資金殺到「被災地ファンド」:「寄付+投資」が共感呼ぶ

【セキュリテ被災地応援ファンド】1年で10億円/1口からの出資者が多く、平均すると1人3口。広い層から出資を集めている。資金は設備投資や仕入れ代金に回される。写真は参加企業の商品の一部。(ミュージックセキュリティーズ=写真提供)

「セキュリテ被災地応援ファンド」の募集総額が10億円を突破した。調達額は7億9000万円。出資者は延べ2万3000人に達している(12年8月21日時点)。

東日本大震災で施設や商品に甚大な被害を受けた事業者に対し、復興のための資金を提供するのが目的だ。11年4月に6社・6本でスタートし、1年強で34社・35本に拡大した。うち満額に達し募集を完了したファンドは20本。

運営会社はミュージックセキュリティーズ。レコード会社に所属しない独立系のミュージシャンを支援するマイクロファンド事業からスタートし、07年からは酒蔵やレストランなどへ支援の対象を広げてきた。ネットで手続きができることや1口1万円から5万円という手軽さに加え、思い入れのある特定の音楽や商品に出資できることから、従来の「投資家」とは少し異なる層を掘り起こしているのが特徴だ。

といっても、ネット経由であることや、「思い入れ」をキーワードにしていることから、出資者の中心は30~40代の男性だった。

ところが、セキュリテ被災地応援ファンドの場合は、出資者の「地域・性別・年齢にあまり偏りがない」(ミュージックセキュリティーズ証券化事業部の神谷亘氏)という。投資する層の幅がさらに広がっているのである。

人気の秘密はどこにあるのか。

「被災地応援」をうたっているだけに、同ファンドは額面1万円のうち半分の5000円が出資金で、残り5000円は寄付(応援金)である。

当該事業の売り上げから数%の分配金を受け取る仕組み。ほかに酒や商品がもらえるとか、現地ツアーやイベントに参加できるといった特典がつく。なによりも、出資と寄付を合体させ、未曽有の災害からの復興を手助けしたいという「想い」を形にできたことが大きいだろう。