悩みの9割は人間関係に関することだといわれる。悩みを手放す方法はないか。小泉健一さんは「アドラー心理学を取り入れて使う言葉と付き合う人を変えることで人間関係は大きく変わっていき、悩みは消えた」という――。

※本稿は、小泉健一『今さらだけど、アドラー心理学を実践してみたらすごかった』(大和出版)の一部を再編集したものです。

家事を手伝わない夫に文句を言う妻
写真=iStock.com/takasuu
※写真はイメージです

人間関係に役立つ理論

アドラー心理学の理論の中で、人間関係でとても役に立ったものが「認知論」です。

これは「人それぞれが自分の色眼鏡を通して物事を見ている」という考え方です。

「別の人に言われると腹が立たないのに、なんかこの人に言われると腹立つんだよなぁ」という経験がないでしょうか。私はあります……。

こう感じるのは自分の認知によるものです。

その人自身を「嫌な人」と思っているから、そのフィルターを通して、言動までもが嫌だと思えてしまうのです。

夫婦生活でも、新婚のときはパートナーが家事をしないということが気にならなかったのに、「家事をしないなんて許せない!」と考えが変わった人もいるのではないでしょうか。

事実は同じなのに、なぜ解釈が変わるのか。

それは自分の認知が変わっているからです。

大事なのは、事実と感情を切り分けて考えることです。

例えば、「何回も遅刻してくる友人にイライラしている」という体験があったとします。これを「事実」と「感情」にわけてみます。

感情は自分で選ぶことができる

【事実】友人が待ち合わせに遅れて来る。

【感情】「1回だけでなく、何回も遅刻して私を待たせて、なんとも思わないのか?(=もっと私のことを大切にしてほしい)」

このように、「友人が待ち合わせに遅れて来る」という事実に対して「私をもっと大切にしてほしい」という感情を自分で生み出しているのです。

アドラーは「感情も自分で決めることができる」と言っていますので、この感情も自分の認知次第では変えることができます。

事実と感情を切り離さずに、「何回遅刻してるんだよ! 悪いと思っていないのか⁉」と感情を優先して責めたり、言い合いになってしまうと、人間関係は悪化します。

また、自分が我慢し続けるのもメンタルの健康にはよくありません。

事実と感情を切り離したうえで、「遅刻されると、私も待つ時間がもったいないから、時間通りに来てほしいな」と、「私はこう思う」と伝えると、人間関係も良好になっていきます。

イライラしてしまったときに、冷静に考えるのは難しいかもしれません。

でも感情的になっているときはうまくいくことが少ないので、少しぐっとこらえて、時間を置いてから気持ちを整理するようにしましょう。