職場での業務負担の偏りを金銭で解決

さらに、さまざまな支援制度の普及・導入も求められるでしょう。

例えば、「子持ち様批判」として、子どもの発熱時に子どものいない労働者に業務が偏るといった場合があります。このような負担を引き受けた労働者にはそれに応じた手当が望ましいのですが、これまでは各企業にその対応が任されていました。

しかし、今年の1月から始まった「育休中等業務代替支援コース」という国の制度では、育児休業を取得した労働者や育児のための短時間勤務制度を利用した労働者が行っていた業務について、周囲の労働者に手当等を支払った上で代わりをお願いした場合、助成金を支給するという制度が始まりました。この制度では、育児休業取得者の業務の代替のために、新規採用を行った場合でも助成金の対象となります。

現在、この制度は中小企業のみを対象としており、範囲は限られていますが、子育てによる業務負担の偏りを金銭的に補償しやすくなったと言えます。このような制度の周知・利用も「子持ち様批判」を減らしていく効果を持つでしょう。

佐藤 一磨(さとう・かずま)
拓殖大学政経学部教授

1982年生まれ。慶応義塾大学商学部、同大学院商学研究科博士課程単位取得退学。博士(商学)。専門は労働経済学・家族の経済学。近年の主な研究成果として、(1)Relationship between marital status and body mass index in Japan. Rev Econ Household (2020). (2)Unhappy and Happy Obesity: A Comparative Study on the United States and China. J Happiness Stud 22, 1259–1285 (2021)、(3)Does marriage improve subjective health in Japan?. JER 71, 247–286 (2020)がある。