コスパで考えると「結婚はマイナス」

明治安田生活福祉研究所の調査によれば、結婚について金銭的な損得やコスパの観点で考えたことがある人の割合は30代の未婚男女において特に高く、男性で45.7%、女性で48.3%となっています。

また男性未婚者は結婚の価値をお金に換算するとマイナスであると答えている割合が高く、結婚に対してコスパ意識を持っている人はそうでない人に比べ「結婚に希望が持てない」と回答している割合も高くなっていました。

同調査からは、コスパに基づいた結婚観を持っている人ほど結婚はコスパが悪い、よって結婚にリソースを割り当てるべきではないと判断している様子がうかがえます。

私は以上のような状況を、資本主義による人間の家畜化、あるいは“文化的な自己家畜化”の帰結であると考えています。

イヌもネコも人間も「自己家畜化」した

自己家畜化とは、生物が進化の過程でより群れやすく・より協力しやすく・より人懐こくなるような性質に変わっていくことを指します。たとえば人間の居住地の近くで暮らしていたオオカミやヤマネコのうち、人間を怖れず一緒に暮らし、そうして生き残った子孫がイヌやネコへと進化したのは自己家畜化の例です。人為的に家畜にするのでなくみずから家畜的に変わったので「自己家畜化」、というわけです。

一緒に毛布をかぶっているイヌとネコ
写真=iStock.com/TatyanaGl
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そして進化生物学は、私たち人間自身に起こった自己家畜化も論じています。考古学、生物学、心理学などから多角的に検討すると、この自己家畜化が私たちの先祖にも起こってきたというのです。自己家畜化にともなう生物学的な変化によってセロトニンが増大し不安や攻撃性が抑えられ、より人懐こく、協力しあえる性質が人間にもたらされました。

進化生物学の研究者たちも述べるように、自己家畜化は今日の文化や社会環境を築くうえで非常に重要だったはずで、この変化がなければ都市に集まって暮らす今日のライフスタイルは成立不可能だったでしょう。