「リニア通過県なのだから新駅設置を認めろ」

このような中、川勝知事は2017年10月の会見で、突如リニアトンネル工事の水環境問題をやり玉に挙げて、JR東海の対応を厳しく批判した。

2018年夏には、リニアトンネル工事による水環境保全を目的に、流域10市町長らをメンバーとする「大井川利水関係協議会」を設立した。

川勝知事の腹の中に「静岡県もリニア通過県なのだから、静岡空港新駅設置をJR東海が認めるのが当然だ」という思いがあったのは想像に難くない。

大井川利水関係協議会のメンバーを見れば、川勝知事の思いに流域も賛成していることがわかる。

静岡県が設置した「静岡空港駅設置期成同盟会」の会長は川勝知事、副会長は島田、牧之原、吉田の3市町長が務め、焼津、藤枝、御前崎、菊川の4市長と川根本町の町長も参加している。大井川流域の首長らが結束して静岡空港新駅設置を待望しているのだ。

しかし、JR東海は川勝知事らの思いを無視し続けた。

2018年夏から始まった静岡県専門部会は、5年たったいま、とうとう「山梨県内の調査ボーリングをやめろ」という根拠のない言い掛かりまでつけるようになってしまった。

山梨県が「静岡空港新駅」を支持するワケ

今回、5月31日の期成同盟会で、長崎知事はまるで2010年5月の川勝発言を再現するかのように、リニア、東海道新幹線を中心とする高速交通の将来像に静岡空港新駅設置を盛り込む、静岡県の思いに沿った発言をした。

川勝知事は素直に「研究会での検討が進むことを期待する」と述べた。

長崎知事は6月13日の会見でも、「静岡空港新駅構想を頭ごなしにダメだということは、ある意味抗議というか、しっかりと議論を積み重ねて、(JR東海は)真摯しんしに向き合っていただきたい」などと述べた。

リニア開業の最大の課題となる静岡工区未着工を解決へ導くために、静岡県の望む「地域振興」について、JR東海は話し合いの席につくべきだという姿勢を示したと見られる。