「家族扶養のための昇給」にメスを入れる時

こうした「家族扶養のための年功昇給」って本当に正しいでしょうか?

「扶養家族が多くなった人」のみ昇給するならまだわかりますが、定期査定ごとの昇給を重ねて誰でも高給になっていくのです。とすると、独身者でもDINKsでも30代より50代の方が150万円も年収が多くなってしまう。家族の多さと関係ありません。まず、これが一つ目の問題でしょう。

次に問題となるのは、「かつては夫のみ働き、妻は専業主婦という家庭が多かったが、今は共働きが増えてきた」ということです。それも、つい最近までは、「夫が正社員、妻がパート社員」というケースが主でしたが、徐々に「夫も妻も正社員」が増えてきました。今後はそれが主流になっていくでしょう。

そうした場合、結婚した瞬間に、世帯年収は正社員二人分、すなわち一挙に2倍となるのです。これは、かつての「夫一人」で昇給を重ねた世帯年収をも上回るのではありませんか?

そう、妻も辞めずに正社員を続ける社会になれば、もはや、「家族を食べさせるための」年功昇給など不要になります。

そろそろ、「長く勤めた男性が、高給」になるという常識は壊すべき時でしょう。

逆に言えば、昇給しない社員は、「給与相応」に働けばよく、上も目指さず、会社に滅私奉公もしない勤め方を認めるべきです。仕事を終えたらさっさと帰る。そうして、家事育児も分担する。会社を生きがいに働いた挙句、課長にもなれずにすり減るよりも、そのほうがよほど健全なのではありませんか。

赤ちゃんの世話をしながら在宅勤務をしている父親
写真=iStock.com/maroke
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等級をいくらいじっても年功給が残り続けた理由

こうした脱年功型の働き方をするためには、人事制度をどのように変えればよいか。

バブル崩壊後30年以上、日本企業はこの「年功昇給」をどうすべきか悩み続けてきました。職務給、役割給、職責給、そしてジョブ・グレード給と等級制度を多々改変しましたが、一向に年功昇給はなくなりません。それは、欧米のようにポストに等級を紐づけ、ポストが変わらなければ給与は変わらないという仕組みにできていないからです。

日本の場合、等級制度の名前は変われども、それは「ポスト」ではなく「人」につけるものであり続けました。人に等級をつける限り、同じポストにいたとしても、等級は上がり続けてしまいます。だから役職者に昇進しなくとも(=同じポストでも)昇給が続くことになります。

とはいえ、欧米のように仕事はポストで決まる仕組みにして、ポストが同じなら大きな昇給などしないという「ポスト主導給」の導入は、難しいでしょう。ここにメスが入らなかったために、いろいろ等級制度をいじっても、結局、年功昇給は残り続けたのです。

さあどうするか。

実は、本当に簡単な方法があるのです。