「こうしなければいけない」という常識や思い込みによって、自分を追い詰めてしまう人は多い。自身もうつ病を経験した精神科医の平光源さんは「常識は本来、自分を守るためにあるもの。自分を苦しめる常識なら、手放してもいい」という――。

※本稿は、平光源『頑張れないんじゃなくて、頑張りすぎただけ』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

障子の前に立つ女性
写真=iStock.com/Kayoko Hayashi
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「親の反対で結婚できない」

この間、患者さんに結婚の悩みについて相談されました。

お付き合いをスタートさせて3年が経つ。結婚したいが、お互い一人っ子で両親がその姓と家を継ぐことを強く求めているので、結婚を反対されている。そのため結婚できないと悩んでいらっしゃいました。

また、独身女性で他に身寄りがなく、自分が死ぬ前に墓じまいをしなくてはいけないと悩みを打ち明けられたこともありました。自分が結婚できずに、墓を終わらせなくてはいけないことに罪悪感を持っているようでした。

私はこの2人の話を聞いて、「なんともったいない!」と思ってしまいました。

なぜなら、そのカップルとその両親、そして墓じまいに悩む患者さんも、みんな思い込みに支配されていたからです。

200年先への罪悪感?

いまから200年後の日本の人口ってどれぐらいか知っていますか?

なんと、1000万人です。

これは現在の人口のわずか10分の1です。「佐藤」や「鈴木」の姓は残っているでしょうが、多くの姓はなくなっているかもしれません。

例えば日本で稲作が始まったのが、2100年前なのか1900年前なのか、当時を生きた人には超重要な出来事ですが、未来に生きる私たちからしたら200年なんて誤差の範囲です。2226年にどのみちなくなる姓なら、別に2026年になくなってもいいかもしれません。

人並みの生活という思い込み

また、3000年後には日本の人口は2000人になると言われています。そこまでいったら、墓じまいどころか、日本がおしまいですから、お墓のことなんて考えなくてもいいでしょう。

私たちは、「多くは望まないからせめて人並みの生活をしなさい」と親から思い込みを伝えられて生きてきました。

「多くは望まないからせめて大学は出ておきなさい」「せめて結婚はしなさい」「何歳までには結婚しないと恥ずかしい」「私の代で姓がなくなるのは許されないからあなたは婿を取りなさい」

「離婚は恥だから我慢しなさい」「家庭をつくるならせめて正社員になりなさい」「せめて子供は2人ぐらいつくりなさい」

10年前の常識はもはや古い

これらの発言はすべて、実際には単なる思い込みです。

例えば、3組に1組は離婚していて、結婚しないと決めている独身の方が30パーセント。

派遣やパートなどの方が2000万人で正社員の割合が減り、4.4組に1組のカップルが不妊治療をしていて、それでも出生率は1.15。

当然、2を下回ると日本の人口はどんどん減っていきます。

親の「せめて○○」の意見は、30年前には一般的だったのかもしれません。

しかし、産業構造の変化や女性の社会進出、高度なIT化など、時代の変化のスピードは速いため、10年前の常識は、もはや常識ですらなくなっています。

今、この瞬間を変えられる人は

「家を守るために結婚をするべき」とか、「子供をつくるべき」とか、いまの世の中ではすべてを叶えるのが現実に難しいことを、「せめてこれぐらい」とか「せめて人並みに」と言われると本当につらくなってしまいますよね。そして、「自分にはムリ」とすべてをあきらめる。

自宅の窓際に立っている男性
写真=iStock.com/EyeEm Mobile GmbH
※写真はイメージです

でも、これらは全て思い込みで、「過去はこうだった」というただの歴史に過ぎないのです。

平光源『頑張れないんじゃなくて、頑張りすぎただけ』(サンマーク出版)
平光源『頑張れないんじゃなくて、頑張りすぎただけ』(サンマーク出版)

「結婚という制度にとらわれず、まずは好きな人と一緒にいる」「不妊治療をしながら、自分たち2人の時間も大切にする」「姓や墓という形にこだわらずに、自分たちを産んでくれた先祖を心から敬う」「正社員にこだわらず、パートで働きながら少しずつお金を貯める」

そんなやり方でもいいのです。過去の常識にこだわって、実現困難な思いにとらわれて、今を生きられないことほどもったいないことはありません。

みんなが本当にやりたいことをやって、それを否定せずに喜び合う。そんな風に一人一人が変化していけたら、未来はきっと明るく幸せになるはずです。その時にこぼれたあなたの笑顔こそが、先祖や親の真の望みです。

今、この瞬間に集中して、自分がやりたいことをやってみましょう。

変えるのは、あなたです。