※本稿は、尾形圭子『ソツのない受け答えからクレーム対応まで[新版]一生使える「電話のマナー」』(大和出版)の一部を再編集したものです。
一言前置きすれば言いにくいことも伝えやすい
基本:
【お願いするとき】
「恐れ入りますが……」「お手数をおかけいたしますが……」 など
【お断りするとき】
「申し訳ございませんが……」「あいにくではございますが……」 など
※代表的なクッション言葉とつかい方は「代表的なクッション言葉とつかい方」参照
「恐れ入りますが、ご連絡先のお電話番号をお願いいたします」
「申し訳ございませんが、私どもではすべてお断りしております」
「お手数をおかけいたしますが、そのようにお願いできますでしょうか?」
「あいにくではございますが、ご要望には沿いかねます」
これらのフレーズのなかの「恐れ入りますが」「申し訳ございませんが」「お手数をおかけいたしますが」「あいにくではございますが」という表現は、「クッション言葉」と呼ばれるものです。
クッション言葉は、相手に敬意を示しながら、言いにくいことを伝えやすくする“魔法の言葉”です。クッション言葉に続くセリフがソフトになるので、なにかをお願いしたり、お断りしたりするときに挿入すると、相手の気分を損なわずに話を進めることができます。
クッション言葉をつかわないで、ストレートに事実だけを伝えると、相手との関係がギクシャクするおそれもあります。クッション言葉は、電話応対において基本用語といってもいいでしょう。
●さまざまなクッション言葉がある。状況に応じてつかい分けよう
代表的なクッション言葉とつかい方
【お願いするときのクッション言葉】
恐れ入りますが……
クッション言葉の定番。相手に手間や面倒をかけるときに、幅広くつかうことができる。
例「恐れ入りますが、伝言をお願いしてもよろしいでしょうか?」
お手数をおかけいたしますが……
ちょっとした作業をお願いするときなど、相手に対して比較的軽い負担をかける場合につかう。
例「お手数をおかけいたしますが、申し込み用紙に必要事項をご記入いただけますでしょうか?」
ご迷惑をおかけいたしますが……
相手が迷惑を感じるようなときにつかう。たとえば、こちらの都合を伝えなければならないときなどにつかいやすい。
例「ご迷惑をおかけいたしますが、×月×日から×月×日までは休業となっております」
ご面倒をおかけいたしますが……
「ご迷惑をおかけいたしますが……」より重々しい印象を与える。
例「ご面倒をおかけいたしますが、ご来社の際には資料をお持ちいただけますでしょうか?」
(たいへん)失礼ですが……
聞きにくいことを尋ねるようなときに、幅広くつかうことができる。
例「たいへん失礼ですが、本日はご在宅でしょうか?」
さしつかえなければ……
個人情報を扱う場合などに便利な表現。
例「さしつかえなければ、ご住所をお聞きしてもよろしいでしょうか?」
もしよろしければ……
相手に断られてもいいような軽いお願いをするときにつかう。
例「もしよろしければ、受付でお荷物をお預かりいたします」
断るときは「お詫びのニュアンス」を伝える
【お断りするときのクッション言葉】
(たいへん)申し訳ございませんが……
はじめにお詫びの言葉を述べることによって、「できない」と相手に伝えやすくする。
例「たいへん申し訳ございませんが、ご期待に沿うことはできかねます」
あいにくではございますが……
「意に添えないことをお詫びする」というニュアンスを含んでいる。
例「あいにくではございますが、サービス期間を終了いたしました」
(たいへん)残念ですが……
「本当は要求に応えたいが」というニュアンスを含んでいる。
例「たいへん残念ですが、ご要望には沿いかねます」
「~してください」はNG
基本:
×「〜してください」※もともとは命令形「〜しなさい」
↓
①「〜していただけますか?」
②「〜していただけますでしょうか?」
③「〜していただけませんでしょうか?」
※①→②→③の順で敬度が上がっていく
応用:クッション言葉+依頼形
「恐れ入りますが……していただけませんでしょうか?」
「少々お待ちください」
なんらかのトラブルで苦情を申し立てている人に向かって、このような言い方をしたらどうなるでしょうか? ムッとされるのは目に見えています。
なぜなら、このフレーズが「少し待ちなさい」という命令形をていねいにした表現にすぎないからです。威圧的で冷たい印象を与えるのです。
ところが、「少々お待ちいただけますか?」「少々お待ちいただけますでしょうか?」
「少々お待ちいただけませんでしょうか?」と依頼形に変換すると、印象はガラリと変わります。さらに、クッション言葉を加えれば、いっそうソフトな印象になります。
「恐れ入りますが、少々お待ちいただけませんでしょうか?」
これなら、相手を不快にすることはないでしょう。
なお、電話を保留にする際は「少々お待ちくださいませ」という表現をつかうこともあります。これは依頼形ではありませんが、慣用句となっているので「確認いたしますので」などと理由を添えれば、問題なくつかえます。
●一見、ていねいな表現でも、命令形では敬意を示すことはできない
「できません」は「肯定形」に変換する
基本:
「できません」
↓
「いたしかねます」
「わかりません」
↓
「わかりかねます」
応用:クッション言葉+肯定形+代替案
「申し訳ございませんが、……しかねますので……」
【例】「申し訳ございませんが、私ではわかりかねますので、担当の者と代わります」
「できません」「わかりません」といった否定形で、相手の要望などをストレートに断るのは少々乱暴です。そこで否定形を肯定形に変換します。
たとえば、「弊社では、そのようなサービスはできません」と言うより、「弊社では、そのようなサービスはいたしかねます」と言ったほうがソフトな印象を与えます。
あるいは、「私ではわかりません」と言うより、「私ではわかりかねます」のほうがビジネスシーンでは適切です。
相手の依頼や要望を断ろうとするとき、ともすればキツい言い方になって相手の気分を害してしまいがちですが、この方法をつかいこなすことで円満な解決につながりやすくなります。また、クッション言葉を加えると、さらにソフトな表現になります。
ただ、肯定形であるにせよ、「できない」「わからない」と伝えるだけでは親切とはいえません。その後のフォローとして、代替案を提示するように心がけましょう。
「申し訳ございませんが、私ではわかりかねますので、担当の者と代わります。少々お待ちいただけますか?」などと伝えます。
●上手に「断れる」ようになれば、電話応対の達人まであと一歩!
敬語のつかいすぎに注意
基本:【過剰敬語】
「いただく」の連発
↓
別の表現に言い換える
「お」や「ご」のつけすぎ
↓
「相手の動詞」のみにつける
応用:【二重敬語】
×「おっしゃられる」
↓
◎「おっしゃる」
×「ご覧になられる」
↓
◎「ご覧になる」
×「いらっしゃられる」
↓
◎「いらっしゃる」
言葉づかいで注意しなければならないこととして、敬語のつかいすぎもあります。
最近目立つのが、「いただきます」の連発です。たとえば、「○○はただいま、出張させていただいておりまして、明日出社させていただきます。出社しだい、こちらからお電話をさせていただきますが、いかがいたしましょうか?」は、ひとつの文のなかに敬語を詰め込みすぎる「過剰敬語」です。この場合、「出張しておりまして」「出社の予定です」などと、スッキリした表現にしましょう。
また、「お」や「ご」のつけすぎもよくあります。たとえば、「ご案内書をご転送いたましたので、ご確認ください」は、「案内書を転送いたしましたので、ご確認ください」と言い換えます。修正のポイントは、「相手の動詞」のみに「お」「ご」をつけることです。
さらに、「○○様は、こうおっしゃられました」といった誤りもあります。これは、ひとつの動詞に同じ種類の敬語を二重につかう「二重敬語」で、文法的に誤りです。
正しくは、「○○様は、こうおっしゃいました」です。このほかにも、「ご覧になる」「いらっしゃる」なども要注意です。
●敬語のつかいすぎは、かえって耳障り。“スッキリ敬語”を目指そう
こんな敬語はNG
あなたは、こんなことをしていませんか?
×ときどき尊敬語と謙譲語のつかい分けで頭が混乱する。
×取り次いでもらうとき「◯◯様はおられますか?」と言っている。
×「見させていただきます」など「さ入れ言葉」をよくつかっている。
×「召し上がる」「おっしゃる」「ご覧になる」「いらっしゃる」といった尊敬語の表現形式に慣れていない。
×「いただく」「申し上げる」「拝見する」「うかがう」といった謙譲語の表現形式に慣れていない。
×先輩・上司に「了解しました」と言っている。
×「恐れ入りますが」「失礼ですが」「申し訳ございませんが」といった「クッション言葉」をつかい慣れていない。
×言葉には、できるだけたくさん「お」や「ご」をつけたほうが、ていねいだと思っている。
×取引先に上司のことを「◯◯課長です」と紹介している。
×敬語のつかいすぎと誤用があると思うが、よくわからない。
×お願いするときは「◯◯してください」といつも言っている。
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