他者承認は自己承認から生まれる
アメリカで最も影響力がある司会者の一人、オプラ・ウィンフリーは、自分を肯定することを、このような言葉で推奨しています。
“自分を褒めれば褒めるほど、祝福すべきことが起こる”
本書『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』ではここまで、相手を褒めることに関してさまざまな角度から解説してきました。ここからは「あなた自身を褒める」というテーマに移りましょう。このトピックだけで本一冊書けるくらい深い話ですが、要点を凝縮してお伝えします。
自分を褒めることがなぜ大事かというと、前提として、自己肯定感が低いと人を褒められないからです。
当然のことですが、嫉妬心が強いと他者を素直に認められません。同僚・後輩の昇進や他者の成果を「よかったね」と本心で言えるためには、自分自身を認めているという土台が必要です。その土台は「褒める力」にも直結します。
だからこそ、自分自身も褒めて、自己肯定感を高める必要があります。「自分を褒める」とは、他者にやさしくなる準備ともいえます。
実業家でベストセラー作家でもある斎藤一人さんは、「一日最低10回は自分を褒めよう」とすすめています。
そんなに褒めることなんてない、と思ったかもしれませんが、些細なことで大丈夫です。
「朝寝坊せずに子どものお弁当を作れた。えらい!」
「通勤中の読書で効率的にインプットができた。よくやった!」
日常生活の中の小さな達成や、継続している行動を称賛していきましょう。
「自分褒め」の蓄積で自己肯定感が高まる
自分への言葉ですから、シンプルな一言だけでも十分です。それよりも頻繁に褒めることが重要です。その蓄積で自己肯定感は高まります。気持ちに余裕が生まれ、他者を承認しやすくなるのです。
自分自身を褒めることは、自己肯定感のアップだけでなく、さまざまな効果をもたらします。代表的なものはモチベーションの向上です。
NHKの朝の情報番組「あさイチ」で「“自分褒め”で人生が変わる!」という特集がありました。自分を褒め続けることで、18キロのダイエットに成功した人が登場していました。小さな努力や行動の継続を毎日自分で褒めることで、モチベーションを維持できたそうです。
また、メンタルヘルスにも「自分褒め」はいい影響を与えます。わたしは、一緒に働くメンバーからも、家庭のパートナーからも「機嫌が悪いところを見たことがない」と言われます。
働いていたら当然、いいニュースにも悪いニュースにも遭遇するものですが、気分としては一定で、イラついたりすることはありません。
それは自分自身の「ごきげん取り」をしているからです。「自分褒め」をすることで、メンタルを一定にコントロールできるようになるのです。
「上機嫌は大人のマナー」といわれたりもしますが、不機嫌で周りの人に気をつかわせる、なんてことがないよう、「自分褒め」でメンタルを安定させましょう。
どうしても自分を褒められない人は
「自分には褒めどころがない」……そう考えて、褒めることができない人も多いです。これには「他人にやさしく自分に厳しく」が美徳とされている文化的な影響もあります。
対処法として、セルフコンパッションという心理的スキルが有効です。これは、友人や大切な人に接するのと同じやさしさや理解を、自分自身にも向けるという方法です。
落ち込んだり失敗したときには、自分を友人だと思って、名前を呼んでやさしい声をかけて褒めてあげましょう。
「○○さん、昇格試験には落ちてしまったけど、チャレンジした姿勢が何より素晴らしいですよ」
客観的に自分を眺めて、責めるのではなく受け入れることで、前向きさを取り戻しやすくなります。
――ブッダ
褒められたらどんな反応をすればいいか
褒めるスキルとは少しトピックが変わりますが、ここでは「褒められたときにどのような反応をしたらいいか」というテーマに触れてみたいと思います。
日本人は褒めるのが苦手といわれますが、褒められるのはもっと苦手かもしれません。謙遜の文化が根づいているため、素直に受け取れずに、「いえいえ、私なんか」「とんでもないです」「たまたまです」と否定してしまいがちです。
それどころか、何も言えずにただうつむいてしまう、自信なげに笑ってごまかす。そんな反応をしていないでしょうか? わたし自身もかつてはよくしていました。
褒め言葉は相手からの善意のプレゼントなので、上手に受け取ることができれば、コミュニケーションがより円滑になります。
ここでは、褒め言葉を前向きに受け止める3つのリアクションをご紹介します。
①褒めを広げる(感謝に変える)
褒められたとき、「いえいえ、そんな……」と否定せずに、「○○さんのおかげで」と誰かへの感謝に変えることで、褒めの輪を広げることができます。
「素晴らしい提案書類でした」と上司に褒められたときに、「チームメンバーがアイデアをたくさん出してくれたおかげです」と伝えると、自分だけでなく周囲にも承認が行き渡ります。これは謙遜ではなく、周囲との信頼関係を強化する行為で、本書『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』の29節でも触れた「褒めパス」です。周りに感謝を伝えることで、職場や家庭に「褒めの文化」が育ち始めます。
②褒め返す
褒め返しは「お世辞の応酬」ではなく、相手にも敬意を返すコミュニケーションです。
「今日のプレゼンうまかったね」→「ありがとうございます。○○さん(相手)の話し方が説得力あるので、真似してみました」
「このネイルかわいいね」→「え! ○○(相手)のもセンスいいなって思ってた!」
ポイントは、無理やり「私も○○さんのここがすごいと思ってた」と褒め返しを探すのではなく、相手の言動やセンスを普段からよく観察して、思っていたことをこのタイミングで自然に伝えることです。観察力から生まれた褒め返しは相手にも深く届きます。
③笑いにして受け止める
少し照れてしまうような褒め言葉や、大げさな表現をされたときは、あえてユーモアで返すのも一つの手です。
とある女性芸人さんがドレス姿でテレビ番組に登場した際、美しいと褒められて、「はい。よく言われます」と返してその場を盛り上げていました。「私なんか、全然そんなことないです」と謙遜しても場がしらけてしまったでしょう。半分冗談でも、一度受け止める、喜ぶ、感謝する、さらには話を大きくすると、笑いまで誘って場の空気がさらに朗らかになります。
特に大げさな言葉で褒められたときは、それに乗っかってしまいましょう。たとえば、「あなたは日本一の営業だ」と言われたら「はい、世界一かもしれません」と冗談で返す。このくらいの軽さで受け止めれば、場も盛り上がり、相手も気持ちよく言葉を送ることができます。
「もっと褒めてもらいたい」ならば
オフィスのチームメンバー、もしくはプライベートのパートナーで、褒めても全然リアクションがない人がいるとします。「褒めがい」がないと感じて、褒める頻度も減ってしまうのではないでしょうか?
もし、あなたが「なかなか褒めてもらえない」「もっと褒めてもらいたい」と感じているなら、自分のリアクションを見直してみるのも一つの手段です。
褒めてくれた相手や、周りの人の承認欲求にも応えるようなリアクションを心がけることで、「また褒めたい」と思ってもらえる好循環が生まれます。
