万年床の下にキノコが生えていた…
湿気との戦いが続く梅雨と夏、家の中で意外に湿度が高い場所が、寝室と収納である。寝室で湿度が高い状態が続くと、体調が悪くなる場合がある。また、寝苦しいのであれば、それも寝室の湿度が高いせいかもしれない。クローゼット内に湿気がこもると、大切な衣類にカビが生えてしまうリスクがある。そこで今回は、梅雨から夏にかけての、寝室と収納の湿気問題とその対策をプロに聞いた。
問題を抱えた全国の住宅事情に精通するのが、住宅のコンディションを診断する「ホームインスペクション」の専門家集団、さくら事務所の取締役で、ホームインスペクターの田村啓さん。壁にポツポツと黒い点が目立つ家の壁紙をはがしたら、カビが壁面を覆っていた例や、万年床の布団を上げたら、畳にキノコが生えていた例などを見てきた。田村さんによれば、湿気が溜まりやすい住まいには、いくつか条件がある。そのうちの環境要因は3つ。
湿気がたまりやすい3つの要因
1つ目は、古い住宅の床下。築年数が長い戸建て住宅では、床下の地面がむき出しで、土から床下を通って湿気が室内に入り込む例がある。田村さんは「2000年以降は、床下に鉄筋コンクリートの基礎で覆うベタ基礎や、地面からの湿気を抑える防湿コンクリートが普及しました」と説明する。
2つ目は、建て込んだ住宅街。近年増えた細長い3階建て住宅は、1階の北側の部屋や、高さ制限対策で造った半地下に湿気が溜まりやすい。隣家との間が狭い住宅も、日当たりはもちろん風の通りも悪くなるため、湿度が高くなりがちだ。
3つ目は、土地の水はけ。もともと川や沼だった場所、あるいは田んぼや川が近くにあるなど、水はけが悪い土地も湿気は溜まりやすい。
リフォームや転居が必要になる湿度基準は
さらに部屋の使い方の問題が2つある。1つ目は、エアコンの温度設定。20度を下回るような極端に低い温度に設定すると、部屋の内側と外側の温度差が大きくなり、壁の中が結露しやすくなる。
2つ目は、24時間換気システムの排気口は開けているのに、給気口をふたしてしまっているケース。給気口の位置を確認し、ふたを閉じてしまわないようにしよう。24時間換気システムは、2003年に建築基準法の改正で、設置が義務づけられている。
そして、「24時間換気をしても、湿気がこもりやすいのが水回りとクローゼットの中」と指摘し、湿気がこもっているようなら、収納内や室内にサーキュレーターや扇風機を置いて回すようすすめる。あるいは、押し入れの両端を開けるなど、収納を閉め切らないでおく。
「人間が快適に過ごせる湿度は40~60%です。エアコンのドライ運転や除湿機で保てるならよいですが、環境要因などで除湿がうまくいかない場合、湿度が健康被害につながりやすくなります。60%を上回るとカビが生えやすくなり、80~90%を超えると非常に増殖しやすくなります。また、高い湿度の部屋で暮らしていると、体調不良や健康被害につながります。例えば、アレルギーの症状が悪化する、熱中症になる。エアコンをつけていても寝苦しいときは、湿度が高い可能性があります。カビが増殖しやすい環境では、木材を腐らせる腐朽菌も繁殖しやすくなります。木材の柱など構造部材が腐り始めると、耐震性能が下がるリスクがあります。ここまでくれば、リフォームや引っ越しを検討していただきたいです」と田村さんは話す。
電気代節約もかなう除湿アイテム
基本的な湿気対策は、エアコンのドライ機能とサーキュレーターの併用だ。除湿機で部屋全体を除湿するには、場所をそれなりに取る大型タイプが必要だ。
さらに、「エアコンだけだと、室内の温度も湿度も偏りがち。サーキュレーターで空気を回すことで快適になり、省エネにもつながります。エアコンの消費電力が高くなるのは、立ち上がりのタイミングと、室内で大きな温度差があるとき。室内全体の温度が安定すれば送風モードに切り替わるので、省エネになる。ですから、サーキュレーターで空気を攪拌し温度を一定にすると、電気代をかなり節約できます。扇風機を使ってもよいです」と田村さん。
室内の湿度は、家電量販店やホームセンター、インターネット通販で買える温湿度計で測ろう。最近は、温度・湿度・時間の3つがわかるデジタル置時計も多い。
夏の結露が原因で生えるカビ
建築家にも、家の構造面から解説してもらった。『大改造‼ 劇的ビフォーアフター』(テレビ朝日系)の匠として知られる一級建築士の中西ヒロツグさんは、カビの原因となる結露は温度差で生じるので、窓を断熱する必要があると話す。ペアガラスを入れた二重窓で、樹脂製または木製のサッシなら断熱性能は高い。また、断熱性の高い家は比較的室内の温度が一定に保たれるので、きちんと換気していれば結露しにくい。
ただ、日本で住宅の断熱性能が注目されるようになってからの歴史は浅く、断熱性・気密性共に弱い住宅が多い。中西さんは、透明なポリカーボネート板を自宅の寝室や西向きの窓に立てかけている。
「二重窓ほどの断熱性能はないですが、中に空気層ができるので結露はかなり改善されました。ホームセンターのDIYコーナーで、はめ込めば引き戸になる簡易内窓も売っています」と話す。遮光するなら、二重構造で断熱性が高い段ボールも、手軽に加工できるのでおすすめだそう。こうした製品は、アマゾンなどのインターネット通販でも買える。
特に夏場におすすめなのが、「日射遮蔽」。窓から日射しを通して入る太陽熱が部屋の床や壁を温めると、夜にエアコンをつけても効きが悪くなってしまう。ひさしや外付けブラインド、断熱雨戸があれば理想的だが、ない場合は、すだれや遮光カーテンをかけるのもよい。
ただ、真西向きの窓はひさしでは防げないので、段ボールで日射遮蔽をしよう。日中家を空ける人は、雨戸・シャッターを閉めておき、帰宅したら窓を開けて空気を入れ替えてから冷房するとよい。朝から暑いような日は換気する以外は閉めておき、エアコンの冷気をできるだけ逃がさないようにする。

満杯のクローゼット内で起きること
湿度が低い日は、窓で換気するのもよい。対角線上のできるだけ遠い窓同士を開けて、家じゅうの空気が循環するようにする。また、床面まであって外に出られる「掃き出し窓」なら、部屋に1カ所しか窓がなくても「床面と天井面に温度差があるので、上部から空気が出て足元に空気を取り込むので大丈夫です」と中西さん。
クローゼット内については、やはりサーキュレーターを回しっぱなしにすることをすすめ、「洋服をぎっしり詰め込んでいる場合も、ある程度上下に隙間があれば対流が期待できます。木材や珪藻土、漆喰のように湿度を調整してくれる内装材を使えばより安心です」と補足する。空気が動いていれば結露しないからだ。
注意点は、その日着た洋服をクローゼットに入れて扉を閉めると、服に染み込んだ汗や水分がクローゼット内の湿度を高めてしまうこと。エアコンをつけた室内に一晩置いてから、クローゼットに戻したい。
また、中西さんはたくさんの住宅の建築やリフォームにかかわってきた経験から、世代別の傾向と対策を解説する。持ち家に住むシニア世代の夫婦に目立つのは、物置状態になった寝室を使う例。「同じ家に長く住んでいるご夫婦は、どんどんモノを詰め込んで容積が狭くなったところでお休みになっている。寝室は人に見せないこともあり、環境が悪くなっていても気づかない方が多いです」と話す。
寝室内のCO2が基準を超えることも
一方、30代ぐらいの施主は、「部屋全体が寝床になるほど狭くていい」と3畳や4畳半の寝室を造り、収納は家族分をまとめてウォークスルークローゼットを用意して、リビングを広くする傾向がある。この場合も、湿気対策の必要がある。
寝室にモノが多いシニア世代の部屋では、空気が循環しにくい。「モノがあって幅が狭いと、空気に対する抵抗が多く、対流ができないので、風の道を作ることが一番大事」と中西さん。換気以前に、室内のモノを減らす必要がある。
部屋が狭い1人暮らしの若者も、モノが多くなりがちである。カーテンレールをクローゼット替わりにして服をたくさんぶら下げていると、風通しを邪魔し壁などがカビやすくなる。
寝室が狭い場合は、24時間換気システムを確実に作動させよう。「人間は思っている以上に、二酸化炭素をたくさん出す。環境基準で室内の二酸化炭素は1000PPM以下にしないといけないのですが、3畳間なら寝て数時間で超えます」と中西さんは言う。2003年以前に建てられた住宅で寝室が狭い場合は、夜間に窓やドアを開け換気することが必要だ。
ニュースよりも自分の体感を目安に
中西さんは、テレビなどの情報をうのみにする現代人の問題も指摘していた。「天気予報などで、『明日はすごく暑いです』などと言われると、実感がなくても朝からエアコンをつけて窓を開けようともしない。外の気温や湿度が今どういう状態なのか、ちゃんと自分の体感をもとに対応して欲しいです」と語る。
人間は環境に順応できるので、湿度が高く部屋に臭いがこもっていても、鈍感になってしまう。しかし、だるい、寝苦しいなど、身体は反応している場合が多い。
また、寝室やクローゼットは盲点になりやすい場所だ。水回りは換気に気を配っている人も、クローゼットなどの収納や寝室は、「散らかっているから」と閉め切っているのではないか。本記事でご紹介したプロの視点をもとに部屋の状態を確認し、改善する方法を考え実践しよう。蒸し暑い季節を少しでも快適にし、気持ちよく秋を迎えたい。