2012年12月13日(木)

財産分与 -専業主婦の妻のヘソクリは誰のものか

PRESIDENT 2012年11月12日号

著者
村上 敬 むらかみ・けい
ジャーナリスト

1971年、大阪府生まれ。東京外国語大学外国語学部(マレーシア語科)卒。ビジネス誌・エンタープライズIT誌を中心に、自己啓発から経営論まで、幅広い分野で活躍中。

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答えていただいた人 アディーレ法律事務所 弁護士 佐藤大和 文=ジャーナリスト 村上 敬 図版作成=ライヴ・アート

ひょんなことから妻のヘソクリを発見。これを取り戻す方法はあるのだろうか。

日本の法律では、夫婦の一方が結婚前から持っていた財産と、結婚後に自分の名前で得た財産は、その人の財産。つまり夫か妻の単独財産になるのだ。妻が働いていて、自分の収入から貯金していた場合や、結婚する前から持っていたお金なら、それは妻のもの。夫に権利はない。

では、妻が専業主婦ならどうか。この場合、ヘソクリの元手は夫の給料だから、法律上の原則からは、夫のものということになる。ただし、妻が専業主婦の場合は別の考え方もできる。佐藤大和弁護士は次のように自論を展開する。

「これは、あくまで自論ですが、夫が外で元気に働けるのは、内助の功があればこそ。妻が夫を助け、生活費を節約してヘソクリにしているなら、夫婦の実質的な共有財産と考えることもできます。離婚時における財産分与の場合では、このような考え方が通常ですが、婚姻時にも同様に考えることができます」

夫婦の実質的な共有財産だとすれば、夫はヘソクリを自分のものにできないが、妻も勝手に使えない。夫婦で話し合って使いみちを決めるのが、現実的な落としどころといえるだろう。

ちなみにおこづかいが足りなくて困っているなら、理論的には、給料を管理している妻に婚姻費用を請求して、おこづかいを増額してもらうことができる。婚姻費用とは家庭生活に必要な費用のこと。夫婦は資産や収入などの事情を考慮して婚姻費用を分担する義務がある。一般的には生活費を家に入れない夫に対して妻が婚姻費用を請求するケースが多いが、逆もありうる。

「昼食を食べたり部下を飲みにつれていく費用は、サラリーマンにとって生活費の一部。ヘソクリできるほど余裕があるのに、夫に相応の遊興費や交際費を渡さないのなら、夫が妻に婚姻費用を請求することも理論上、不可能ではない」(佐藤弁護士)

もっとも、婚姻中の夫婦ならヘソクリやおこづかいで喧嘩してもたかが知れている。泥沼化しやすいのは、離婚が絡んだときだ。特有財産(夫か妻の単独財産)は原則、財産分与の対象にならないが、財産形成・維持への貢献度によっては財産分与が認められる(妻が専業主婦の場合、特段の事情がないかぎり2分の1を分与)。そのため離婚時には「独身時代から貯めていたから私のもの」「いや、あれは夫婦の貯金」といった争いが起きやすい。

なかには、そういった争いを避けるため、ヘソクリなど「隠し財産」を相手に教えないまま、財産分与の協議に入る悪質な夫や妻もいるので、現実に離婚が視野にあるような人は注意が必要だ。これはもちろん法律の趣旨に反するが、後を絶たないのは、実際に有効だからだ。

「われわれ弁護士が付いても、相手の隠し口座を見つけるのが難しい場合があります。それは、銀行口座を差し押さえする場合、銀行名と支店名の両方がわかっていないといけないからです。銀行名の見当はついても、支店名はわからないケースが多い。その場合は、現住所や勤務先の近く、かつて住んだ場所周辺の支店などをしらみつぶしに調べるしかない。そうなると費用もかさみますし、縁のない場所に口座があると、最後までわからない場合もあります」(同)

銀行から自宅に届く郵便物から、相手の銀行口座が判明するケースもあるそうだ。財産分与の「情報戦」は、離婚前から始まっている場合があるのだ。

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