上司部下関係なく、「さん付け」で呼ぶことを推奨する企業は多いが、それは職場の風通しの良さにつながっているのか。人材育成コンサルタントの山本直人さんは「上からの力で推し進めれば、結局はもとの上下関係をさらに強化してしまう。本当に自由な空気であれば、呼称詞は問題にならないはずだ」という――。

※本稿は、山本直人『聞いてはいけない スルーしていい職場言葉』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

「さん」で呼ぶことを推奨する会社

人の呼び方には、いろいろな意味や気持ちが込められています。親しい人どうしでは呼び捨てだったり、ニックネームだったりします。目上の人に対しては、敬称だったり、ビジネスでは役職名で呼んだりすることもあります。

最近になって目立つのは「さん付け」をしようとする動きです。会社の中で、目上の人を呼ぶのに役職名ではなく「さん」で呼ぶことを奨励する会社は増えているようです。

また、小中学校においても男女を問わず「さん」で呼ぶことが定着しているようです。これは、「ちゃん」「君(くん)」ではなく、性差を問わずに共通の呼び方にすることが理由ということです。

無記名の名札を付けている人
写真=iStock.com/BrianAJackson
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「さん付け」に対する賛否両論

また、企業によっては部下に対しても「さん」を付けることを奨励するケースもあると聞きます。男性どうしであれば部下を呼び捨てにすることもあると思いますが、それを改めることが狙いなのでしょう。

「さん」や「君」などの呼称詞は時代によっても使われ方が変化します。「君」はかつては敬称でしたが、現在は親しい間柄の男性に対して使われるようになりました。だからこそ、学校では性差を問わない「さん」が使われるようになったのでしょう。

気になるのは企業などで「さん付け」が広まることで、「上下の関係なく自由に意見を言える」とか「新人でも敬意を持たれる」という考え方があることです。

会社内での「さん付け」をめぐっては、ちょっとネットで検索しただけでも実にたくさんの取材記事や意見などを見つけることができます。中には、「さん付け」に反対して、役職で呼ぶべきと主張する人もいます。

しかし、そもそも呼称詞を組織内でルール化することで、何かいいことがあるのでしょうか? 少々疑問に思ってしまうこともあるのです。