※本稿は、中島弘象『フィリピンパブ嬢の経済学』(新潮新書)の一部を再編集したものです。
月10万円以上の「エンドレス送金」
ミカとの結婚生活の中で、僕にとっての一番の問題は、フィリピンへの送金にまつわる問題だ。
ミカが日本に来た理由は、フィリピンの家族を経済的に支援するため。出会った時は、ミカは月6万円しか給料がなかったにもかかわらず、毎月その半分の3万円を送金していた。マネージャーとの契約を終えてフリーとなり、毎月何十万と稼げるようになると、送金額は増えていき、月に10万円以上送金するようになった。
結婚すれば少しは送金について考えてくれるのでは、と淡い期待を抱いたこともあったが、むしろ金額は増えていった。
「いつまでフィリピンに送金するの?」
「私が仕事してる間はお金送るよ。フィリピンの家族助けたいもん」
結婚したばかりの頃は、僕も定職に就いておらず、ミカの姉の家に居候し、ミカの収入に頼って生活していた。だから送金に対しても特に不満を言うことはできなかった。
だが、フィリピンの家族の生活費、病気をしたら医療費、学校が始まる時期になると学費に加え、急な出費もすべて日本から送らなければならない。この先いつまで送金が続くか不安になる。
フィリピンは出稼ぎを推奨している
フィリピンは国民の1割が出稼ぎ労働者として海外に出ている、出稼ぎ大国だ。フィリピンの国際空港には、海外出稼ぎ労働者専用口がある。その数の多さが窺い知れる。また、こうした専用口を作る以外にも、海外雇用庁や海外労働者福祉局があり、国として海外出稼ぎ労働者に対して、様々な支援を行っている。いわば国をあげて、海外出稼ぎを推奨しているのだ。
海外からの送金は、国のGDPの実に1割程度に当たる。ショッピングモールには、送金会社が何社も入っているし、街中にも外貨両替所が至る所にある。
こうした海外からの送金で生活が成り立っているフィリピンの家族は多い。