「少子化は女性の社会進出のせい」のウソ

よく「仕事との両立が難しいから子どもを持つのが遅くなる」と報道されますが、私はいつも「?」と思います。だって、私が知る限り、既婚者で仕事のために「どうしても、今は妊娠できない」と決意している人はそれほどいない。それよりも「結婚」というハードルのほうが高いのです。

最近、ある女性から嬉しい手紙を貰いました。妊娠の報告です。「『妊活バイブル』を読んで良かった。あの本がなかったら、未だに決意できなかったと思います」とまで書いてくれました。

『妊活バイブル』は現代の妊活ルポと正しい知識の啓発本ですので、決してハウツウ本ではありません。読んで促されるのは「決意」「意識の持ち方」です。

この女性は仕事が乗りに乗っているところでした。そういうときのブランクにはひるんでしまう。しかし、すでに結婚はしていましたので、仕事と出産のタイミングについて考え、「決意」して妊娠するように頑張ればよかった。

一方、未婚の女性の場合、「決意」以前に「パートナー」を得ることが必要になります。

既婚女性は、仕事との関係、夫との関係、自分の体の事情と3点を考えればよいのですが、未婚女性は、+「結婚相手」もしくは「パートナー」という4点目が加わります。

出産適齢期の婚活女性の悩み

「子どもがほしい。出産の限界年齢も近づいている。でも今の職場は残業が多いから妊娠後も働き続けるのは無理。となると、私より年収が低い年下は無理。養ってくれるような男性じゃないと困るし、でも、あまり年上でも子どもが成人する前に定年になっちゃうと困るし……」

出産適齢期のぎりぎりで婚活する女性はだいたいこんな悩みを抱えてぐるぐるしてしまいます。

なので、1回因数分解してみましょう。

まず、「子ども」と「結婚相手」のどちらにこだわるか? です。

「私は自分の好みの人と結婚したい。妥協はいやだな。それで結婚が遅くなって妊娠が難しくなっても、子どもはできなかったら、できなかったでいいや」

こういう考え方をする人は、あまり妊娠適齢期にとらわれず、生涯寄り添っていける人を探してください。たとえ50歳になっても、理想の人と結婚できたらそれで幸せ……そういうカップルもたくさんいます。

「私は子どものいない人生なんて考えられない。絶対子どもがほしい」

こういう方は、自分の年齢と相談して、一刻も早くパートナーたる男性を見つけてください。もちろん今おつきあいしている人がいたら、その人と子どもをつくれるかどうか、まず考えましょう。少々のところは目をつぶって、さっさと子どもをつくることができるパートナーが優先です。妊娠は時間との戦いでもありますから。まずは「子どもと出会えること」、そのための結婚を優先してください。

もしも、万が一、離婚することになっても……。多くの離婚女性は微笑んでこういいます。「前の結婚は子どもと出会うための結婚だったと思うの」。
この台詞、決して負け惜しみではないんですよ。

2人目の子育て期に結婚するのがパリのトレンド

本当は、1番簡単なのは結婚と妊娠を切り離してみることです。

フランスの場合、探すのはパートナーだけでもよいので妊娠のハードルが下がります。婚外子率5割以上のフランスですが、(ちなみに両親が法律婚していないだけで、3歳以下の子どものほとんどが両親と一緒に住んでいます。「不倫の子が5割ではない」と自民党保守派の先生に何回説明してもわかってもらえないのですが(笑))子育ての手当や税金の控除などには、2人が婚姻関係でなくても何の支障もありません。

それでは両親はいつ結婚するのか? 恋に落ちて、一緒に住み、子どもを作り、子育てをして、ある程度「お互いにやっていけるパートナーだ」と確信できてから、結婚、または準結婚であるパクスの手続きをする人が多いようです。パリなどの最近のトレンドは「2人目の子どもを育てるぐらいのタイミング」だそうです。

なぜなのでしょうか? それはインタビューしたフランス女性が言っていました。「一緒に子育てをして、ずっと協力していけるような男性を探すのは大変よ」

恋愛大国フランスですら、子育てパートナー、生涯のパートナー探しには苦労している。「お試し期間」をもうけています。

「妊娠適齢期だから」と焦って婚活しても、そう簡単に理想の人は見つからないということです。フランス人女性は「子どもができてから、また理想のパートナーを探すチャンスもある」のです。知り合いのフランス人女性は50代で3回目のパートナーと結婚しましたが、2人は初恋同士だったそうですよ。

結婚と妊娠、どちらが期限のあるものかと言えば、妊娠のほうですから、期限のあるものをさきに終えるという手段もあるのです。

妊娠とパートナーを切り離す方法も

グラフを拡大
グラフ1:妻の結婚年齢別にみた、結婚持続期間別 平均出生子ども数/グラフ2:結婚年齢と生涯不妊率の関係

グラフ1は、妻の結婚年齢別にみた子どもの数の推移です。晩婚になるほど、子どもの数が減ることがわかります。グラフ2は、妻の結婚年齢別にみた生涯不妊率、つまり子どもを産まない人の割合を示しています。私の結婚年齢は36歳。このグラフを早くに見て、もっと努力するべきだったと反省しています。(データ提供:齊藤英和先生 国立成育医療研究センター 不妊診療科医長)

もっと過激なパターンとしては「妊娠」と「パートナー」を切り離すという方法です。実際に外資系で働く女性などで「アメリカの精子バンクから精子を買って、計画的に子どもを授かった」という人もいます。日本もいずれそういうニーズも増えてくると思っています。

いずれにしても、今妊娠を考えている未婚のあなたにおすすめしたいのは、すぐに行動すること。この年末、年始、ぜひパートナーがいる人はパートナーと帰省してみてください。また、パートナーがいない人は本気の「婚活宣言」をして、周りの人に「今年は絶対に結婚したいから、ぜひ誰か紹介して」と真摯にお願いしましょう。

妊活で1番いけないことは、先延ばしにすることです。妊活の序章でもある結婚についても、同じこと。まずは行動を起こすことです。

白河桃子
少子化ジャーナリスト、作家、昭和女子大女性文化研究所客員研究員、大学講師
東京生まれ、慶応義塾大学文学部社会学専攻卒。婚活、妊活、女子など女性たちのキーワードについて発信する。山田昌弘中央大学教授とともに「婚活」を提唱。婚活ブームを起こす。女性のライフプラン、ライフスタイル、キャリア、男女共同参画、女性活用、不妊治療、ワークライフバランス、ダイバーシティなどがテーマ。講演、テレビ出演多数。経産省「女性が輝く社会のあり方研究会」委員。著書に『女子と就活』(中公新書ラクレ)、共著に『妊活バイブル 晩婚・少子化時代に生きる女のライフプランニング』(講談社+α新書)など。最新刊『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)