2011年の東京都知事選挙に立候補したのも、『論語』の言葉に拠っています。都知事になって何をやりたいですかと問われて、僕は「政治に『信』を取り戻したい」と答えました。それがすべてだと感じていたからです。『論語』にはこうあります。

「民は信なくんば立たず」

つまり、政治家への信頼がなければ人民は安心して生きていけないという意味です。僕は郁文館夢学園の理事長として中高生の教育にもあたっていますが、子供たちに聞くと総理大臣をはじめ政治家を尊敬していない。全校生徒1500人のうち、政治家になりたいというのは1人か2人です。

本当に身命を捨てて国民のために闘っている政治家がいたとしたら、子供たちは尊敬するでしょうし、プロ野球選手やサッカー選手よりも政治家になりたいと思うでしょう。そうではないということが大問題なのです。

なぜ政治の仕組みが変わらないのか。そして、なぜ大方の人々が危機感を抱いているにもかかわらず悪い状況へ向かってしまうのか。理由は簡単です。国民が自らの得を求めたからです。日本の社会保障や農業を取り巻く制度には問題があります。わかっていても改革できないのは、そこを手厚くしておけば政権が安泰だと与党が考えるからです。そして「このままではダメになる」とうすうす感じながらも、自分に利益をもたらす政治家に1票を入れてしまう国民にも責任があります。

「ありがとう」を集め、人として成長していく

『ワンピース』[著]尾田栄一郎(集英社)/『論語』孔子 [訳注]金谷 治(岩波文庫)

目先の自分の利益と、子供たちを含めた国の利益と、どちらが大事なのかを考えなければいけません。僕はほとんど漫画を読みませんが、歴史的な大ベストセラーだという『ワンピース』を読んだのは、国民の多くがどんな思いを抱いているのかを知るためです。大げさにいうと、これがもしくだらない作品だったら日本はつぶれると思って読みました。

結論をいえば『ワンピース』が発しているメッセージはとても健全で、将来に希望を持てるものでした。たとえばこういうセリフがあります。

「子供たちの未来をあきらめるわけにはいかない」