世襲議員なら男性議員の“嫉妬”を抑えられる

今回の改造人事で閣僚になった女性5人中、世襲議員は3人だった。加藤鮎子子ども政策担当相の父は、自民党幹事長など要職を歴任し、「加藤の乱」で有名な故・加藤紘一氏。自見英子地方創生担当相も父は自見庄三郎元郵政大臣。土屋品子復興相は大叔父、父ともに参議院議員を務めた政治家一家の出身。

この中で当選3回の加藤氏と2回の自見氏は副大臣経験もなくいきなり大臣という抜擢だが、先の申教授は、「世襲であれば抜擢しても、自民党内の男性議員の反発が比較的少ないとみたのだろう」と分析している。

今回の改造内閣の閣僚の内訳を見ると、男性と比べて女性の世襲率が特段高いわけではない。それは、そもそも自民党の世襲率が男女を超えて他党に比べて高いからだ。

安藤優子さんの著書『自民党の女性認識 「イエ中心主義」の政治指向』(明石書店)では、2009、2012、2014年と過去3回の衆院選における当選者の世襲率を分析している。2014年の総選挙では、自民党の全当選者のうち血縁継承者は41%。男性は40%だが、女性は48%と女性の方が世襲率(安藤さんの著書では血縁率)が高くなっている。

政治家が「身分」になってしまう弊害

これは女性の方が立候補するハードルが高いため世襲候補の方が、地盤、看板(知名度)、鞄(資金力)で有利だという背景もある。さらに自民党のように保守的な支持者が多い政党では、政治家の家を継ぐという世襲候補のほうが、支持者がまとまりやすいという事情もあるだろう。

もちろん世襲であろうとなかろうとその人に能力や適性があれば問題ないが、憲法学者の西村裕一・北海道大学大学院教授は世襲議員の問題点をこう指摘している。

「政治家が『身分』の様相を呈すれば、国会議員を『全国民の代表』と定めた憲法の趣旨を没却することにもなりかねません。世論調査で可視化された、家族をめぐる国民と政治家の意識のずれもその一例だと考えることができます」

西村氏は、世襲議員は伝統的な家族像に親近感を抱きやすいという。

女性の政治家を増やし、閣僚を増やしていくことはもう待ったなしだ。だが、その女性たちが世襲議員ばかりになれば、選択的夫婦別姓や同性婚の実現に向けて動いてくれるだろうか。