※本稿は、つみきち『知らない間に嫌われる言葉、話すたびに好かれる言葉』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。
「そんなつもりじゃなかった」を好印象に
「そんな“つもり”じゃなかった」。この言葉が出るとき、人はだいたい必死です。「悪意はなかった。ただそれだけをわかってほしい」、そう訴えているわけです。
ただ、ここにひとつ問題があります。その“つもり”は、自分の頭の中にしか存在しないということ。相手からは、どうやっても見ることができません。
ですから「そんなつもりじゃなかった」「悪気はなかった」と説明すればするほど、相手には「この人、“私は悪くない”と言いたいんだな」と捉えられてしまいます。
では、どうすればいいのでしょうか。ポイントは、主語を入れ替えることです。「そう受け取らせてしまった私の責任です」。そう言えば、主語が「私」に変わる。たったこれだけの転換で、言葉の届き方はまるで変わります。
自分の内面を証明しようとするのではなく、相手に起きた結果を、「私の言動が引き起こしたもの」として引き受ける。すると不思議なことに、そのあとで初めて、相手はこちらの説明に耳を傾けてくれるようになります。
「つもり」を盾にして正しさを説明すると、人は心を閉ざします。でも、結果を引き受ける姿勢を見せると、人は自分から心を開きます。意図の説明は、そのあとで十分です。
「勘違いした」は相手を責める印象に
仕事を頼まれて、言われたとおりにやったつもりだった。ところが完成したあとで、「思ってたのと違う」と言われてしまった。そんな経験はありませんか。
そんなとき、ミスをした側がつい口にしてしまいがちな言い訳があります。「勘違いしていました」という言葉です。この言葉には、ミスを少しでも軽く見せたい気持ちが隠れています。しかし、仕事を頼んだ側からすれば、原因が勘違いだろうが関係ありません。残るのは、「その仕事の結果に影響が出た」という事実だけです。
しかもこの言い方には、「あなたの伝え方が曖昧だったせいで勘違いした」というニュアンスまで、暗に含まれてしまうことがあります。それでは、ミスをしたうえに、信頼まで下げてしまいかねません。
そんな場面では、こう言いかえてみてください。
「きちんと確認しておくべきでした」
焦点が「なぜまちがえたか」から、「次はどうすれば防げるか」へ自然に移ります。相手の伝え方を責めるニュアンスもありません。この言いかえは、待ち合わせの時間や場所をまちがえたときなど、プライベートな場面でも使えます。
謝罪のゴールは、許してもらうことではありません。信頼を積み直すことです。
「その場しのぎ」の印象を変える
「もうしません」。子どもの頃から使い慣れたフレーズですよね。
その気持ちは本物かもしれません。でも受け取る側からすると、“その場しのぎ”の約束に聞こえてしまいがち。何をどう変えるのかが含まれていないからです。
今この瞬間を逃れたいだけじゃないか、と感じさせてしまう可能性もあります。しかも「もうしません」は宣言のみで、再発防止策にまったく触れていない。だから相手は、「また同じことが起きるだろうな」という不安を消せないのです。
相手が知りたいのは「あなたはこの問題の何を理解しているのか」です。中身の理解度と、これからの具体的な行動を求めているわけです。
「気持ちはわかった、でもそこから先の話を聞かせてほしい」。それが、相手の本音である可能性は高いでしょう。
ですから、最適な伝え方は「次はこう改善します」です。この言い方には、未来の行動が描かれています。たとえば「ダブルチェックの時間を必ず取ります」「事前に確認してから進めます」。具体的であればあるほど、「この人は本気で向き合っている」と伝わります。
改善策を口にする行為そのものが、問題を深く分析した証拠になるんです。
謝罪の繰り返しはかえって逆効果
謝罪が大切なのは言うまでもありません。でも「申し訳ございません」をただ繰り返すだけだと、かえって逆効果になることがあります。
たとえばこんな場面を想像してみてください。新人がちょっとしたミスをした。深刻な表情で「本当に本当に申し訳ございません」と繰り返す。でもミスの内容は、そこまで重くなかった。
新人なんだから失敗して当たり前。そう思っていたのに、過度に謝られたことで「自分が怒ったせいでこの子を追い詰めてしまったのでは」という罪悪感が生まれてしまう。前向きに「次はこうしようね」と声をかけたかっただけなのに……。特に、関係が浅い間柄では、行きすぎた謝罪が、かえって距離を生むことがあります。
ただ、もちろん謝罪が必要な場面ではきちんと謝ることが前提です。そのうえで「ご指摘いただきありがとうございます」とひと言添えてみる。相手の声を“攻撃”ではなく“贈り物”として受け止める姿勢が伝わります。
クレーム対応の現場でも、ただ謝るよりも「伝えてくださったこと」への感謝を示すほうが、相手の怒りのトーンが下がります。「言ってよかった」と思ってもらえることが、関係修復の第一歩になります。
相手を納得させる謝り方
「その点はすみません」。一見丁寧に聞こえますが、受け取る側には独特のモヤモヤが残る言葉です。
なぜかというと、「その点は」が一部だけを認める限定の言葉になっているから。まるで「ここだけは私が悪いけれど、それ以外は認めていませんよ」と線を引いているように映ります。
相手からすれば、一部しか謝ってもらえていない物足りなさが残ってしまいます。つまり部分的な謝罪は、全体を受け止めてもらえていない気持ちになり、残りの部分への不満をかえって際立たせてしまうのです。
さらに「すみません」はカジュアルな印象を与え、軽い会釈程度にしか響かないこともあります。「その点は」と「すみません」が合わさると、あまりに軽い対応に聞こえてしまう。指摘した側は「ちゃんと全体として伝わっているのかな」「本当に反省しているのかな」と不安になります。
そこで「以後、気をつけます」に言いかえてみてください。短い言葉ですが、この言葉には「同じ過ちを繰り返さない意志」がしっかり込められています。
しかもこの言葉には範囲の限定がありません。「その点は」のように問題を区切るのではなく、姿勢そのものを改めるという宣言になっている。相手は「全体として受け止めてくれた」と安心できます。
