どんな食習慣が糖尿病や糖化を起こすのか

私も他人事ではないので、食事が血糖コントロールにいかに重要かを再確認したいと思います。

私は学生時代にボート部に所属していて、激しいスポーツを行なっていました。当時は運動量も多く、年も若かったので代謝も高かったのです。ですから、お腹いっぱいの大量の食事をとっても問題ありませんでした。ボート部なので、体格はボディービルダーのように骨格筋が発達して、医学部の解剖授業で、私の身体で筋肉の状態を示したことがあるほどの筋肉質体形でした。でも、服を着ると今よりも細く見えました。体脂肪率が10%もなかったのです。

しかし、私のように学生時代にスポーツをしていた方が、社会人になってからも、選手時代に習慣となった大食を続けているとすれば、要注意です。まさにメタボへの入り口です。身体は糖化の影響を受けてきます。

皆さんの中で、食後2時間程度で空腹感を覚えている方はいませんか? さらにその後も空腹感が収まらないなら、もっと問題です。

短時間でたくさん食べると、血糖値が恐ろしいことに

通常は、食後30分から1時間までに血糖値が急速に上がるので、膵臓すいぞうからインシュリンが分泌されます。このインシュリンにより血糖値が下がり、低血糖になるために、空腹感を覚えるのです。このインシュリンは肥満ホルモンともいわれますが、この時の血糖がインシュリンによって脂肪に変えられて、皮下脂肪や肝臓などの内臓脂肪としてたまります。インシュリンが多く分泌される状況では、身体に脂肪がたまって、太ってしまうのですね。

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私も含めて、ホテルの美味しいビュッフェスタイルの食べ放題が好きな方は多いですよね。私の自宅近くのホテルのビュッフェは関東一美味しいと評判で、困るのです。100種類ほどの豪華料理を食べ放題ですから。しかも90分の時間制限があります。誘惑に駆られて短時間にどんどんとお腹に食品を詰め込んでしまいます。このような美味しいビュッフェ食を続けていると、血糖値が上がり肥満も起きます。グルメ食で不健康になる、よくある話です。

一方で、少量の食べものをゆっくりとよく噛んで食べれば、満腹感も得られ、過剰な糖質を取り入れることもなくなり、糖化も防ぐことができるともいえます。特に大食の男性を引き付ける「食べ放題」や「大盛り無料」などの、魅力的に映る宣伝文句には注意が必要です。脳からは期待値ホルモンのドーパミンがどんどん出て、短時間でたくさん食べかねないのです。ですが、将来の糖質過多による弊害がいかに怖いかを、再度思い起こしてください。

深作 秀春(ふかさく・ひではる)
深作眼科院長 眼科外科医

1953年神奈川県生まれ。運輸省航空大学校を経て、国立滋賀医科大学卒業。横浜市立大学附属病院、昭和大学藤が丘病院などを経て、1988年深作眼科を開院。これまでに25万件以上の手術を経験。アメリカ白内障屈折矯正手術学会(ASCRS)にて常任理事、ASCRS最高賞を20回受賞。世界最高の眼科外科医を賞するクリチンガー・アワード受賞。『視力を失わない生き方 日本の眼科医療は間違いだらけ』『緑内障の真実』『白内障の罠』(以上、光文社新書)、『世界最高医が教える 目がよくなる32の方法』(ダイヤモンド社)、『視力を失わないために今すぐできること』(主婦の友社)、『100年視力』(サンマーク出版)、『失明リスクのある病気の治療法』(河出書房新社)など著書多数。