「アベノミクス」を好感して、円安、株高が進み、「デフレ、円高、株安」の克服への期待が高まっている。雌伏5年、安倍晋三首相は日本を復活させることができるのか。

総裁選を見送れば政治生命を失う

(PANA=写真)

安倍はいつから総裁選再挑戦に傾斜し始めたのか。衛藤晟一(現参議院議員)が顧みる。

「本人は最後まで意欲を表に見せなかったけど、11年の夏過ぎから、総裁選のためのマスコミ対策、国会対策、経済界対策などを考えて、私たちは下村博文さん(現文部科学相)や世耕弘成さん(現官房副長官)らとこつこつとやっていった。安倍さんはそれを止めなかったね。本人は簡単にやるとは言えない。片方で森さんなどは『やめろ』と言うわけだから」

森喜朗元首相は同じ派閥の町村信孝(元外相)も意欲的だったこともあって、安倍出馬にブレーキをかけた。

安倍は挫折による未達成感と不完全燃焼感が強く、内心は再起に意欲的だったが、12年の総裁選への出馬には、ぎりぎりまで首を縦に振らなかった。1つは07年の退陣劇への反発が根強く、まだ自民党内も国民も再登場を許容する空気になっていないとの判断があったに違いない。もう1つ、もしかすると、病気再発の懸念も消えていなかったのかもしれない。それだけでなく、勝算が立っていなかった。陣営内で最後まで出馬見送り論を唱えた西田が述懐する。

「安倍さんは最後まで『出る』とは言わなかった。だけど、自分がやらなければという使命感は強かった。後で安倍さんから『あのとき反対したのは、おふくろと兄貴と西田君くらいだ』と言われた」