■編集部より指令
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日本の働く女性は世界で一番寝ていない

職場では女性の進出が進み、男女同じ仕事を任されるようになってきました。

一方で、男性の家庭進出はなかなか進まず、家事や育児の負担は依然として妻に重くかかっています。

仕事と家事のWワークに追われて、日本の働く女性の睡眠時間は世界的に見ても短く、男性より女性のほうが睡眠時間が短い国は日本くらいなのだそうです。ああ、かわいそう。この「家事分担問題」、どうしたらうまく解決できるでしょうか?

■佐藤留美さんの回答

なぜ、日本の働く女性は世界一睡眠時間が短いのか -結婚と家事分担・女の言い分
http://president.jp/articles/-/11181

■大宮冬洋さんの回答

男と同じくらい仕事優先でいてほしい

女性の仕事仲間には仕事を優先してほしい。でも、妻には家庭を優先してほしい。これが男性の本音だと思います。矛盾していますね。佐藤さんが紹介した13時間労働のワーキングマザーから拳で殴られて離婚を迫られそうな気がします。

ちょっと落ち着いて聞いてください。優先するのは「気持ち」や「建前」でいいのです。

あなたがある部署の係長(男性)だったとします。唯一の部下は仕事のできるワーキングマザーのAさんです。重要な取引先へのプレゼン準備を一緒に進めてきました。しかし、当日の朝になってAさんから電話。「子どもが熱を出したので休ませていただきます」。以上。

腹が立ちますよね。なぜ女性ばかりが子どもの世話をしなければならないのか。今日ぐらいは亭主に任せてくれ! と叫びたくなります。

プレゼンよりも子どもの体のほうが大事なことぐらいわかっています。急に子どもの面倒を見てくれる人はいないのも知っています。でも、家庭を優先するのが当たり前のような言い方をされては立つ瀬がありません。自分と一緒に仕事する限りは、男性と同じぐらい仕事優先でいてほしい(このとき自分の妻は想定に入れていません)。

夫に家事をさせるためのひと言

Aさんが言い方を変えていたらどうでしょうか。「こんなときに本当に申し訳ありません。病児保育に預けられたらすぐに向かいます!」と言いつつ、実際にはプレゼンに間に合いませんでした。午後になってようやく会社に現れたAさんは詫びる以上に悔しがります。自分もぜひ参加したかったのに、と。あなたはプレゼンの内容と反応を丁寧に伝えて、Aさんにフォローアップを依頼し、一緒に受注を目指す意欲を新たにするでしょう。

家庭でも同じです。バリバリ働く妻がときには残業や休日出勤せざるを得ないことぐらいは男たちもわかっています。

でも、それが当然のようには振る舞われたくない。自分を押し殺してでも家族のために働いている男性としては、「(家長の)あなたに家事なんてさせてゴメンね」のひと言がほしいのです。そのひと言があれば、家事を今より多めに引き受けることも厭わないでしょう。厭う男性はそもそも妻に愛情がないので別問題です。

矛盾を前提にしたたかに生きる

現在の30代40代は、サラリーマンの父親と専業主婦の母親に育てられた人が大多数です。「男は仕事優先、女は家庭優先」という概念が体にしみついています。この概念が正しいか正しくないかは別として、体質を急に変えることはできません。それでいて、仕事仲間の総合職女性に対して「あなたは家庭があるのだから早めに帰っていいよ」と声をかける余裕もない。せつないことです。

このような状況で働く女性が選ぶべき道は「矛盾を前提にしたたかに生きる」ことでしょう。仕事場では仕事優先、家庭では家庭優先の立場を明確にし、本音ではなく建前を駆使して周囲の協力を取り付け、十分な睡眠時間を何としても確保してください。健康を害しては家庭も仕事も守ることができないからです。

大宮冬洋
1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。ビジネス誌や料理誌などで幅広く活躍。著書に『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ぱる出版)、共著に『30代未婚男』(生活人新書)などがある。
実験くんの食生活ブログ http://syokulife.exblog.jp/