大企業「50歳ヒラ社員・年収1000万円」が作られるプロセス

【海老原】その曖昧で温情の続きとして、再度年功昇給がどう起こるかを題材にしましょう。よく、欧米企業は「ポストに人をつける」、日本は「人に仕事をつける」と言いますね。これ、勘違いしている人が多いのですが。欧米は毎期のように企業の末端まで組織設計を施し、ポスト数を決めてしまいます。給与や処遇はポスト毎に決まっているので、泣こうが喚こうが、その数以上の昇進や昇給は起こりません。

一方日本は、人が処遇のベースになります。等級基準をクリアすれば、何人だって昇級・昇格してしまう。とりわけ非管理職等級は、全く定員管理などありません。だから、誰でも係長までは達し、定昇でそのレンジ上限まで昇給する。それが、大企業の50歳ヒラ1000万円の正体でしょう。

黒板に書き出したフローチャート案
写真=iStock.com/sodafish
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組織設計をとるか、能力ストックをとるか

【江夏】経営組織論の観点に立つと、合理的な経営は、まずは組織のデザインから入ります。目標や戦略のためにどのような階層を組むか、環境の複雑さを踏まえどの程度のルール化をあらかじめ進めるか、権限や責任をどの程度ロワーに分散させるか。組織の運行のために必要な個人の能力は、組織の設計に応じて変わってきます。日本ではこれが機能してない。組織をいかに設計するか、というより、能力のストックをいかに増やすか、にばかり意識が向いている。能力ストックを増やしておけば、それがその時活用できなくても、いざとなった時の欠員補充がしやすくなるので。野球でいうと、一塁手と二塁手と三塁手と遊撃手を個別に雇うのではなく、雇った選手に内野全てを守れるようにしておくわけです。

どちらのやり方が合理的なのか、確たる正解はありませんが、これだけは言えます。能力ストックを豊かにする措置は組織の柔軟性に起用する一方で,組織設計の緩さに繋がり、指示命令系統をきかせたい時や責任の所在をはっきりさせたい時に支障が出る。一方、組織設計があまりに精緻だと、うまくハマれば合理的だけれども再設計が大変な上,能力の補充のために採用に頼らざるをえなくなる。