技術の習得に終わらないユニークな技術科の授業

三つの徳「知・仁・勇」を備えた人間力の高いリーダーの育成を教育目標に掲げ、1885(明治18)年に創立した男子校。文武両道・質実剛健の校風を象徴する、夏の臨海学校などの伝統を受け継ぎつつ、近年は多彩な海外研修を行うグローバルキャリア教育や、中1に導入した独自の科目「数学統計」などでも注目されている。

特進コースの設置といった学力別の学級編成を行わず、知識注入型の座学では得られない力を育む教科が元気なのも、成城中学校・成城高等学校の特色だ。中学の3年間、物作りに取り組む技術科の授業もその一つ。実習室をのぞくと、部品を手に顔を突き合わせて話し合うグループあり、黙々と金槌を振り下ろす生徒の姿あり。熱気むんむんだ。

技術科主任 田中俊輔先生
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技術科主任田中俊輔先生
考え、実行し、次に生かす。失敗を恐れず、試行錯誤しながら成長してほしいです。

技術科主任の田中俊輔先生は、「なぜ技術を学ぶのか。僕は中1の最初の授業で、これからは『創造社会』が到来するよ、そのビジョンを頭に描きつつ、物作りにチャレンジしようね、と生徒たちに言っています」と語る。「創造社会」とは、一人ひとりが創造性を発揮して何かを「生み出す」ことに最大の価値が置かれる次世代型社会を意味する。

授業はまず、のこや金槌、かんなといった道具類の使い方を学ぶことからスタート。中1では自宅の机で使う小物や木の箸の製作で木工に取り組み、中2はアルミのスプーンや、焼き入れネジの製作で金属加工を体験。中3ではコントローラーで動くロボットを製作するというように、徐々に難易度を上げながら、いろいろな物作りに挑戦していく。

道具使いは「習うより慣れよ」が基本。最初は失敗がつきものだが、「放課後にもう1回やり直してもいいですか?」と再挑戦を申し出る生徒も少なくないという。

「失敗は物作りの原点。小さな挫折を味わいながら、試行錯誤を繰り返し、改善を続ける精神こそが、創造力を培う源だからです。口に入れる箸やスプーンは、使う人のことを考えて安全性を高めようとか、製作物を改善するには仲間とのディスカッションが欠かせないなど、“気づき”もいっぱいの授業です。技術の習得だけではなく、物作りを通して人生を豊かにする人間力を身に付けてほしい」と田中先生。

知的好奇心とチャレンジ精神旺盛な男子にとって、物作りに没頭できる時間は貴重だ。そんな体験を教育に落とし込む懐の深さも“成城らしさ”にほかならない。

中2では、江戸時代に新宿で栽培されていた伝統野菜、内藤とうがらしを栽培。管理方法や肥料の配合を自分たちで考えて育てる。
中2では、江戸時代に新宿で栽培されていた伝統野菜、内藤とうがらしを栽培。管理方法や肥料の配合を自分たちで考えて育てる。
アルミのアイススプーン。地金を延ばして切り出し、型に入れてくぼみを作り表面をひたすら磨く。理科で習った金属の性質を経験を通して理解する。
アルミのアイススプーン。地金を延ばして切り出し、型に入れてくぼみを作り表面をひたすら磨く。理科で習った金属の性質を経験を通して理解する。
生徒の熱気が充満する木工室。それぞれが自分の製作に没頭する。
生徒の熱気が充満する木工室。それぞれが自分の製作に没頭する。
中1「自宅デスクに置く小物」。パソコンを使って設計し、手を動かして道具の使い方を習得する。安全性にもこだわって製作する。
中1「自宅デスクに置く小物」。パソコンを使って設計し、手を動かして道具の使い方を習得する。安全性にもこだわって製作する。
中3は班でロボットを製作。周囲のアドバイスを基に試し、考えながら進める。
中3は班でロボットを製作。周囲のアドバイスを基に試し、考えながら進める。
製作したロボットで対戦し、改善を重ねる。
製作したロボットで対戦し、改善を重ねる。
SchoolData

〒162-8670 東京都新宿区原町3-87
☎03-3341-6141
https://www.seijogakko.ed.jp/
●創立 1885年
●交通 都営大江戸線「牛込柳町」駅西口から徒歩約1分

コアネットの目

目まぐるしく変化する社会への対応力を育む▶学力向上への確かな基盤づくりに加え、DXハイスクール採択校としてICT教育、データサイエンス教育に力を入れている。実社会のツールを活用し、楽しみながら競い合う中でプログラミングやデータ分析、最先端技術を体感し、知識と経験を積み上げている。変化の激しい時代を生き抜く力と未来の可能性が育まれる伝統校である。