頼りになった「保育コンシェルジュ」

私は認可保育園と認証保育園の違いも知らなかった。「認可」は国が定めた設置基準で、保育園の広さや保育士の職員数、給食設備などをすべてクリアしている園。これは公立と私立がある。「認証」は東京都独自の制度で、保育園不足を補うために「認可」に準じた設置基準。こちらはさまざまなニーズに対応した保育園がある。千葉市、さいたま市、横浜市、川崎市、大阪市などにも、東京都と同様の認証制度がある。

この「認可」と「認証」以外にも、足立区には、「認定こども園」や小規模の保育施設、区が認定した家庭的保育者による「保育ママ」などの制度もあった。いろいろと策を講じていることはよくわかった。妻もこの保育コンシェルジュに4回、相談に乗っていただいた。うち2回はリモートである。

区内の保育園には全部落ちてしまった

しかし、引っ越しはしたものの、結果的に妻が仕事を再開する10月までに、足立区内の保育園(認可も認証も)にはすべて落ちてしまった。お隣の葛飾区まで“越境”して、認可外だがとても熱心に面倒を見てくれる保育施設をようやく確保し、働きに出られることになったのだ。

リモート勤務中は息子を抱っこしながら働いた。
リモート勤務中は息子を抱っこしながら働いた。中本裕己『56歳で初めて父に、45歳で初めて母になりました 生死をさまよった出産とシニア子育て奮闘記』(ワニ・プラス)より

「もう、ぎりぎりの綱渡りよ。本当に大変だった。ウチのように区外でもとにかくどこかに入れた人は『待機ゼロ』とカウントされるんだけど、実態はどうかしら。葛飾区の園に預けているあいだにも、月に1人でも欠員が出ると足立区の認可保育園に応募するんだけど、1人の枠に20人ぐらい応募があったから、実態は待機ゼロとは言い難いわね」と妻はまだまだご立腹だ。

それから半年後の2022年4月、ようやく足立区の認可保育園に入園することができた。半年間、区外の保育施設に預けながら働いていたことが「実績」として認められ、「保育の必要がある子ども」としての合否を左右する「持ち点」が上がったからだ。

私は夫としてほとんど力になれなかった。妻が朝の出勤途中に、息子をベビーカーでお隣の葛飾区の保育園まで約15分かけて送ってくれた。その間、リモートで仕事をしながら、掃除・洗濯をしたぐらいである。

いっそ、私が育休をとって預かろうかとも思ったが、前にも述べたように、この先の収入減を考えると、少しでも稼げるうちは稼いでおきたい。将来的には、年金をもらいながら主夫業に専念して、家でできる仕事を考えないといけないなあ、とぼんやり考えてみる、定年間近の男なのであった。