白内障の手術を受ける人は70代、80代が多いが、若くても白内障になることがある。眼科外科医の深作秀春さんは「糖尿病の患者は高血糖状態が続き白内障にもなりやすい。体内にタンパク質が糖化したものがたまると、白内障だけでなくアルツハイマー病など、あらゆる病気を引き起こすので、食事には十分に注意したい」という――。

※本稿は、深作秀春『白内障の罠 一生「よく見る」ための予防と治療』(光文社新書)の一部を再編集したものです。

調理中の唐揚げ
写真=iStock.com/KPS
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糖尿病をはじめ白内障をも引き起こす終末糖化産物AGE

「糖化」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。身体の中のタンパク質に糖がこびりついて、体温などで温められて焦げ目のようにべたべたつくことを「糖化」といいます。さらに、このタンパク質が「糖化」を受けてできる物質を、「終末糖化産物(AGE:Advanced Glycation End Products)」と呼びます。

タンパク質に過剰な「糖」がこびりつき、糖化され、AGEという劣化したタンパク質になると、これが多くの老化現象の原因となります。

このAGEが皮膚に蓄積すれば、シミやたるみになりますし、血管であれば動脈硬化、脳梗塞、心筋梗塞などの原因にもなります。またこれが脳にたまればアルツハイマー病の原因ともなるのです。

目の水晶体は「糖化」と「酸化」の相互作用で濁る

さらに、これが目の水晶体にたまると、白濁を起こす原因となり、白内障を引き起こすのです。

この糖化は、糖尿病患者でよく起きます。糖尿病患者では高血糖が続いているので、糖化はつねに起こっていて、AGEが大量に蓄積されます。そもそも、糖尿病の診断基準の1つの「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」は、赤血球のタンパク質であるヘモグロビンが糖化してAGEに変わる前の中間物質でもあるのです。ですから糖尿病患者は、AGEの発生により、糖尿病でない人よりずっと早く白内障になります。

目の水晶体は主にクリスタリンというタンパク質でできていますが、このクリスタリンが「糖化」してAGEになると、紫外線などでの「酸化」との相互作用で、タンパク質変性を引き起こし、白内障を発症するのです。

この水晶体のクリスタリンは、身体の他の部分のコラーゲンなどとは異なり、生涯にわたって新陳代謝をしないタンパク質です。ですから、AGE対策をしないと、どんどんAGEが蓄積して白内障になるのです。

AGEは、タンパク質と糖が加熱されてできる物質、と述べました。そして、このAGEが白内障発症の大きな要因でもある、とも述べました。

それでは、このAGEの量はどんな要素で測ることができるでしょうか?

タンパク質の「糖化」という要素とともに、どれだけの間(「時間」)、「糖化」されているのか、というのが重要です。つまり、体内でのAGE産生量=「血糖値」×「持続時間」となります。