今年2月、薬局での「緊急避妊薬(アフターピル)」の販売が始まった。産婦人科医の稲葉可奈子さんは「だが、まだ誤解されている部分が多い。予期せぬ妊娠から子どもを守るため、またご自身とパートナーを守るためにも、ぜひ緊急避妊薬の正しい使い方を知っておいてほしい」という――。
リビングで心配する若い女性
写真=iStock.com/pain au chocolat
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もしも我が子が避妊に失敗したら

ある日、突然、お子さんから「避妊に失敗したかもしれない」「妊娠して(させて)しまうかもしれない」と打ち明けられたら、どうでしょうか。親としては頭が真っ白になり、「うちの子に限って、そんなこと(性交渉)をするはずがない」と否定したくなったり、「なんていうことをしたんだ」と怒りたくなるかもしれません。

しかし、思春期以降の子が性に関心を持つのはごく自然な発育です。結婚するまで性交渉をしないというのも難しいでしょう。そして、親に打ち明けてくれたこと自体が、非常に勇気ある素晴らしい行動ですから、まずは話してくれたことをほめてあげてください。

日本の性教育は、「生理の機序」や「生命の誕生」といった生物学的な側面に偏りがちです。「妊娠に至る過程」については、学習指導要領の「はどめ規定」により取り扱わないことになっています。どうやって妊娠するかを教えないので、「自分も妊娠する(させる)リスクがあること」、「どうすれば妊娠を防げるか」といった予期せぬ妊娠から身を守るための実践的な教育がされていません。子どもたちは知識がないままリスクにさらされているので、予期せぬ妊娠のリスクに直面することがあるのも当然なのです。

72時間以内なら「緊急避妊薬」を

もしもお子さんが親にも誰にも相談できず、一人で抱え込んでしまった場合、どうすればいいかわからず、発見や対応が遅れてしまうことがあります。

日本では、妊娠22週以降は「人工妊娠中絶」が法律で認められていません。発見が遅れると緊急避妊薬を使うどころか、中絶という選択肢すら失われ、誰にも言えないままトイレや公園で出産してしまう「孤立出産」という悲しい事件につながるリスクさえあります。

ですから、もしもお子さんが相談してくれたら、叱るのではなくまず、前述のように「話してくれてありがとう」と伝えてあげることが大切なのです。

そのうえで、もしも性交渉から72時間以内であれば「緊急避妊薬によって妊娠のリスクを下げることができる」ということを教えてあげてください。それが、お子さんの心と体、そして未来を救う第一歩になります。