自宅用の住宅ローン「フラット35」をマンション投資に悪用する不正が相次ぎ、住宅支援機構が注意を呼び掛けている。住宅コンサルタントの寺岡孝さんは「借りた人にも当然落ち度はあるが、不正利用がバレないようにフラット35の規定を巧みに操った不動産会社はもっと悪質だ」という――。
不動産業者が資料を用いて客に説明中
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フラット35のメリットが悪用されてしまった

近年、不動産投資用の物件を購入するために、フラット35などの住宅ローンが不正に利用されていたことが明るみになりました。そもそもフラット35は住宅金融支援機構が民間の金融機関と連携して提供している住宅ローンを指し、自ら住む住宅を購入するための住宅ローンです。

投資用不動産を購入する際にフラット35が利用されたのにはいくつかの理由があります。

まず1つは、借りる側には大きな魅力である、長期返済かつ低利な固定金利という点です。投資用のローンの大半は変動金利で、しかも借りる側の属性によっては高い金利で貸し出されるため、収支内容が芳しくない場合もある一方、フラット35を使えば固定金利で収支計画が立てやすくなります。

また、過去のフラット35の規定では、アパートローンなどの賃貸用のローンを借りていても、他のローン返済を返済比率に加味していなかったために審査が通りやすかったという点もあります。

したがって、例えば、投資マンションを投資用ローンで4戸も購入していたとしても、表向きは「自宅を購入する」ということでフラット35を借りて、さらに新たな投資物件を買うことができてしまったのです。

不動産投資物件は買えないはずだが…

しかも、フラット35では審査用のローン返済金利は毎月発表される実行金利で審査されるため、審査金利が高い通常の投資用ローンよりも多く借りられる場合もありました。

こうしたフラット35の規定を巧みに操り、「自己用の住宅を買います」という格好で不動産投資に体よく利用する事例が発生してしまったのです。

自動車購入費や消費者ローンの返済に充てる(いわゆるおまとめローン)など、住宅の取得費以外の費用を上乗せして借りてしまったという事例もありました。これは、不動産投資物件を売る不動産会社が一時的にカードローンなどを肩代わりして、投資物件をフラット35で買わせたという内容です。

例えば、200万円のカードローン残高があった場合、物件購入2500万円のところを200万円上乗せした2700万円で売買契約をしていました。当然ながら、こうした事例はフラット35の規定に反する行為で、一括返済の対象になってしまいます。ちなみに、この事例では融資用の売買契約書と本来の売買契約書の2つが存在していました。