ワンセンテンスをなるべく短くする

僕は、会話とは「相手に伝わらない確率のほうが高い」という認識でいるくらいがちょうどいいと考えています。だからこそ、話すときは相手の状況や理解度をその都度確認しながら、丁寧に話すことが欠かせません。

具体的には、「ここまではいいですか?」「何かわからなかったことはありますか?」と、会話のなかで随時確認をしていけばいいわけです。「このことはご存じですか?」と、質問から話をはじめるのもいいですね。

その意味では、話す内容をすべて自分で用意する必要もありません。相手が事前の知識をどの程度持ち、またそのテーマを理解しているのかを、その都度探っていけばいいということです。

そうして相手をよく観察し、気持ちよく話してもらうには、やはりワンセンテンスは短くしたほうがいいでしょう。

よく自分の考えや感想を一方的に長々と話す人がいますが、そんな人に限って途中から文脈が変わりがちで、背景説明を挟んだり、一般的な意見を交ぜ込んだりして、まるで独演会のようになってしまいます。

ですが、それではワンセンテンスが長くなるだけで、言葉のキャッチボールができず、聞き手が話を理解できなくなる可能性が確実に高まってしまうでしょう。

「何のために話をしているのか」を最初に握る
図版作成=佐藤香奈

会話にメリハリをつける

「ゆっくり話すと伝わりやすい」ともよく言われます。でも僕自身、話すスピードは比較的速いほうです。それでもなぜ伝わるのかというと、実は話す内容に従ってスピードのメリハリをつけ、聞き取りやすさを重視しているからです。

具体的には、「ここだけは覚えておいてほしい」という部分はあえてスピードを落としたり、繰り返したりして、聞き手にメッセージを染み込ませるように話すことを心がけています。リズムを変えてメッセージを浮かび上がらせると、聞き手により印象づけられます。そんなひと工夫を意識してみてもいいかもしれません。

ただしこれも、対面なのか、オンラインなのか、電話なのか……会話の状況によって変わります。音声だけの場合、音声以外に会話を補完するものがないため、僕は全体的にゆっくりめで話すように意識しています。

一方、オンラインなら画面は小さくても表情は見えるし、資料を見せるなどして会話を補完することが可能です。同じ空間を共有する対面なら、身振り手振りやちょっとした仕草などでより強めに補完できますから、スピードは多少速くても大丈夫というわけです。

話すスピードなどの要素も、状況や相手によって随時変わることを押さえておいてください。

(構成=岩川悟、辻本圭介 写真提供=株式会社圓窓)
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