健康で長生きするためにはどうすればいいのか。医師の和田秀樹さんは「健康診断と長寿には相関性がないので、不調がなければ受けなくてもいい。ただ、『頭がボーッとしていないか』『体が重くないか』『どこかに痛みはないか』といった体の声には、しっかり耳を傾けるべきだ」という――。(第2回/全2回)

※本稿は、和田秀樹『60歳からは、「これ」しかやらない』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

健診結果のお知らせのイメージ
写真=iStock.com/makotomo
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健康診断と寿命は関係がない

「健康診断を受けよ」とさかんに奨励されるのは、日本だけだということをご存じでしょうか。

この習慣は、欧米では見られません。なぜなら、健康診断と健康や長寿には、相関性がないことがわかっているからです。

実は、日本の統計にも、そのことは表れています。男性と女性の平均寿命を比べれば、すぐにわかることです。

日本の企業が健康診断を行うようになったのは1970年代です。当時はサラリーマンと言えば男性がほとんどで、女性の多くは専業主婦でした。勤めていたとしてもパートが多いのも特徴です。ですから、健康診断を受けるのは主に男性で、女性の大半は受けていなかったことになります。

1970年当時の平均寿命は、男性が69.31歳、女性は74.66歳でした。およそ5年、女性のほうが長いことがわかります。

悪い数値を放置しても病気にならない人もいる

では、現在はどうでしょうか。70年代に健康診断を受けていた世代が70代以上となり、そろそろ寿命を迎えるころとなっていますが、2023年7月の厚生労働省の発表によると、2022年の男性の平均寿命は81.05歳、女性は87.09歳です。

寿命そのものが伸びているのは、栄養状態がよくなったからと考えるのが自然です。

相変わらず女性のほうが長生きですが、着目していただきたいのは、男女の「寿命の差」の変化です。50年経った今、男女の差は6年に開いています。

健康診断が、本当に寿命が延びることにつながるのなら、差はもっと縮まるか、男性が逆転することもあり得たはずです。

健康診断を毎年受け、数値が悪かったからと、薬を飲んだり、塩分を控えたり、タバコをやめたりしてきた人たちは、もしかすると、「そんな我慢、しなけりゃよかった」と、あの世で不満を漏らしているかもしれません。

健康診断で悪い数値が出たあと、放置していても病気にならない人もいれば、正常値だったのに心筋梗塞や脳梗塞になる人もいる。それが、健康診断の実際の姿です。