■編集部より指令
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日本の働く女性は世界で一番寝ていない

職場では女性の進出が進み、男女同じ仕事を任されるようになってきました。

一方で、男性の家庭進出はなかなか進まず、家事や育児の負担は依然として妻に重くかかっています。

仕事と家事のWワークに追われて、日本の働く女性の睡眠時間は世界的に見ても短く、男性より女性のほうが睡眠時間が短い国は日本くらいなのだそうです。ああ、かわいそう。この「家事分担問題」、どうしたらうまく解決できるでしょうか?

■大宮冬洋さんの回答

夫に家事をさせるための魔法のひと言 -結婚と家事分担・男の言い分
http://president.jp/articles/-/11183

■佐藤留美さんの回答

働く女性が眠れない理由

「日本の働く女性」は、世界一寝ていない――。

しかも、「日本の働く男性」より寝ていない。

衝撃のデータですね。日本の女性は、国際的に見て体格も小さく、その分体力も低そうなのに……。このまま放置していたら、心身ともに崩して長期休暇を取る羽目に、あるいは根詰め過ぎて“過労死”なんて最悪の事態を招きかねません。

なぜ、日本の働く女性は眠れないのでしょうか?

それは、編集のヨコタさんご指摘の通り、男性の“家庭進出”が進まないからが、一因でしょう。

ここ数年、子どもを産んだ後も育児休業(育休)を取得し、職場復帰する女性が飛躍的に増えました。

フルタイムで働く女性の育休取得率は83.7%(10年度)。また育休後、職場に復帰した女性の割合は92.1%となっています。

フルタイムで働くワーキングマザーの日常は壮絶です(筆者は東洋経済オンラインで「ワーキングマザー・サバイバル」という働くママルポを連載中)。

会社を18時頃出て、ダッシュで保育園に子どもを迎えに行き、夕飯の買い物をして夕飯を作り、子どもに食べさせ、お風呂に入れて、寝かしつけるのがやっと21時~22時頃。

こうして、子どもがようやっと寝静まると、今度は、母さん、残務処理を始めます。残業せずに帰宅しているため、やるべきことが山積みなのです。だから、やむなく、リモートアクセスで会社のイントラと繋がって、明日の会議資料を作ったり、メールの返信を打ったりする。

そんな頃、ようやく、ご主人がご帰還です。そして、今度は夫のご飯の世話……なんてことになる。こうして、寝るのは日付けが変わるころ。そして、また翌朝、早朝に起きて、子どもの登園準備、保育園への送り、そして、満員電車に揺られて職場に行き、残業出来ないから人の倍速で働く、というわけです。

ワーママの労働時間はブラック企業並み

ワーキングマザーの1日の労働時間は、家事育児も加えると、ざっと13時間以上に達します。この猛烈な忙しさは、ほとんど「ブラック企業」で働く人以上。

それもこれも、家事育児に協力的でない「ブラックハスバンド」のせいだ! そう本気で怒っている、「働く母」は多い。

でも、筆者は「家事育児をしない男性」側ばかりを責められないと思うのです(もちろん、何もしないでデーンとふんぞり返っているなど論外です。たまには早起きして子どもの保育園の送りぐらいやれよと言いたい)。

なぜなら、男性が家事育児を優先できないのは、「日本の会社は仕事より私事を優先する従業員を罰する」傾向があるからです。

たとえば、日本の伝統的な企業に勤める男性が、「子どもの保育園のお迎えがあるので、今日の会議は欠席させてください」なんて言おうものなら……。

あまつさえ、「育休を取得させてください」なんて願い出ようものなら……。

それはほとんど、「私は出世競争から離脱します」と宣言するようなもの。

周囲に「アイツ、終わったな」と思われ、干されるのがオチです。

だから、父さんは今日も、予算を取るために13個も判子が必要な書類を作り13個判子が押されて返ってくるのを待ったり、取引先に企画書1つ送るのも、上司に転送してチェックして貰ったりして、会社でやたらと長い「待ち時間」を過ごしたりしている。本当は、子どもの顔を見に、早く帰りたいのに……。

いまだピラミッド構造の日本の会社では、やたらとしがらみが多く、ちょっと偉くなった程度では、権限が委譲されないため、自分のペースで仕事がしにくいのも問題です。

北欧に学べ

一方、ワーキングマザーの奥さんは、育休を取得したり、短時間勤務制度を利用したりした時点で、ある意味、会社に「出世競争の戦線離脱組」と思われてしまっている場合がほとんどです(それもまた大問題です)。

そうなると、夫婦内で、妻より夫がより働いたほうが、将来のリターンが大きいと、なんとなく結論が導き出されてしまう。

そんな理由から、「働く母」も、父ちゃんが私より長く働くのは仕方がない。だったら、私が育児・家事の分担を増やすしかない……と諦めていくのです。

要は、ここ日本では、お父さんが家事・育児する「インセンティブ」が少ないというより、無いんですね。

そこへいくと、「夫婦分担家事育児」が当たり前の北欧では、「パパクオータ制」といって、父親が育休を取得しないと母親が育休を取得する権利を失う、ペナルティさえ存在します(ノルウェーの場合)。

さらに、北欧系企業に勤めた人に聞いた話では、社内でも、育児に積極的でない男性は、「人間的でない」と白い目で見られるのだとか。

このように、国の制度や会社が総出で、男性の家事育児労働への参画を促さない限り、男性の育児参加率は高まらないかもしれません。

ただし、日本でも、その兆しは少しずつ見えつつあります。

最近は、夜8時にはパシャッと消灯してしまう会社も増えています。残業するなら朝早く来いという商社もあります。

一方、「働く母」サイドも育休復帰組が飛躍的に増えたため、会社は、戦力にならない復帰組はもういらんとばかりに、本気で働かせようとの圧を強めています。

(本当は良くないと思いますが)時短をひっぺがす、あまりに長期に及ぶ育休を取得させないなどです。

人事考課の面談で、「ご主人にもっと家事・育児をして貰えないのか?」と上司から圧をかけられるワーキングマザーもいます。

よって、「働く母」だけに家事・育児を負担させる体制はもう限界にきていると思うのです。

働くお父さん。そろそろ、どうにか時間を作って、家事・育児を手伝ってみてください。

手始めに、ノー残業デイの水曜くらいは飲みに行かず、まっすぐ家に帰って、皿洗いを手伝うくらいしてみてはいかがでしょうか?

佐藤留美
1973年東京生まれ。青山学院大学文学部教育学科卒。出版社、人材関連会社勤務を経て、2005年、企画編集事務所「ブックシェルフ」を設立。20代、30代女性のライフスタイルに詳しく、また、同世代のサラリーマンの生活実感も取材テーマとする。著書に『婚活難民』(小学館101新書)、『なぜ、勉強しても出世できないのか? いま求められる「脱スキル」の仕事術』(ソフトバンク新書)がある。東洋経済オンラインにて「ワーキングマザー・サバイバル」連載中。