少しむかしを振り返ってみてください。みなさんが学生の頃、「先生」とはどんな存在でしたか? おそらくいま40代以上の人が小学生の頃は、先生に絶対的な権威があったことでしょう。『ドラえもん』に出てくる、のび太くんの先生がそうです。「コラ!」と怒れば生徒は緊張し、「明日までに宿題をやりなさい」と言えば、ほぼ全員が文句なくいうことを聞いてくれます。

この圧倒的な権力は、生徒も親も「先生は偉い人」で「先生の言うことは聞くべき」と信じる、“都合のいい常識”によって支えられていました。

これがボス型マネジメントの典型です。かつての会社組織における「上司」も同じで、上司がポジションパワーによる権力で部下をまとめ、会社や部署の方針に沿って足並みを揃え、組織力を発揮していたのです。

でも、それはもうむかしの話。近年では、学校でも先生と生徒の間に上下関係はあっても、コミュニケーションは対等に近づいています。生徒から先生へのカジュアルな言葉遣いが黙認され、先生も生徒に対して体罰はもちろん、理不尽なことをしてはいけないというのが常識です。生徒に言うことを聞かせたければ、生徒の話に耳を傾け、納得できるよう対話することが求められています。また、家庭でも親子関係はフラット化する傾向にあり、家庭によっては「叱らない教育」を実践していることも珍しくありません。

つまり、上下関係に厳しい体育会系の部活にいたのでもなければ、社会人でも若い世代は「怒られる」という経験が少なく、また、「目上の人間には黙って従う」という前提のもとで育っていません。「自分は社会と対等であり、尊重されるべき」という意識を多かれ少なかれ持っている傾向があります。

ゆえに、自分がかつての上司から受けたボス型マネジメントを下に向けて踏襲すれば、部下にとっては横暴としか映らないでしょう。部下は反発し、思わぬことで離職したり、メンタルを病んでしまったり、「パワハラを受けた」として訴えを起こしたりする原因となってしまいます。

そこまでの害を生まなかったとしても、信頼関係の欠如や対立、モチベーションの低下、成長阻害といったマネジメントの機能不全に陥り、パフォーマンスを高めることができず、あなたの管理能力が問われることになってしまうのです。