条例や相談窓口がある自治体も

いったん進行すると、家族だけでは手に負えなくなります。抱え込まず、ぜひ早いうちから行政などに相談し、専門家の意見を聞いて対応してください。たとえば、京都市大阪市神戸市横浜市名古屋市などにはごみ屋敷に関する条例があり、相談窓口を設けている自治体もあります。

いったんごみ屋敷化してしまうと、物理的に家をきれいにするのは大変な労力がかかりますし、それよりもまず、片付けさせてもらえるよう本人を説得するのも大変です。V字回復は困難です。結局は、時間をかけて本人を説得しながら何とかごみの処分を行い、いずれは本人に合う施設に入所してもらうというケースがほとんどです。

まだまだディオゲネス症候群については知られているとは言い難く、多くの人が、まさか自分の親の家がごみ屋敷になったり、犬や猫をめんどうが見切れないほどたくさん飼って家が荒れてしまったりとは、想像できないのではないかと思います。でも、高齢者の一人暮らしでは、誰にでも起きる可能性があります。「どうせうちの親には関係ない」と気付くのが遅れ、進行してしまうという状態は、防いでほしいと思います。

構成=池田純子

井上 智介(いのうえ・ともすけ)
産業医・精神科医

産業医・精神科医・健診医として活動中。産業医としては毎月30社以上を訪問し、精神科医としては外来でうつ病をはじめとする精神疾患の治療にあたっている。ブログやTwitterでも積極的に情報発信している。「プレジデントオンライン」で連載中。