見学は必須

「保育園入園の競争率が高くて、見学しても選べるわけじゃない!」と怒る気持ちはわかります。

でも、わが子が1日を過ごす場所になるので、認可・認可外を問わず、申し込む前に自分の目で確かめてください。また、認可の入園選考の結果が出るころには、思わぬ選択を迫られる場合もあります。希望順位を決めておくためにも、見学は有効です。

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保育園の「質」4つの側面

保育園の見学は、電話で申し込みます。保育施設の見学は当たり前になっているので、遠慮しないで、「○月に保育園入園を希望しておりまして、見学をさせていただきたいのですが」とお願いしましょう。

見学ツアーを組んでいる園もあります。

見学に行って見ても、何がいいのか悪いのかわからないと感じている人は多いでしょう。保育園の「質」というと、とても難しい話になってしまうのですが、私は図のような4つの側面があると思います。

育の質を見極めるチェック項目

たくさんの認可・認可外保育園を見てきた私の経験をもとに、この4つの側面に分けて見学のポイントを書き出してみましょう。

「保育園を考える親の会」でもチェックポイントをまとめているので参考にしてください。(http://www.eqg.org/oyanokai/hoikukiso_checkpoint.html

(1)子どもの命や健康が守られる質

子どもの命を預かる施設として、いちばん基本的なことです。

□ 室内のようすは安全が配慮されているか。0~1歳児と2歳以上児は、部屋が分かれているか。
□ 地震で家具が倒れたり、上から物が落ちてきたりするような状態になっていないか。
□ 2階以上の保育室では避難路は確保されているか。
□ 施設内が清潔か。(古くても掃除や整理整頓がされているか)
□ 0~1歳児のSIDS(乳幼児突然死症候群)対策はできているか。
*「SIDS対策はどうしていますか?」と聞いてみよう。うつぶせ寝はさせない、どうしてもする場合はそばについている、定期的に呼吸のチェックをするなどの対策が一般的に行われているはずです。
□ 食事の献立表(見せてもらう)は栄養バランスが考えられているか。
□ 調理室は衛生的か。人数分の食事をつくる設備になっているか。

人手が足りているか?

(2)子どもが心を安定させて生活できる質

子どもがさびしがらずに保育園で楽しく生活してくれることは、何よりも親の願いです。そのためには、保育者との関係がいちばん重要。保育者が子どもを受容し、愛情をもってかかわってくれることで、子どもの心は安定し、保育園でのいろいろな活動や遊びを楽しめるようになります。

□ 保育士は子どもに愛情をもって接しているか。
□ 保育者は、子どもを激しく叱ったり、手を引っ張ったりして乱暴に扱っていないか。
□ 保育者は、子どもが泣いたり要求したりしたとき、子どもにやさしく向き合っているか。(人手が足りなかったり新米の保育者ばかりだと、この対応が十分にできていないことがある)
□ 保育室が狭すぎたり喧噪だったりして落ち着かない状態になっていないか。

(3)子どもの発達を促す(教育)

乳幼児期の教育は、ずばり、子どもが自分からめいっぱいやる気になって遊ぶように仕向けることです。夢中で遊ぶことが、この時期の子どもの発達を最もよく促すからです。保育者はそのための環境を工夫したり、子どもに働きかけたりします。幼児クラスでは、集団での遊びや活動も大切な要素になります。

□ おもちゃや絵本などが十分にそろっている(赤ちゃん期を過ぎたら、子どもがおもちゃを自由に取り出して遊べる環境が望ましい)
□ 外遊びがたくさんできる環境があるか。砂場はよく使われているか。
*園庭がない園は、戸外遊びや夏の水遊びをどうしているか確認。
□ 幼児ではごっこ遊びをできる環境があるか(おもちゃやコーナーなど)
□ 実際に子どもたちはたくさん体を動かして楽しく遊んでいるか。
*幼児クラスは午前中に一斉保育(みんなで同じことをやる保育)の時間がある園が多いが、それ以外の時間帯に子ども同士で自由に遊ぶ時間も保障されていることが大切。
*子どもを整列させたり椅子に座らせたりする時間が長い保育、習い事的な保育内容は、乳幼児期の教育として必ずしも効果的でないことを知っておこう。

「子育ての相談」でわかる園のスタンス

(4)保護者と連携し支援する質

子どもが入園すると、保育園とは一緒に子育てをする関係になります。保護者も保育園を理解し保育に協力する必要がありますが、保育園も保護者の仕事や生活を理解し応援してくれていなければ、うまくいきません。

□ 母親が働くことを応援してくれているか。仕事の事情などに柔軟に対応してくれそうか。(園長などとの会話や掲示されている園だよりなどから感じられる)
□ 連絡帳はあるか。
*3歳児クラス以降は連絡帳がなくなる園もあるが、代わりにどんな連絡手段をとっているのか確認。
□ 保護者懇談会、個別面談、保育参加(保育参観)などが行われているか(子どものようすや保育内容についてよく伝えてくれるほうが安心)。
□ アレルギー対応、冷凍母乳その他、対応してもらいたいことがある場合は相談してみよう。
□ 「アレルギー対応には医師の診断書が必要です」「座薬は預かれません」など、厳しくても子どものために必要なことは、保護者にきちんと伝える。

当日渡される保育園の「入園のしおり」などの資料からわかることもあると思いますが、全部を確認するのは難しいかもしれません。

あまり細かいことに気を取られてしまうと、全体の印象がわからなくなることもあります。園長先生はいい人だったか、クラスの先生は快く見学させてくれたか、子どもたちの表情など、全体的な印象も大切です。

案内してくれる先生には、何でも思い切って質問してみましょう。子育ての相談などもしてみると(おむつはずしはどうしたらいいのかなど)、保育園の考え方がわかります。子どもの発達過程をふまえた専門性のある説明ができるかどうかでも、その園の質がわかります。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。