時期によって違う難易度

「保活」とは、保育園に入園するための活動を言います。

待機児童の多い地域では、保育園についての情報集めから見学、入園申請、決定までに、いろいろと行動しなければならないことが多いので、それをまとめて「保活」と言うようになりました。

図を拡大
認可保育園の入園まで

認可保育園(法令上は「保育所」といいます)入園のための活動を簡単に示すと、図のようになります。

認可外保育園を志望する、あるいは認可と認可外を併願する場合も、だいたい上のような流れになりますが、大きく違うのは、認可は市町村に入園申請をし、市町村が入園を決定するのに対し、認可外は施設に直接申し込みをし、入園の決定も施設が行う点です。

「保活」の開始は早いほうがいいでしょう。今、これを読んでいる人は、さっそく保育園の情報集めに取り組むことをお勧めします。理由は、

(1)入園する時期(4月入園か年度途中入園か)によって難易度が違う
(2)入園する年齢クラスによって難易度が違う
(3)認可外保育園には、予約の先着順で入園を決定するところがある

からです。

そのため、早めに近くの保育園の待機児童の状況がどうなっているか調べる必要があるのです。場合によっては、仕事復帰の時期を調整したり、早めに認可外への予約申し込みをしたり、最悪、引っ越ししたりして、入園の可能性を広げたほうがよい場合もあります。

「ウソの待機児童数」に要注意

ところで、認可保育園の「待機児童数」として自治体ごとに公表されている数字は、実態とは異なっています。助成を受ける認可外に入って認可の入園待ちをしている場合、自治体によっては、保護者が求職中の場合や、入園できず育休を延長したといったケースも、待機児童数から除外しているからです。「保育園を考える親の会」では、都市部の100の市区の入園申請児童数と入園が決定した児童数の差を調べる独自の調査を行い、公表しています(『100都市 保育力充実度チェック』 http://www.eqg.org/oyanokai/)。平成24年度のこの調査では、有効回答97市区の「申請したが入園決定しなかった児童数」は55,222人にもなり、これは都市部のみの数であるにも関わらず、国が発表している全国の待機児童数24,825人の2倍以上になりました。

1年を通して入園の最大のチャンスとなるのは、各年齢クラスの卒園・進級がある4月です。ほぼ全員募集になる0歳児の枠が最も大きく、1歳児以上は、下の年齢クラスより定員が増える分だけの募集になります。

5月にも多少動きがあるようですが、年度途中は在園児の引越しなどによる欠員だけの募集になってしまいます。

図を拡大
認可保育園の定員の例

0歳児の4月がいちばん入りやすいと聞くと、「育休を切り上げなくちゃ!」と焦ってしまう人もいるかもしれませんが、あわてず、状況をよく見きわめてください。

保育園入園の難易度は園によってもまったく違っています。あわてて育休を切り上げて、あとでその必要はなかったなんてことになると、「もっと休みたかった!」と後悔してしまいます。自分の入りたい園・年齢クラスの状況を早めに調べて、仕事の都合、自分や家族の気持ち、赤ちゃんや自分の健康状態などなどを考え合わせて復帰時期を判断すべきです。

なお、保育園の受け入れはいちばん早くて産休明けから。

生後5カ月や8カ月からの受け入れという園も多いので、早生まれのお子さんの4月の0歳児クラス入園は不可能な場合が多いはずです。

いきなり保育園を検索してはいけない

申込みが集中するため、4月入園の申込みは前年の11月、12月ごろから受付を開始する自治体が多くなっています(4月入園以外は、前月の中旬までの申込みでOK)。そのため、秋ごろから「保活」を始める人は多いでしょう。

「保活」の第一歩は、役所の基本情報をとるところから始めてください。

いきなりインターネットで保育園を検索してはいけません。

インターネット上には、さまざまな保育施設のPRがありますが、それだけ見ても、認可か認可外か、認可外でも自治体の補助金を受けているのか受けていないのか、それらの何がどう違うのかなど、基本的なことがわかりません。

また、公立保育園などはあまりPRしていないので、検索にヒットしにくいでしょう。

というわけで、まずは基本情報として、役所が発行する「○○市 保育園入園のしおり」などを入手することをお勧めします。しおりには、公私立の認可保育園の入園資格、手続き、入園選考の方法、保育料などが解説されているほか、地域の認可保育園・助成を受ける認可外保育園・保育ママ・認定こども園などのリスト(所在地・受入れ年齢・保育時間等の個別情報)が掲載されています。市町村の担当課(保育課など)や出張所、保育園や子育て支援センターなどで入手できます。市町村のホームページでもダウンロードしてもよいでしょう。

役所に直接ぶつける「質問」術

もし、平日の日中動ける日があれば、市町村の担当課を訪問して、資料をもらいがてら、相談(情報収集)をしてみることをお勧めします。

自分の地域にはどんな保育園があるのか、待機児童の状況はどうか、質問をすれば、ある程度のことは教えてくれるはずです。

認可保育園の場合、保護者の勤務時間が長いほど入園選考の優先順位が高いので、希望の園・クラスについて、「昨年は、フルタイマーの方は全員入れましたか?」「パートタイマーの方は入れていますか?」などの質問をすると、様子がわかります。

こうして地域の保育園の基本情報と入園の難易度などがわかったら、候補園のリストをつくり、見学、インターネットを含む口コミなどでさらに情報を集め、希望園をしぼりこみます。

認可保育園の4月入園を希望するのであれば、ここまでの作業を12月までに済ませておきたいところ。認可外については、「先着順」と言われたら、なるべく早く申込みをしておいたほうがよいでしょう。

というわけで、保育園入園を考えている方は、これを読んだらすぐ「保活」を始めてください。

保育園を考える親の会代表 普光院亜紀
1956年、兵庫県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。出版社勤務を経てフリーランスライターに。93年より「保育園を考える親の会」代表(http://www.eqg.org/oyanokai/)。出版社勤務当時は自身も2人の子どもを保育園などに預けて働く。現在は、国や自治体の保育関係の委員、大学講師も務める。著書に『共働き子育て入門』(集英社新書)、『働くママ&パパの子育て110の知恵』(保育園を考える親の会編、医学通信社)ほか多数。