どんどんエスカレートしてしまう

「ディオゲネス症候群」は、最初は周囲が気付かない程度から始まり、どんどんエスカレートしていきます。例えば、苦手な掃除が手薄になるところから始まります。掃除の中でも、「机の片づけは得意だけど、水回りの掃除は苦手」など、人によって得手不得手がありますが、その不得手なところから、やらなくなっていきます。

そうこうしているうちに、得意だったはずの部分の掃除や整理整頓もやらなくなっていきます。散らかったり、汚れたりしていても、生活はできてしまうので、どんどん片付けや掃除をしなくなる。そこから自分に対する興味・関心を失ってセルフネグレクトの状態になっていきます。そうなるといよいよ、ごみ屋敷化が進んでしまいます。

ディオゲネス症候群のメカニズムは、まだはっきりとわかっているわけではありません。しかし、認知症などの精神疾患との関わりや、孤独感や孤立感との関わりが指摘されています。

認知症などの精神疾患が引き金に

認知症などで判断力や実行力が弱くなると、ものを捨てるかしまっておくか、ごみをどのように捨てるか、などが判断できなくなったりするために、ものをため込んだり、身の回りのことができなくなったりすることがあります。実際、ディオゲネス症候群の人は、認知症の人が非常に多いです。

掃除したり、家の中のごみをまとめて決められた日時にごみ置き場に運ぶのは、かなりの体力が必要です。また、自治体のルールに沿って分別するのも、判断力が求められるので簡単なことではありません。このため「もういいや」とあきらめて、ごみが捨てられずにたまってしまいやすくなります。

また、うつ病や統合失調症などの疾患で、外との関わりが持てなくなったり、外に出られなくなったりして、ディオゲネス症候群につながる可能性もあります。

孤立感や孤独感も大きな要因に

2つ目の要因として挙げられるのが、孤立感や孤独感です。

たとえば、もともと対人関係を築くのが苦手な人が、会社を退職したり、パートナーが亡くなったりして、社会とのつながりが切れ、孤立して孤独感を抱えるようになると、それが引き金になる可能性があります。

孤立すると、「周りからどう見られているか」に意識が向かなくなり、セルフネグレクトにもつながりやすくなります。加えて、孤独感を埋めるように、ごみをため込んだり、動物の多頭飼育をしたりすることがあるのです。

こうした、対人関係を築くのが苦手な人の中には、過去に虐待やいじめ、ハラスメントなどを受けて、人に対する不信感を抱えていることも多く、その場合は、離れて住む家族や福祉・医療従事者などが支援しようとしても、猜疑心や敵意を持ってしまうために、受け入れることができません。それで状況がどんどん悪くなってしまいます。

屋外に無造作に置かれた家庭ごみ
写真=iStock.com/oluolu3
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