中学受験をきっかけに夫婦仲が悪化したときはどうすればいいか。離婚や男女問題に詳しい弁護士の堀井亜生さんは「一時的に中学受験の“沼”にはまることは多く、そこから離れて冷静になると、夫婦仲を修復できることがある」という――。
※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して一部変更しています。
机の上にうつ伏せになる男児と、その後ろで叱責しているような両親
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

周りの影響で中学受験

会社経営者のA夫さん(34歳)は、知人の紹介で知り合った3歳年下の会社員の女性と交際して結婚しました。

A夫さんは仕事がとても忙しく、妻は結婚を機に退職して、専業主婦としてA夫さんを支えました。

結婚から3年後に、長男が生まれました。A夫さんも妻もごく平均的な学歴で、当初は2人とも、子どもの教育に特段熱心というわけではありませんでした。

長男は近所の公立小学校に通い始めましたが、素直に勉強に取り組む性格で、先生からはよく褒められる子どもでした。

長男が3年生になった頃、妻は「中学受験をさせたい」と言い始めました。A夫さんが理由を聞くと、「みんな“中受”(中学受験)するって言ってるから。受験したら将来役に立ちそうだし」と言うのです。

A夫さん夫妻が住んでいる地域は私立中学を受ける子どもが多く、妻はママ友たちから中学受験の話を聞いて、息子にも受験させたいと思うようになったということでした。

幸いA夫さんの家庭は金銭的に余裕があります。長男に勉強の素質があるなら伸ばしてあげたいと思い、A夫さんもOKを出しました。

長男は近隣で一番難しいと言われる塾の入塾テストに合格しました。ママ友たちからうらやましがられ、妻はうれしそうに塾の送り迎えを始めました。

「ママが怖い」と泣く息子

長男は熱心に塾に通って、課題にもきちんと取り組んでいる……。A夫さんはそう思っていたのですが、塾通いが始まって1年ほどたったある日、妻はママ友と食事会に行き、珍しくA夫さんは長男と家で2人きりになりました。

その日は塾に行く日で、A夫さんが妻の代わりに長男を塾に送ることになっていましたが、長男は塾の支度をしながら泣き始めました。

A夫さんは、「どこか痛いの?」と慌てましたが、長男は「どこも痛くない」と言います。塾の時間は気になりましたが、長男の様子を見て、無理には行かせないことにしました。

泣く長男をなだめて話を聞くと、「ママが怖い」と言います。塾のテストでクラスが下がると、「なんで点数が取れなかったんだ」と怒るそうです。

これまでの塾の成績表を探して見てみると、確かに入った時よりも成績が下がってきていて、ここ最近は下位の成績が続いています。教育熱心ではなかった妻がそんなに厳しく言うようになっていたのかと驚きましたが、しばらく妻を観察してみることにしました。