「より困っている家庭」を優先
認可保育園(法令上は保育所という)は、市町村(東京23区も含む)の児童福祉事業です。なので、入園を希望する人は、入園の申請を市町村に対して行います。定員を上回る申請があった場合には、市町村が入園選考を行い、調整して入園する園を決定します。希望するどの園にも入れない場合は、市町村から「不承諾通知」が送られてきます。
入園選考の方法は、自治体によって細かい点は違っていますが、主に図のような点数をつけて行われます。これを見てわかるように、認可保育園の入園は学校の入学とは違い、審査されるのは子どもではなく家庭の事情、つまり親のほうなのです。
基準指数は、保護者が仕事などで保育できない時間が長いほど点数が高く、通学や求職中などの要件は非常に低い、といった具合に、保育をできない度合いが大きいほど有利になるように設定されています。
調整指数は、もろもろの家庭の事情をくんで点数を調整するものためのものです。子どもが認可外保育施設(認証保育所や保育ママも含む)に在籍している、きょうだいが希望園に在籍している、ひとり親世帯であるなどの事情がある場合に加点されます。一方、過去に保育料を滞納していたり勤務実績が1カ月未満である場合などは減点されます。
これらの合計点(両親の合算もしくは低いほうの親の点数)が入園選考の土台になります。同点の家庭が並んだ場合は、総合的に判定されますが、最近は所得が低い家庭を優先する自治体もふえてきました(保育園を考える親の会『100都市保育力充実度チェッック』調査)。
こうして見てもわかるように、認可保育園入園では「より困っている」家庭が有利になるように設定されています。それでも、「どうしてウチが落ちるの?」という不公平感をもつ人は多く、各自治体とも頭を悩ませています。毎年、基準が少しずつ変わる自治体もあります。
「入りたい熱意」は関係ない
就職活動と同じように考えて、「お手紙をつけて入りたい熱意を示すと受かりやすいのでは」と考える人もいるようですが、それは勘違いです。
まず、選考をするのは、各園の園長などではなく、市町村の保育担当部署ですので、「貴園の保育方針がすばらしいと思いました」などのアピールは通じません。また、前述のとおり、入園選考で重視するのは家庭の困り具合であって、家庭の志望の度合いではありません。
もちろん入園申請書に書かれた家庭の希望に基づいてなるべく希望順位の高い園に決まるように検討されるはずですが、待機児童が多ければ多いほど、とにかく「点数」次第なのです。
「入園申請書にお手紙をつけたほうがいい」という話は入園希望者の間で広く蔓延していますが、市町村の担当者に聞くと「関係ありません」と、けんもほろろ。実際、役所では4月入園の選考はたいへんな作業になっているので、いちいちお手紙まで吟味していると、いつまでたっても決まらないというのが担当者のホンネでしょう。
ただ、家庭の事情、子どもの事情で困っていることがあれば、申請前に窓口で相談したり、具体的な資料(診断書、経済的な困難を表すもの)をつけて伝えるなどしたほうがよいと思います。
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。