製品における2種類の不良とは

ボーイング787の欠陥問題が深刻になりつつある。蓄電池の発火問題が特に深刻な問題として認識されているようだ。日米の当局は航空会社に787の運航停止を求めた。原因の究明に時間がかかりそうで、787を多数導入した航空会社は長期にわたる運航計画の修正を迫られるかもしれない。乗客の不安を取り除くために、早く真因を見つけて適切な対策を取ってほしいものだ。

今回は、システム化された機器の不良には2種類のものがあるということについて考えることにしよう。1つは「積極的不良」、もう1つは「消極的不良」である。「積極的不良」とは、システム化された製品に新しい技術やコンポーネントを取り入れようとしたために起こる不良である。「消極的不良」とは設計のミスや製造工程で必要な作業が行われていなかったために起こるコンポーネント・レベルでの不良である。多数のコンポーネントから成り立つシステム機器の場合、個々のコンポーネントに問題がなくても、システムとして組み上げた場合に発生する不良がある。このようなシステム・レベルでの不良をなくすために、事前に稼働テストが繰り返されるのだが、使用条件によっては、予想外、想定外の欠陥が出てくることがある。事前に検出することの難しい不良である。使っているうちにわかってくるという種類の不良である。このような製品の品質管理は、工場の中だけでは完結しない。顧客との協働をもとにした品質管理が不可欠である。

不良についてのこの区別を私が考えるようになったのは、1980年代にある工作機械メーカーの社内パーティーで、その会社の生産技術担当常務が行ったスピーチがきっかけである。この常務は、スピーチの冒頭で「わが社の最大の問題は『お釈迦』が出なくなってしまったことだ」と発言された。冒頭の発言だっただけに、私にとっては大変な驚きだった。生産技術担当の役員の仕事は「お釈迦」、つまり不良を出さないことだと思っていたからである。こう思っていたのは、私だけではなかった。その場にいた多くの人が意外な発言に驚かされていた。しかし、この後の常務の説明を聞くと、発言の意味が納得できた。常務の説明はこうだった。不良品が出るというのは、誰かが新しいことに挑戦しているためでもある。わが社も、品質管理が行き届いてきて、不良品の数がずいぶん減ってきた。それはそれで喜んでいいのだが、不良品が減っているというのは、誰も新しいことに挑戦していないという証拠でもある。そうなってしまっているのであれば問題は深刻だ。不良品を恐れずに新しい技術に挑戦してほしい、と。