きに、大いなるコンプレックスがある
4、何事も「自己投資」という考え方はしないほうだ
5、体力に自信がない。アフター5や土日は家でゆっくり寝ていたい

一般に、結婚相談所にかかる費用を気にする男女も多いもの。

確かに、インターネットの出逢い系サービスに比べれば通常は高額ですが、それでもいまは「年間で15~30万円程度」のところが大半です。

4のように、将来への“自己投資”と考えて1年間費用を投じても、決して高くはないですよね。

また、最近は「無料お試し期間」や「返金キャンペーン(一定期間トライして気に入らなければ、会費をバックしてもらえるなど)」を設ける相談所も増えてきました。もし費用面で不安があれば、そういう制度があるところを選ぶのも、お薦めです。

そしてもう1つ。アラフォー年齢間近のミホさんにぜひお伝えしたいのは、5。

結婚相談所は、ハッキリ言って“短期決戦”です。効率よく出逢いを果たそうと思えば、時間を見つけて、できるだけ多くの男性と会ってみるほうがいい。

でも取材して、つくづく実感しました。新たな異性との出逢いってやっぱり、気力や体力を要すること。

とくに結婚相談所の場合、条件に合った男性が次々と紹介されてきます。

アフター5や土日をうまく利用して「まず会ってみる」という行為を繰り返すほど、運命のお相手に近づきやすくなる。

その際、「土日はヘトヘト」「アフター5は仕事で精一杯」というなかでデートを重ねるのは、体力的にあまりにしんどい。脳が疲れていると、いろんな男性に会えば会うほどワケが分からなくなってきて、半年後には「もういいや!」と投げ出してしまう……、これではもったいないですよね。

一番大事なのは、あなた自身の気持ちが「相談所に登録して、何が何でもいい人を探すぞ」と盛り上がっているかどうか。

その思いを実感できるなら、プロに相談しながら運命の人を探せる結婚相談所の利用も、決して悪くはないはず。意外な自分の一面を、発見できるかもしれませんよ!

牛窪 恵
1968年、東京都生まれ。大手出版社勤務ののち、フリーライターとして独立。 2001年、マーケティング会社インフィニティを設立。定量的なリサーチとインタビュー取材を徹底的に行い、数々の流行キーワードを世に広める。『アラフォー独女あるある!図鑑』(扶桑社)など著書を多数執筆する一方で、雑誌やテレビでも活躍。10月末『大人が知らない「さとり世代」の消費とホンネ』 (PHP研究所)が発売。12月5日『「バブル女」という日本の資産』(世界文化社)が発売に。財務省財政制度等審議会専門委員。