査定を繰り返せば必ず給与は増え続けるという大問題

人に等級をつけると、なぜ、年功的になるか。それは運用の細部を見るとよくわかります。

等級はその中が細かくノッチ(刻み)に分かれており、たとえば、1等級が12階段とかになっているのです。そうして、毎年、査定のたびに、その階段を1つ、もしくは2つと上っていく。

こうして、等級の最上位ノッチまで来ると、しばらくそこで留まって、次の等級に行けるかどうか、昇級審査を待つことになるわけです。

【図表2】能力が低くても等級が上がる「温情昇級のしくみ」
図表=筆者作成

あまり評価が芳しくない人でも、長い時間をかければ必ず、ノッチの上限にまでたどり着きます。そこで、昇級できずに留まり続けると、長期滞留者として目につくようになります。昇級審査の度にこうした滞留者は俎上そじょうに上げられ、何度も同じ顔触れを見ていると、「そろそろ上げてもいいのではないか」と温情が働いてしまいます。

つまり、同一等級内のノッチアップ→温情昇級→再びノッチアップと続き、年功昇給が止まらないことになるわけです。

経営の意思次第で、日本の悪しき常識は払拭できる

現状は、毎回の査定でノッチが必ず上がり続ける「積み上げ方式」をとっています。これを、「洗い替え方式」に変えたらどうなるでしょうか。

洗い替え方式とは、考査期間の評価が標準であれば、中位(12階段であれば6ノッチ)となり、業績に応じて高低するというものです。その評価は文字通り洗い替えなので、前期のノッチなど考慮されず、また、次の期間の評価により上下動することになります。たとえば、良い業績を残した翌期は一気に11ノッチまで上がるけれど、その次が駄目なら3ノッチまで下がるといった具合です。

【図表3】年功を打破する新しい仕組み
図表=筆者作成

こうした洗い替え方式となれば、できる社員は年齢に関係なく、一気に上位ノッチに位置し、それを維持し続けるでしょう。そうした上位ノッチの常連者は、当然、昇級審査の対象となるべきです。そこで、スピード昇進が起きる。

一方、評価の芳しくない社員は、どんなに年功を積んでも、下位ノッチに滞留し、決して昇級審査の俎上に上ることはありません。

そう、たったこれだけの「運用変更」で、社内にはびこる年功主義は一掃できるのです。

これを続ければ、年長者(主に男性)は偉い・高給という歪んだ常識は減じていくでしょう。

この人事運用の変更は、得をする人、損をする人が半々となります。なので、社員をしっかり説得すれば、導入は可能でしょう。ただし、滞留し続ける年輩社員には、新たな働き方=仕事はほどほどにして、家庭を大切にするという変更を促すことが必要となりますが。